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12)⑥政治・経済・軍事

    祭政一致
    欽定憲法
    天皇御親政
    我が国の法
    経済
    軍事

 わが国に於る政治形態の特殊性とその真意、憲法の意図するところ、また国家を隆昌する経済発展を成すにあたっての意義とわが国の産業精神、そして君民一体の世界に資する軍事について著しています。


        【 口語訳 】

    政治・経済・軍事


《祭政一致》
 わが国は万世一系の天皇ご統治の下、祭祀と政治はその根本を一にします

大化の改新に於て唐制を採用するに際し、孝徳天皇が悦びを以て民を統治する道を問うたことに対し、蘇我石川麻呂は「まず天と地の神を祭り鎮めて、その後、政事まつりごとを議ハカルべし」と奏上しました。

わが国の古の成文法は、近江令より養老令に至って完成しましたが、その職員令の初めに、
まず天と地の神を祭る神祇官を置き、又 特に神祇官令を設けました。

明治天皇は、「神祇を崇め祭祀を重んずるは皇国の大典政教の基本なり」と詔ミコトノリしました。

即ち祭祀の精神は、肇国以来、政事の本となり宮中に於ては三殿のご祭祀は厳粛に執り行われます。

これ皇祖肇国の精神を体し、神ながら御世をしろしめす大み心より出ずるものと拝察し奉ります。実に敬神と愛民とは歴代の天皇の有難き大み心です。

《欽定憲法》
 日本国の君主である天皇によって定められた欽定憲法は、明治22年2月11日、皇祖皇宗のご遺訓、歴代統治の洪範を紹述して、明治天皇が大日本帝国憲法を発布なさいました。

◆外国に於る憲法は、大体に於て既存の統治権者を放逐し、または掣肘セイチュウする事から生まれました。
の場合は民約憲法と解釈されますが、その実は平等な人民が自由の立場に於て交互に契約したものではなく、権力争奪に於る勝利者によって決定されたものに過ぎません。
後の場合は、君民協約憲法と解釈されるものでこれは伝統的の権力者たる君主が、新興勢力に強要されて相互の勢力圏を協定したものに他なりません。
尚、この他に欽定憲法の名を冠するものがあってもそれは程度の差こそあれ、実質に於てはやはりこの種の協約憲法以外のものではありません。

●然るに帝国憲法は、万世一系の天皇が「祖宗に承くるの大権」を以て大み心のままに制定なさった欽定憲法であって、皇室典範と共に全く「みことのり」に他なりません。

◆この欽定された憲法の内容は、外国に於るような制定当時の権力関係を永久に固定する為に規範化したものでもなく、民主主義•法治主義•立憲主義•共産主義•独裁主義などの抽象的理論又は実践的要求を制度化したものでもありません。

また外国の制度を移植し模倣したものでもなく●皇祖皇宗のご遺訓を顕彰せられた統治の洪範に他なりません。
これは典憲欽定に際して皇祖皇宗の神霊に告げたご告文に、

「皇祖皇宗の遺訓を明徴にし典憲を成立し條章を昭示し」と仰せられ、又

「皇祖皇宗の後裔に貽ノコしたまえる統治の洪範を紹述するに外ならず」

と宣ノタまったことによっても昭らかです。

このような皇祖皇宗のご遺訓を紹述せんとの大み心は、ひとり典憲欽定に際してのみならず、明治の御世ミヨを一貫して変わらぬものであった事は、

 「世はいかに開けゆくともいにしへの
       国のおきてはたがへざらなむ」

 「かみつよの御代のおきてをたがへじと
       思ふぞおのがねがひなりける」

 「さだめたる国のおきてはいにしへの
         聖の君のみこゑなりけり」

の御製によっても拝されます。

しかもこのような叡智は、明治の御世に限られたことではなく、ご歴代一貫の大み心です。

●皇祖皇宗のご遺訓は歴代天皇によって紹述されるのであって、万世一系の皇統は自然の一系であるのみならず、同時にご自覚の一系である有難き事実が拝されます。

ゆえに欽定された典憲は、皇祖皇宗の後裔に貽ノコされたご統治の洪範の紹述として、これを奉戴し、また偏ヒトエにこのようなものとして謹んで解釈し、循行することを要します。


 この連綿不断のご統治の洪範を新たに典憲として紹述なさったのは、

  「顧カエリみるに世局の進運にあたり人文の発達に伴いよく、皇祖皇宗の遺訓を明徴にし典憲を成立し條章を昭示して、内は以て子孫の率由ソツユウする所と為し、外は以て臣民翼賛の道を広め永遠に遵行せしめ、益々国家の丕基ヒキ(大いなる天皇の基)を強固にし、八州(わが国の)民の生活を慶福を増進すべし」

