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トウキョウヒメハンミョウ Cylindera kaleea yedoensis


2020年6月下旬。
近所の公園を散策していると、いました!!!

トウキョウヒメハンミョウ 
Cylindera kaleea yedoensis

です。


葉上で休んでいる姿を一瞬見ると、
ああ、ハエか。と思ってしまいます。

葉から葉へ、ごく短距離を飛翔するのですが、
その姿もハエにしか見えません。
少なくとも、
意識しなければ甲虫だとは思わない軽やかさなのです。
(善良な読者の方へ;ハエを貶しているわけではありません。)


しかし、よくよくみると、
あのハンミョウの仲間なのです。
ふら〜っと行ける範囲に、
ハンミョウの仲間がいる生活。
急に日常が豊かになった気がします。

ハンミョウパワー


ハンミョウパワー
こちらの様子をうかがっています。


私自身、ハンミョウの仲間というのは、
なにか山道や砂浜、砂丘、
あるいは湿地帯にでも行かなければ見られない
ありがたい存在という認識でした。
ですから身近な環境で観察できるこの虫たちのことは本当に大好きなのです。


トウキョウヒメハンミョウは
硬く踏みならされた土の歩道、
いわゆる雑草とよばれるような草本、
できれば近くに雑木林などの樹木

↑の環境があれば、
わりとどこにでもいる印象です。

この場所では初めて確認したため、
テンションが上がりました。


上から見るとこんなかんじ
体長は9−10mm
かわいらしいサイズ感


ちなみに近くを通りすがった親子のお父様が、
お子さんに「ハンミョウいるね〜」などと語りかけ、
それを受けたお子さんも必死でハンミョウたちを捕まえようとしていました。

素晴らしい教育をされているご家庭だなあとしみじみしました。ハンミョウ情操教育?


幼虫は土の中に巣穴を掘り、
その中から地上を歩くちいさな虫などの獲物を狙っているそうです。
大きな牙で獲物を挟み、
穴の中に引きずり込んでしまうのです。
こわ〜。

しかし同時に格好いいです。

基本的に彼らは肉食なのです。


そしてなんとなんと、
トウキョウヒメハンミョウは、和名に“東京”とついていますが、
じつは! もともとは中国や台湾、インドシナ半島が原産であり、
日本の環境にうまく定着、至現在…な種らしいです。

恥ずかしながら私もこの記事を書くために調べる中で初めて知りました。
いつごろどういった経緯で日本にきたのでしょう。

杭のうえにちょこんと乗る


でも日本の個体の学名は 
Cylindera kaleea yedoensis ということで、
日本固有の亜種にはなっているのですね。
yedoensis=江戸、 江戸っ子だー。


中国、台湾のCylindera kaleea たちはそれぞれ別亜種のようです。

学が浅く、また調べる力が尽きたため、これらのくわしい分類などは記事内ではひとまず置いとくことにしました。
どなたか良い文献などありましたらよろしければご教授ください。



佇む


inaturalistというサイト(アプリ)でみると
(Cylindera kaleea yedoensis では検索できませんが)、
(別亜種は)中国や台湾にたくさん分布していることがわかります。

このサイトはなかなかに面白いです。
https://www.inaturalist.org


じつは海外からやってきたのでは?!びっくりシリーズとしては、
ニホンヤモリや、クサガメなんかも挙げられますね。

(「増補改定山渓ハンディ図鑑日本のカメ・トカゲ・ヘビ」によると、
クサガメは江戸時代に(恐らく朝鮮半島から)移入されたものと、
20世紀後半に中国から移入されたものの子孫が混在しているそうです。)


こういうのを知るのはものすごく面白いですが、
まあ国の境がなんだ、みんな楽しく生きてればいいじゃないかというなげやりな気になってきたためこの話はやめます。



トウキョウヒメハンミョウを漢字で書くと、
『東京姫斑猫』
になります。
まるで某キティ的な、可愛らしいキャラクターの名前みたいです。


また、彼らは、捕まえるとすぐ吐いちゃうのですが、
これは防御反応として行っているのでしょうか。
それともただ焦って吐いちゃうのでしょうか。
いつも申し訳ない気持ちになります。


