【いま話題の“SNS系フィジカルコーチ”を紐解いてみた】
さて皆さんは「sunny」という人物をご存じだろうか。
次から次へとフィジカルパフォーマンス向上の為の有益な情報を発信する謎のラテン系美女である。いや、美女写真をアカウント画像として設定しているだけだろう。本当にあの美女であって欲しいが。
そんな事はさておき。
Twitterの総フォロワー数は7239人。
「フィジカルコーチによるリオネル・メッシ解体新書」
彼女(彼?)が執筆した代表作と言えるだろう。
読んだ人も多いのでは。
今となっては自身のnoteや、育成選手に必要なトレーニングを発信しサポートする「イクサポ」を通して、幅広く奥深いフィジカル論や「#認知フットボール」の普及活動を行っており、
単純明快で誰もが納得できるようなフィジカル論を連発する。
そんなsunnyを解体していきたいと思う。
Sunnyの正体はいかに。
【目次】
1.「身体を自由に動かせることでサッカーが上手くなり、サッカーが上手くなる事によってもっとサッカーが好きになる」
2.「SNS運用はコンテンツ力で勝負する」
3.「認知力の重要性を説く」
4.「対話によってアスリートのパフォーマンスは、左右される」
5.「noteから成り上がったフィジカルメディア」
【身体を自由に動かせることでサッカーが上手くなり、サッカーが上手くなる事によってもっとサッカーが好きになる】
――早速ですが、フィジカルメディアを立ち上げようと思われた経緯を教えてください。
「私自身の環境の変化がひとつの要因です。Jリーガーのパーソナルトレーニングの仕事からサッカーの認知についての知見を広げたく脳梗塞の自費クリニックに活動の拠点を変更しました。
その変更に伴い、今まで自分が蓄えて来たサッカーの知見を発信しようと思い、noteで記事を書き始めたのがきっかけですね。そして、今でも多くの方々に読まれている【フィジカルコーチによるリオネル・メッシ解体新書】を読んだ【イクサポ】よりオファーを頂き、私も彼の想いに共感し、グラスツール(草の根)を支えている指導者の方々が「フィジカルについて学べるプラットフォーム」を作りをしていきたいと思うようになったんです」
――フィジカルについて学べるプラットフォームですか。
「そうです。その中でも私個人としては、『身体を自由に動かせることでサッカーが上手くなり、サッカーが上手くなる事によってもっとサッカーが好きになる』というポジティブな循環を起こしたいという想いが強いですね」
ーーなるほど。「グラスツールを支えている指導者の方々がフィジカルについて学べるプラットフォームを作る」「体を自由に動かす術を普及し、もっとサッカーを好きになって欲しい」このようなビジョンがあると。
【SNS運用はコンテンツ力で勝負する】
では、その目標やビジョンを実現するにあたっての、「素性を明かさないスタイルのSNS運用」に戦略やブランディングプランがあるのでしょうか?
「そうですね。そこに関しては忖度のない素の発信が可能という事に尽きますね」
――忖度のない素の発信とはどういう事ですか?
「素性を明かすと、メタ認知(客観的な自己)の側面で『どう見られたいか』という心理が働いてしまい、発信内容が偏ってしまいがちですが、素性を明かさない事によってバランスのとれた発信が可能になります。また、良いコンテンツは『誰が』発信しても伸びますが、素性が明らかな場合は発信内容の良し悪しではなく、発信者が誰なのかというバイアスが掛かった受け取りになります。良いものは良いと主張するスタンスでの発信を心掛けています」
ーーなるほど。そこで、率直な質問になるのですが、僕は今のSunnyさんは既にネームバリューをお持ちだと考えています。するとその初期の戦略であった、「メタ認知を気にしない為のSNS運用策」も少しずつ消費されてきているのかなと。読者の中には「Sunnyが言っているから正しいだろう」と思っている人も少なく無いと思います。そのうえで、SNS運用においての次の戦略などはイメージ出来ているんでしょうか?
「その通りですね。これまでは世間的に知られているような知見に少しのエッセンスを加えて発信してきましたが、そういった意味では、今後はより、『パフォーマンスが短期的に向上する方法』をメインに発信し、ブランディングの舵を取っていきたいと思っています。どのような発信かと言うと、現在フィジカルトレーニングでパフォーマンスが向上すると考えられていますが、それだけではなく、【多感覚統合】(筋肉の感覚で身体を感じるのみでなく、視覚、触覚や関節覚などの多くの感覚の統合)を養う事によって、より短期的にパフォーマンスが向上するんだよという最新のトレーニング情報を提示していこうと考えています」
ーー普遍的な情報から、「sunnyさんならではの情報提供」へとシフトチェンジされるんですね。しかし、なかなかそのような専門的な知識を身に付けられないと思うんですが、sunnyさんはどうのようにしてそれらの知識をインプットしていんですか?