と仰られるところに窺われます。

●国運の隆昌、臣民の懿徳イトク良能(優れた徳と才能)の発揚、慶福の増進を念じられることは、「天壌無窮の宏謨」に従い、祖宗の遺業を永久に強固する所以です。

こうして欽定憲法の特殊な目的は、君臣の遵守規範を明徴にし、また臣民翼賛の道を広めるところにある事が拝されます。

世局の進運•人文の発達が、この憲法ご制定の機運になっています。この事もまた、

  「それ大人ひじりの制のりを立てる
        義ヒトハリ必ず時に随したがう」

とのご祖訓に随シタガったのです。

このような立憲の精神を拝して、外国に於る憲法制定の由来に思いを及ぼす時、よく彼我の憲法の本質的差異を知る事が出来ます。 

●わが憲法に祖述されている皇祖皇宗のご遺訓中、最も基礎的なものは天壌無窮の神勅です。
この神勅は、万世一系の天皇の大み心であり、八百万の神の念願であると共に、一切の国民の願いです。

従って知ると知らざるに拘らず、現実に存在し規律する命法です。

●それはひとり将来に向かっての規範であるのみならず、肇国以来の一大事実です。

憲法第1条に「大日本帝国は万世一系の天皇これを統治す」とあるのは、これを昭示したもので、
第2条は皇位継承の資格と順位を昭らかにし、
第4条前半は元首•統治権など、
明治維新以来 採択された新しい概念を以て、
第1条を更に紹述したものです。

◆天皇は統治権の主体であるのであって、かの統治権の主体は国家であり、天皇はその機関に過ぎないという説の如きは、西洋国家学説の無批判的の踏襲という以外には何らの根拠はありません。

●天皇は、外国の元首•君主•主権者•統治権者たるにとどまらせる御方ではなく、現御神アキツカミとして肇国以来の大義に随ってこの国をしろしめすのであって、第3条に「天皇は神聖にして侵すべからず」とあるのは、これを昭示したものです。

外国に於て見られるこれと類似の規定は、勿論かかる深い意義に基づくものではなくて、元首の地位を法規によって確保しようとするものに過ぎません。

《天皇御親政》
 帝国憲法の他の規定は、全てこのようなご本質を有する天皇御統治の準則です。

就中ナカンズク、●その政体法の根本原則は、中世以降のようなご将軍に任せた委任の政治ではなく、或いは英国流の「君臨すれども統治せず」でもなく、又は君民共治でもなく、三権分立主義でも法治主義でもなくして、一に天皇の御親政です。

これは肇国以来万世一系の天皇の大み心に於ては一貫したご統治の洪範でありながら、中世以降絶えて久しく政体法上制度化しませんでしたが、明治維新に於て復古し、憲法にこれを明示しました。

 ●帝国憲法の政体法の一切は、この御親政の原則の拡充紹述に他なりません。

例えば臣民権利義務の規定なども、西洋諸国に
於る自由権の制度が、主権者に対して人民の天賦の権利を擁護しようとするのとは異なり、
天皇の恵撫慈養のご精神と、国民に隔てなき翼賛の機会を均ヒトしくなさろうとする大み心から出ずるのです。

◆政府•裁判所•議会の鼎立テイリツ(三者対立)も、外国に於る三権分立のように、統治者の権力を掣肘セイチュウする為に、その統治権者より司法権と立法権とを奪い、行政権のみを容認し、これを掣肘しようとするのとは異なって、わが国に於ては、分立は統治権の分立ではなくして、親政輔翼機関の分立に過ぎず、これによって天皇の御親政の翼賛をいよいよ確実にしようとするものです。

議会の如きも、民主国に於ては、名義上の主権者である人民の代表機関であり、また君民共治のいわゆる君主国に於ては、君主の専横を抑制し、君民共治する為の人民の代表機関です。

●わが帝国議会は全くこれと異なって、天皇の御親政を、国民をして特殊の事項につき特殊の方法を以て、翼賛するために設けられたものに外なりません。

《わが国の法》
 わが国の法は、すべてこの典憲を基礎として成立します。
個々の法典法規としては、直接 御親政によって定まるものもあれば、天皇のご委任によって制定されるものもあります。

しかし●いづれも天皇の御稜威ミイズ(神の大きな力)の下に、臣民各自が皇運扶翼のために
まことを尽し、恪循カクジュン(慎んで従う)する道を示されたものです。

ならば臣民が国憲を重んじ、国法に遵シタがうは、国民が真に忠良なる臣民として生きる所以です。

《経済》
 経済は、物資に関する国家生活の内容をなすものであって、物資は、只に国民の生活を保つために必要なるのみならず、皇威を発揚するために不可欠な条件をなすものです。

