見出し画像

[英國行事]天皇皇后両陛下 オックスフォードご訪問を拝見

 オックスフォードにもついに夏らしい日がやってきて、日中は28℃に。もちろんクーラーなんてないので真夏に向けて扇風機を買おうか真剣に検討したのも束の間、次の日にはまた20℃前後の快適な日々に戻りました(ロンドンではうろこ雲が出ていたという噂も)。さてそんな素晴らしい気候の日に、オックスフォードに一大イベントがやってきました。なんとイギリスを公式訪問中の天皇皇后両陛下が、母校であるオックスフォード大学にいらっしゃるというではありませんか!


つい先日のクラリッジズ・ホテル このときはイギリス国旗だけです

両陛下、ロンドンへ

 6/22(土)にイギリスにご到着された天皇皇后両陛下。テレビの映像を見ながら、これはクラリッジズかな、まだ円が強かったころアフタヌーンティーを楽しんだことなどを思い出しつつ(グリーンのストライプのティーカップが素敵なんですよね)、仕事の締め切りに追われていたのもあり、どこか遠いところの出来事のような気持ちでパレードの報道などを見守っていました。ただ、ついこのあいだロイヤル・アスコットでチャールズ国王やカミラ妃、アン王女などを拝見したこともあり、なんとなく親しみも感じていました。

 最終日にプライベートとして、両陛下がかつて学ばれたオックスフォードに来られる、しかも街の散策もされるとは聞いていました。一週間ほどさまざまな行事に出られたり、場所を訪問されたりしている日本のニュースを見ているうちに、ちょうど仕事もひと段落したのもあり「大好きなここオックスフォードにゆかりのある方々が戻って来られるまたとない機会、これは見守るべきなのでは?」という気持ちがむくむくと湧き上がってきました。うん、せっかくだし、行ってみよう!

前日のオープンキャンパス中のマートン・コレッジ 「Free Ice cream」が羨ましい暑い日でした

ご訪問前日(6/27・木)

 さて直前に行くことを決めたので「午前中らしい」という官報の情報しかありません。9時にクラリッジズを出るとしてお車なら1時間半あれば着くだろうから、10時ごろ行けばいいかな、やっぱり順番として陛下の学ばれたマートン・コレッジからかな、と予想を立てます。

 前日にちょうどオープンキャンパスをやっていたのでこれ幸いと下見をしようとしたのですが「入学希望者だけだよ!」と断られてしまいました(他のコレッジはけっこうウェルカムで見学できたのに、マートン厳しい)。ダメ元で警備員さんに金曜日のことを尋ねましたが、もちろん教えてくれるはずもありません。ただ、マートンの前は車がすれ違える道路なのに対し、ベリオール(ベイリオル)の前は広い道ながらほぼ歩行者天国状態で、お土産屋さんやオープンカフェ、パブや本屋が並び、ふだんは観光客で溢れかえっています。やっぱりマートンからだなと狙いを定めました。

朝10時のベリオール・コレッジ前 

ご訪問当日の朝(6/28・金)

 早起き(弊社比)してシティセンターに向かいます 。ベリオール・コレッジを通りかかると待っている方が少し。あれ、こちらを予想する人もいるのだな、と思いつつも、当初の予定どおり歩いて5〜10分ほどのマートンを目指します。

マートン前 暑くもなく寒くもなく、とても良いお天気

 さてマートン・コレッジ前に到着。やはりこちらのほうが人が多いです。地元の方、観光客っぽい方、とにかくみなさん口々に「こんなにオックスフォードに日本人がいるんだな」とおっしゃっている。ふだん、中国の人ならそりゃもうたくさん、韓国の若者もけっこうお見かけするのですが、なかなかシティセンターを歩いていて日本語が聞こえてくることがないのです。ちょっと「ふるさとの訛なつかし……」な気分になりつつ、なるべく車や自転車の邪魔にならないように待ちます。お天気はまだ涼しく、最高気温も18℃との予想でとても快適です。