「自分で得た知識よりも人から教わることが多いですね。その知識をヒントに自分で調べ、深めたり広げたりはしますが。つまりは、高いレベルに身を置くことが重要だと思っています。そうすると必然的に面白い人からまた興味深い知見を得ることができます」
【認知力の重要性を説く】
ーー自ら情報を発信する事によって面白い人が集まり、自らもそういう環境に身を置こうと意識しているんですね。では、sunnyさんが普及したいと考えている「身体を自由に動かせるようになる事の重要性」ってどれくらい普及されてきていますか?
「まだまだ現状は普及されていないのではないでしょうか。フィジカルトレーニングの重要性に関しては多くの指導者の方々にご理解いただけていると思います。しかし、そこから体を自由に動かす事への落とし込みが非常に難しい問題です」
ーーどういう事でしょうか?
「例えば、日本人の闘うイメージとして浮かび上がるポーズに「ガッツポーズ」というものがあります。まさしく、腕を身体の前に持ってきて固めるポーズです。この概念が我々日本人には根深く染み付いており、対人スポーツにおいても闘うとなると、身体を固めることが先行してしまい、パフォーマンス向上の障壁となってしまっています」
「本来は身体の使い方としては、『姿勢保持筋』と言われる伸筋の方が身体を自由に動かすという点では適しているんですよ。また、この問題に対して『力を抜いてプレーする事が大事だよ』。とよく主張されるんですが、それだけでは不十分と考えていて、他のアプローチが必要だと感じています」
ーーなるほど。面白いですね。ガッツポーズの話があったんですが、「プレーにおいてのイメージ」はそれほど重要な役割を担っているという事ですか?
「そうです。人間の動きは、『表象(イメージ)』、『言語』、『体性感覚(身体の感覚)』で構成されています。例えば、『闘うという行為』を、『イメージ』、『言語』、『体性感覚』の三つのカテゴリー分けて表すとするならば、『イメージ=ガッツポーズ』、『言語=闘う』、『体性感覚=グッと力を入れる』となります。本来『闘う』為には素早い動きをしなくてはいけないのに、素早い動きからはかけ離れてしまいますよね。
例えば、その『言語』の部分を『闘う』ではなく、『力を抜く』に変更したとしても動きに適した言語ではなく、エラーになります。こうしたエラーはプレー中に多く存在します。そのエラーを修正するためには、『認知的アプローチ』が必要になり、これこそが私が取り組んでいる事です」
――さきほど言及されていた【多感覚統合】のアプローチですね。この間違った図式を変える為の一つの手段として、新しい言葉を創るという事が一つの手だと素人ながら思うのですが、そこに関してはどう考えていますか?
「確かに図式を変えていくには、新しい言葉の創造は必要な手段かもしれませんし、言葉は文脈により紡がれることから必然と新しいものが出来るのかもしれませんね」
【対話によってアスリートのパフォーマンスは、左右される】
ーー話が少し変わりますが、例えば、あるアスリートから「認知能力を高めてパフォーマンスを向上させたい」という相談が来たとしましょう。その時、sunnyさんなら、どのような段取りでどのようなトレーニング・意識改革を行いますか?
「まずはどのようなサッカー観を持ち、その選手が目標とする所は何処なのか。そこから聴取を始めます。そして、彼ら、彼女ら自身のストロングポイントは何かを知ることです。人間は出来る事、知っている事しか理解出来ませんので」
――なるほど。その次にどのような事を?
「その選手が経験から得ている感覚を言語化し、その選手自身に落とし込む事で、短期的にパフォーマンスが上がりやすくします。例えば、その選手のストロングポイントが『足が速い』とするならば、『なぜ』足が速いのかを対話によって明らかにします」
――足が速いという事の理由を明らかに出来るんですか?