従って国の経済力の培養は、皇国発展の一つの重要な基礎です。

ゆえに肇国の当初に於て、皇祖が親しく生業ナリワイを授け、経済すなわち産業が国の大業に属することを示されました。

神武天皇は「苟カリにも民に利クボサあらば、何ぞ聖造ヒジリノワザに妨タガワん」と宣い

更に崇神天皇は「農は天下の大本なり、民の恃たのみて以て生くる所なり」と仰せられ、歴代の天皇は常に億兆臣民の生業なりわいを御軫念(ご心配)くださいました。

然るに久しきに亙る封建時代に於て、職業は漸次固定し、経済は著しく硬化した為に、産業の発達には見るべきものが少なかったのです。

江戸時代の末に於ては、これを打開するため幾多の経済学者および経済生活の指導者が表れました。
就中ナカンズク、二宮尊徳はその著しい者です。二宮尊徳に於ては一団融合の理、報徳の道を説き、勤労•分度•推譲を主張し、これを天地の大法に合致する大道とし、皇国本源の道を示現するものとして説きました。

〈分度推譲〉


 わが国が明治維新によって世界列強に伍するや、従来の農業生産のみを以てしては、経済力の発展を図ることの困難な事が痛感されました。

ここに於て明治以来、しばしば聖諭を下したまい、近代西洋の生産技術を採用し、また勤倹(よく働いて倹約する)の重んずべき訓戒をなされ、また実業教育を整え産業を奨励し、以て国富の増進、臣民の慶福のために大み心を注いでくださいました。

臣民もまたよく天皇の大み心を体し、官民協力
勤倹よく産を治めて、今日見るような国力の充実を見るに至ったのであり、その急速な発達は
世界の驚異するところです。

 わが国近代の経済活動の根底には、西洋思想の著しい浸潤があるにも拘らず、常にかかる肇国以来の産業精神が流れていたと見るべきです。

昔からわが国民の悉コトゴトクが、その経済活動に於て常にかかる精神を意識していたというのではなく、又わが国民が生産活動のあらゆる場合に、営利の観念を離脱していたというのでもありません。

しかしわが国の産業に従事する者の多くが、単に自己の物質的欲望の充足に導かれるというよりは、むしろ何よりもまず各々の職分を守り、つとめを尽すという精神によって、和合の中にその業務にいそしんで来た事は、見逃し難い事実です。だからこそ、最近に見るような産業界の世界的躍進を齎し得たのです。

●「むすび」の精神を本源とし、公を先にし私を後に、分を守りつとめを尽し、和を以て旨とする心こそ、わが国固有の産業精神であって、それは産業界に強き力を生ぜしめ、創意を奨め
協力を齎し、著しくその能率を高め、産業全体の隆昌を来たし、やがて国富を増進する所以となります。

将来わが国民の経済活動に於ては、この特有の産業精神が十分に自覚され、これに基づいていよいよその発展が図られねばなりません。

●こうして経済は道徳と一致し、利欲の産業に非アラズして、道に基づく産業となり、よく国体の精華を経済に於て発揚し得ることとなるでしょう。

《軍事》
 わが国体の顕現は、軍事に於ても同様です。
古来わが国に於ては、神の御魂を和魂 ニギミタマ•荒魂 アラミタマに分けています。
この両面の相協うところ、万物は各々そのところに安ずると共に、いよいよ生成発展します。

しかして荒魂は、和魂と離れずして一体の働きを成します。この働きによって天皇の御稜威にまつろわぬものを「ことむけやわす(言向け和す)」ところに皇軍の使命があり、いわゆる神武とも解釈すべき尊き武の道があります。

明治天皇のみことのりには
  「祖宗以来尚武の国体」と仰っています。

天皇は明治6年徴兵令を布かれ、国民皆兵の実を挙げ、同15年1月14日には、陸海軍軍人に勅諭を下されました。

  「わが国の軍隊は世々天皇の
        統率し給う所にぞある」

と仰せられ、また

  ●「朕は汝ら軍人の大元帥なるぞ。されば
朕は汝等を股肱ココウと頼み、汝等は朕を頭首と仰ぎてぞ。この親は特に深かるべき朕が国家を保護して上天の恵に応じ、祖宗の恩に報いまいらす事を得るも得ざるも、汝等軍人がその職を尽すと尽さざるとによるぞかし。

我が国の稜威振るわざる事あらば、汝等よく朕とその憂いを共にせよ。

我 武雄揚りてその栄を耀カガヤかせば朕 汝等とその誉れを偕ミナともにすべし。

汝等皆その職を守り、朕と一心になりて力を国家の保護に尽すは、我国の蒼生(国民)は長く太平の福を受け、我国の威烈は大いに世界の光華ともなりぬべし」

と諭さとされました。

この勅諭は、畏くも天威に咫尺シセキし奉るように尊く拝誦ハイショウします。

 ●まことに皇軍の使命は、御稜威ミイズをかしこみ、大み心のまにまによく皇国を保全し、
国威を発揚する
ことにあります。

わが皇軍は、この精神によって日清•日露の戦いを経て、世界大戦に参加し、大いに国威を中外に輝かし、世界列強の中に立ってよく東洋の平和を維持し、また広く人類の福祉を維持増進するの責任ある地位に立つに至りました。