 朝なので遅めの朝食を終えたコレッジの方々が、マイマグカップ片手に門から出て、通りを挟んで向かい側の建物に歩いていかれるのを何度か目にします。車通りはそこまでないところなので、バンが通りかかるたびにそわそわ。護衛の方なのか、スーツ姿の10人くらいの屈強な男性たちが出てきては、どこかへ歩いて行きました。11時、近くにいた方が話しかけてくださって、なんとなくグループになって情報交換します。11:30、このあたりでベリオール前が人だかりになって警察官などもいるという情報をキャッチ。こちらは人は3〜40人ほどいますが、警察も報道陣のカメラもありません。意を決して、周りの方々と一緒にベリオールに向かうことにしました。なぜか駆け足になるわれわれ。

ベリオール前@11:30

ベリオールに舞い戻る

 さてベリオールの前に戻るとものすごい人だかりです。日本人、現地の人、あわせて100人以上はいるでしょうか、警察も4、50人。報道のカメラもいます。何かあるなら絶対こっちだ、と確信。ただ、少し待ってみたもののなかなか動きがありません。電波状況の非常に悪いオックスフォードですが、がんばって日本のニュースを検索して、12:30、どうやらもうオックスフォードには到着され、ベリオール構内にいらっしゃるという情報をキャッチ。車で裏口から入られたということは、出て行く時も車ならこの門は通られないのでは……そういえば警察の人たちもやけにリラックスしている……マートンで待っていた方が可能性がまだあるのでは……などと不安な気持ちを周りの方たちと話すことでまぎらわせながら待ちます。ほんと、ひとりじゃなくてよかった。

 ここで識者のかたが颯爽登場。このあといったんディヴィニティスクールに行かれ、そのあとマートンに向かわれるとか。ど、どこで情報を仕入れられたのか……すごいです。ディヴィニティスクールならまさにこの目の前の道(ブロード・ストリート)を右(東)に向かって1、2分、Bodことボドリアン図書館に隣接したすぐそこの場所。もしかしてその過程を歩いて散策されるのでは? いやまさかね? と期待が高まります。

ふだんのブロード・ストリート このパブは『主任警部モース』のロケ地にも 

いざ、お出まし

 そして13時少し前、いよいよその瞬間は訪れます。自転車警察隊のインカムからいっせいに警報が鳴り響き、門から両陛下がお姿をお見せになりました。そしてそのまま、なんと予想どおりブロードストリートに沿ってゆっくりゆっくり散策されるじゃありませんか……!(両陛下のお写真は報道などでたくさん出回っているのでこちらには載せないことにします)

 群衆からの呼びかけに応えられつつ、思い出の道をゆっくり歩かれるお姿。ここは図書館(ボドリアン、ウェストン)あり、本屋(ブラックウェル)ありと、カレッジ生ならしょっちゅう通る道。わたしもセンターに出てきた日には必ず通るところです。学生時代の思い出を胸に歩いておられるのかな、と想像すると、なんだか感慨無量です。個人的には、ブラックウェル書店(最高の書店)の前を通りかかった雅子さまが、ショーウィンドーに並ぶ本を興味深そうにじっくり眺めておられたのが印象的でした。あれはきっと普段から本をたくさん読む方のなにげない動き!