この写真は
ギリ吐いていません


アホウドリ等の海鳥の雛なんかは、敵への威嚇や防御の意味を込めて、
なんらかの危険な刺激を受けた際は
その胃内容物を吐しゃします。

それはストマックオイルと呼ばれており、
オレンジ色がかった油分の多い消化液とともに、
未消化の食物がモロ出しになるため、
申し訳ないですが食事内容をうかがい知ることができる貴重な資料にもなります。


最近話題のビニール袋等由来のマイクロプラスチックなんかも、
ここから出てきたりもするわけですね。

アホウドリなんかは、潜水があまり得意ではないため、他の海鳥をびっくりさせて吐かせてそれを食べたり、
海面に浮かぶ生物の(新鮮な)死骸を食べたりするという話も聞きます。
オレンジや赤など、甲殻類が死ぬと現れる鮮やかな色に似た色のプラスチックを食べてしまうこともあるようです
(オレンジ色のしぼんだ風船など)。


なんにせよ、
気の弱い(あるいは強気?)な個体ですと、
場合によると少し近寄るだけでも土砂ーっと吐いてしまうため、
海鳥の雛にはお互いのためにも不用意には近寄らないことです。


トウキョウヒメハンミョウをさがせシリーズ
(答えは下にスクロールだ!)


さて、もしハンミョウが体長1mくらいの大きさだったら、
吐いたものと一緒にその食物も肉眼で観察できるのでしょうか?
そもそも消化の進度や仕組みなどが異なるため、
ただのドロドロの液体のままなのでしょうか。
こういうディテールを作り込んだ昆虫SFがあれば面白そうですね。

と書いたところで、ハンミョウの仲間は“体外消化”するらしく、
アホウドリなど獲物丸呑みタイプとは異なる食事方法だということを知りました。
そういえば同じオサムシ科のマイマイカブリとかもそうでした。


口から消化液を出し、
獲物を体外である程度消化してから、体内に取り入れる とのこと。
こりゃ体長が1mだろうとなんだろうと、
びっくりしたらドロドロの液体を吐くのでしょう。


答えはここ!


個人的には胃内容物にとても興味があるため、
魚釣りなんかをした際も、胃のなかみを見る瞬間が、
釣ったその瞬間と並ぶテンション上げポイントとなります。

渓流釣りの方々は、イワナやヤマメがなにを食べているかによりその擬似餌(フライというのか)の種類を変えるため胃のなかみを観察するそうです。

ストマックポンプというでかいスポイト様の器具を魚の口内に突っ込み、
吸うらしいのですが、いかんせん使用したことがないためどんな感じなのかわかりません。
一度メルカリで買おうと思ったのですが、そんなに安いものでもなかったため見送った記憶があります。

世の渓流釣りを趣味となさっている方は、ぜひ胃の中を見る要員としてお誘いいただけたら幸いです。

その土地で生き物がなにを食べているか、
知るのが楽しいです。


たそがれトウキョウヒメハンミョウ


なんの話かよくわからなくなってきましたが、
とりあえず近所でトウキョウヒメハンミョウ見つけて嬉しい
という記事でした。

iPhoneで遠くから撮った写真ゆえ、
全部写りが小さいのはご愛嬌です。


めちゃくちゃ蚊に刺されたため
帰りに虫除けを買ったら、
無邪気に虫取りをするバイキンが!
かわいい〜

【参考文献】(いずれも2020年6月に確認)

TIGER BEETLES OF JAPAN   にほんのハンミョウ
https://nayutayamamoto.wixsite.com/tiger-beetles/cylindera-kaleea

用語集|日本の外来種対策|外来生物法
https://www.env.go.jp/nature/intro/1law/yougo.html

野本 康太, 奥山 清市, 枡井 理恵, 村川 視紀子;伊丹市昆虫館におけるオガサワラハンミョウの生息域外保全 
伊丹市昆虫館研究報告2017 年 5 巻 p. 45-51
DOI https://doi.org/10.34335/itakon.5.0_45



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