 ●ここに於て我ら国民は、「文武互いにその職分に恪循し、衆庶各々その業務に淬励サイレイし」と仰られた聖旨を奉体し、協心戮力•至誠奉公、以て天壌無窮の皇運を扶翼し奉タテマツり、臣民としての本分を尽さねばなりません。


    〜〜漢字の読みと意味〜〜

万世一系/永久に同一の血統・血筋が続くこと、日本の皇室・皇統をさす
皇祖
/皇室の祖、天地創造神=主神

肇国の精神

欽定憲法/天皇が定められた憲法
洪範
 コウハン/ 天下を治める大法
卒由 ソツユウ/前例から外れないようにすること
丕基
 ヒキ/大いなる天皇の事業の基 
八州
 ヤシマ•ハッシュウ/日本国の雅称•美称、
本州•九州•四国•淡路•壱岐•対馬•隠岐•佐渡の八つの島の総称、”八”には数が多いことから「多くの島からなる国」という意味
天壌無窮の宏謨
/永久に続いて絶えることのない大きな議り事
掣肘 
セイチュウ/そばからあれこれ干渉して自由に行動させないこと
民約憲法/国民主権の思想に基づき、国民が直接に、または国民から選挙された議会を通じて制定される憲法
君民協約憲法/君主と国民(代表)との合意または契約によって制定される憲法
欽定憲法
/君主によって制定された憲法。
皇室典範
/皇位継承・皇族・摂政・皇室会議など、皇室に関する事項を規定する法律
皇祖皇宗
/皇祖は天皇の始祖、皇宗は第2代から前代までの歴代天皇のこと
典憲
/永久に続く規則。いつの時代にも変わらない掟
みことのり/天皇の仰せ、宣命 センミョウ•宣旨・勅語・詔書など
紹述 
ショウジュツ/先人の業を受け継いで、それに従って行うこと
循行/命令に従って行なうこと、命令を守って行なうこと
丕基
 ヒキ/天皇が国を統治する大事業の土台
鞏固
/強固
懿徳良能 
イトクリョウノウ/立派な美徳、生まれながらに備わっている能力、本質的な能力、天賦の能力

天壌無窮の神勅/天照大御神が瓊瓊杵尊ニニギノミコトに勅して申されるには、「豊かで瑞々しいあの国は、わが子孫が君主として治めるべき国土です。わが孫よ、行って治めなさい。さあ、出発しなさい。皇室の繁栄は、天地とともに永遠に続き、窮まることがありません。」

命法
現御神 アキツカミ/高天原からこの世に人間の姿で現れた神
しろしめす/統治する、治める
三権分立主義/国の権力を立法権・行政権・司法権の三つに分ける仕組み
恵撫慈養/情けをかけいたわり慈愛をもって養育すること
親政/天皇みずから政治を行うこと、その政治
輔翼
/助けること、補佐、扶翼
御親裁/天皇がみずから裁決を下すこと
淵源 エンゲン/物事のよって来たるもと、おおもと
御稜威 ミイズ/神の威光、神の力
タノみて/頼みて
御軫念 
ゴシンネン/天皇がご心配なさること
勤倹
/よく働いて倹約する
産業精神/「むすび」の精神を本源とし、公を先にし私を後に、分を守りつとめを尽し、和を以て旨とする心
まつろう/従う
まつろわぬ/従わない、帰順しない
経済/経済は道徳と一致し、利欲の産業ではなく人の道に基づく産業
ことむけやわす(言向け和す)/人の心を言葉で和らげて平和にする
股肱 ココウ/一番頼みとする部下、手足と頼む者
蒼生/国民
咫尺 シセキ/距離が極めて近く、貴人の前近くに出てお目にかかること
恪循 カクジュン/慎んで従うこと
淬励 サイレイ/心を奮い起こして物事に励むこと、つとめはげむこと
皇軍の使命/御稜威ミイズをかしこみ、大み心のまにまによく皇国を保全し国威を発揚すること
かしこみ/何の隠し事もなく、清らかな心で
協心戮力 キョウシンリクリョク/一致協力して仕事に励むこと、「協心」は心を乱さず、調和をはかる事
至誠奉公/世界に発揚すべき誇り高き日本精神、公に対して真心を尽くして行動する意味
天壌無窮の皇運/永遠に極まりない皇国スメラミクニの国運
奉る タテマツる/献上する、差し上げる







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