シェルドニアン・シアター前には人だかり。プライド月間なので窓にレインボーフラッグが

 さっと歩けば1分もかからない道を、ときどき立ち止まったり、説明を受けたりして2〜3分かけて歩かれたあと、シェルドニアン・シアターという大学の式典が行われる建物の方へ入っていかれます。散策中は混乱もなく、みんな固唾を呑んで見守っている感じだったのですが、さすがにここにいたっては人だかりができて様子は伺えません。門の前でかなりゆっくり時間をとられていました。あとでニュースを見ると、門の前に並ぶ子どもたちにお声をかけていらっしゃったようですね。

 さっき散り散りになった同志のみなさんと合流。誰もが胸いっぱい。集団でいたせいか、知らないカレッジの学生さんからめちゃくちゃきれいな日本語で話しかけられたり(よく見たらマートンのフリースジャケットを着用していたので陛下の後輩ですね)、コミュニケーション力の高いイギリス暮らしの長い方が報道カメラを持った人に話しかけて今後の予定を探ってみたり(この先は詳しくわからないとのこと)、その流れでテレビ局のインタビューを受けたり(わたしは避けましたが、あまりに自然に撮影に持っていかれるのですごいなーと思いました)。共通して言えるのは、みんながほんとに胸いっぱいだったということです。

普段は向こうのウェストン・ライブラリーから後ろのボドリアンまで通り抜けられます(閉鎖中)

まさかの式典が

 ここで一緒にご訪問を待った仲間たちと別れ、用事があったのでボドリアン図書館方面へ向かいました。ディヴィニティ・カレッジは16時まで「プライベートイベント」のため閉鎖、16:30から再開との掲示を見つけ、シェルドニアン・シアターが見える鉄の扉のあたりを通りかかると、どうやらまさにいま中に両陛下がいらっしゃるご様子。カレッジ生や日本の留学生(?)が数人カメラを構えて待っていたので、わたしも一緒に待ってみることにしました。

 学生の皆さんの会話を聞いたり、じっさいに話したりするなかで、どうやらいま目の前にいらしゃるのがオックスフォード大学の総長(白髪の方)と副総長(パンツスーツの方)ということがわかります。「もしかして名誉学位の授与あるのでは?」と学生さんたちが話しているのをなんとなく聞いていたら、1時間ほどして、まさにそのとおりのことが。真っ赤なアカデミック・ガウンに黒い帽子姿に着替えた両陛下が出ていらっしゃいました。お声がけするなら最後のチャンスだなと思いつつも、とても声などかけられない厳かな雰囲気で、学位授与が行われるディヴィニティ・スクールまでゆっくりと行列していかれました。

花いっぱいのベリオール 本当に素敵なコレッジです

一日を終えて

 そんなこんなで合計6時間ほど、お出ましをお待ちした長い一日になりました。わたしはここで離脱し、お腹も空いたのでハイストリートのカフェに飛び込んで熱々のラザニアとホットチャイで暖を取りました(最後は日陰だったのでかなり寒かった)。他の方々の情報によると、このあとディヴィニティスクールから出るときにお姿をあらわされ、車に乗って、いったんハイストリートで降りて紳士服のお店など散策されたあと、マートン・カレッジへ。寮の窓からお二人で手を振られるお写真、とてもお幸せそうでしたね。

 東京に住んでいたころは皇族の方々をお見かけすることはないですし、そのようなイベントに足を運んでみようと思うこともありませんでした。ただ今回に関しては、大学時代を過ごされた思い出の場所を再訪されるということで、自分も学生時代が楽しかったので、なんだか一緒になって嬉しくなってしまいました。逆に考えると、思い出いっぱいの地に生涯お二人では一度しか戻ってこられないのかと思うと、なんだかせつなくもなりました。最後、飛行機に乗られるお写真を見ると20時はすぎていたのではないかと思います。丸一日、オックスフォードを満喫されたようですね。

*今日のひとこと

 一緒に時を過ごした方々もしご覧になっていたら、その節は本当にありがとうございました! イギリスに来てからこんなに長時間、知らない方々と話す(しかも日本語で!)のははじめてだったのでとても楽しかったです。

 これを機に、今年はオックスフォードに来られる方も増えるかな? おふたりが植樹されたベリオールの桜の木、見に行ってみようと思います。定番のクライスト・チャーチ以外にも素敵なカレッジがいっぱいあるので、近々、観光案内を書きたいと思います。

 




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?