「足が速いという事をどのように捉えているかです。『筋力があるから』と答えれば、その筋力は『どのように』使われているかを対話していきます。そのような対話から、どのように筋肉が使われているかを理解させ、身体認知の向上に寄与します。その後、他の感覚について広げていきます。例えば、同じタイミングで足の裏の感覚はどのようになっているか、体幹はどうなっているか、腕はどうなっているか」
「そして、その『身体認知』が確立してくれば、次は『身体外認知』に展開していきます。人間は予測によって筋収縮速度に変化が生じますので、自分の身体がどう変化していくか予測できる事で、動きのスピードを変化させることが出来るんです。
この理論をもとに、身体の変化をサッカーに置き換え、ドリブルの時にどうなっているか、DFのアプローチではどうかポジション、プレースタイルによって対話を変化させていくんです」
ーーなるほど。そういった対話を重ねる事によって「身体認知」を確立させる。その後、「身体外認知」までアプローチを広げていくと。
ちなみに、「身体外認知」とは、例えばボールを持ちながらピッチ全体をルックアップした時に、「ピッチ全体を空間的に把握する事が出来る」というスキルとも関連していますか?
「空間把握は『身体認知』、『身体近傍認知』、『身体外認知』の3つに分けられます。俯瞰能力をはそのなかでも『身体外認知』に分類されます。自分以外のボール、プレーヤーの動きをシミュレーションする事ですね。表象的イメージは経験により蓄積され、思考することが出来ます。俯瞰することも適切な認知トレーニングにより可能になります。現在『#認知フットボール』でも発信していますが、実際にトレーニングすることで変化が出ている選手もいます」
ーー「身体認知」や「身体外認知」にしても、まずは「知る事」。そして、その「知る」という事はあくまでも意識したうえであるので、その意識したうえでの「認知」を繰り返し、適切にトレーニングする事によって、段々と「無意識」に落とし込めるようになると。
やはり「認知」一つにしても、パフォーマンスを向上させる為に楽な道などは存在しないし、経験や蓄積がものを言うんですね。こういった知識を知らずに、ゴールからは遠ざかるようなトレーニングを積み重ねてしまっているアスリートや指導者も多いと思うんですが、そこについてはどのように考えていますか?
「サッカーで身体を動かすという事は意識下で限りなく無意識に行うものです。常に頭を使って行うスポーツですので、どこまで落とし込めるかが重要になると考えています。なのでまずは「知る」という事が適切な努力をするにあたって、非常に重要になってきますね」
ーー絶対そうですよね。ちなみに、「“意識”という枠の中で、最も“無意識”に近い場所」が存在するという事ですか?
「その場所に到達する事こそが“ゾーン”と言われているものです。『表象』、『言語』、『体性感覚』の三位一体で高次元に発揮されたものと私は捉えていますね」
【noteから成り上がったフィジカルメディア】
ーーパフォーマンス向上一つ取っても様々な角度からのアプローチがあるんですね。更に深い所はsunnyさん自身の発信を通して勉強させて頂きます。では、最後に少しだけ、sunnyさんの活動について、聞いていきたいと思います。sunnyさんは現在、どのような活動を展開されているんでしょうか?
「アパレル、インソール、トレーニングコンテンツを展開する『FC pSols』、サッカーのフィジカルメディアである『#PITTOCKROOM』が私の活動の中心になります。
『FC pSols』ではなでしこリーガーのサポートや女子サッカー選手のブランディングを中心にプロモーションしています。
一方、サッカーのフィジカルメディアとして最大手となっている『#PITTOCKROOM』では、フィジカルのみならず、オンライントレーニングやメディカルトレーニングの育成にも活動の幅を広げていますね」
ーー手広くご活躍されていますね。これらの全ての活動はnote一つから始まったんですよね?
「リアルの付き合いから始まったものはないので、noteから始まったといっても過言ではないですね」
さて、皆さんはご理解頂けただろうか。僕自身はsunnyさんの言論展開について行くので必死であったが、この知識を知らない事ほど損な事は無いというのが率直な印象である。
指導者や実際にプレーするアスリートの皆さんは、必ず勉強した方がいい。一筋縄では行かないだろうが、ロジックの無いトレーニングをひたすら繰り返すよりも、各段に効果を発揮する。そう確信している。
またもう一つ注目していただきたいのが、このすべての活動が『note』一つから始まっているという事だ。謎の美女アカウント写真と、理路整然としたパフォーマンス向上論のギャップがたまらない。
彼はもう『sunny』としていくつもの事業を抱えている。
今後の動向が楽しみであり、選手のパフォーマンスを向上させたいと思っている指導者や選手はこの人物に注目したほうが良さそうだ。