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ボードゲーム『Bread Rondo(ブレッドロンド)』を企画した、たったひとつの理由

いつもありがとうございます。株式会社MAGIの代表をしている大宮です。

今年のエイプリルフールとその翌日に発表したボードゲーム『Bread Rondo(ブレッドロンド)』は、おかげさまで、ファンのみなさまやボードゲーム業界の方々から熱烈なご支持をいただくことができました。

改めてお礼申し上げます。本当にありがとうございます。

はじめに結論を言ってしまうと、ぼくがボードゲーム『Bread Rondo』を企画した、たったひとつの理由は、ゲームマーケットとボードゲーム業界に明るい話題を提供したかったからです。

きれいごとですね。なぜ、こんなきれいごとを言うのかは、ぜひ最後まで読んでいただきたいです。

コロナ禍がボードゲーム業界に与えた苦難

ご承知のとおり、コロナ禍が日本のボードゲーム業界に与えている被害は甚大なものです。

ゲームマーケットは2020大阪、2020春と、2度続けて中止となりました。その後に開催された2020秋は来場者数が前年の45%に減り、2021大阪は前々年の65%に減りました。これは多くの出展企業、サークルにとって痛恨の事態だったと思います。

ボードゲームカフェも営業自粛、時短営業を余儀なくされ、客足は激減しました。ぼくの会社や自宅の近くにあるボードゲームカフェも、いつ行ってもお客さんがいなくなりました。持続化給付金や休業協力金、銀行からのコロナ特例融資などで現金をつなぎながら、何とか営業を続けているお店もあると聞く一方で、少しでも傷の浅いうちに…と閉店を決断されたお店も多く聞きます。

ボードゲームを販売されている店舗でも、ファミリー向けや一部の人気作を除いて、商品の売上が落ち込んでいるという話を各所から聞いています。

最も危機的なのは、みんなで集まってボードゲームをする機会そのものがコロナ禍で減ってしまっていることです。尊敬しているオインクゲームズ代表の佐々木さんは、これを「ボードゲームという娯楽自体が根本から揺らいでいる事態」と危惧されており、ぼくも同じように感じています。

今はまさに、ボードゲームという文化そのものが危ぶまれる状況にあるといえます。

それでも、ぼくらは、つくることを諦めない

暗い話題が多く流れる中、ぼくも悩みました。

「こんなに沈んだ雰囲気のまま、次のゲームマーケットを開催するのだろうか…」

「ボードゲームカフェが次々に閉店し、人が集まってボードゲームで遊ぶ機会も減り、ボードゲームの話題も減ってしまうのか…」

「この閉塞した状況下でも、みんなが楽しいと思える話題をつくることはできないか…」

そう悩んでいるうちに、たどりついた結論が『Blade Rondo』と『まじかる☆ベーカリー』のコラボでした。

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この2つのシリーズは、どちらもゲームマーケットの人気作であり、ボードゲームショップでも近い商品棚に並び、ありがたいことに多くのボードゲームユーザーの方々が知ってくれています。

「こんな状況でも、ぼくらはまだ、楽しい作品をつくることを諦めていないからな…! みんなを楽しませることを諦めていないからな…!」

その姿勢を明確に示すためには、このコラボしかないだろう。そう信じて、『Blade Rondo』を発売しているDomina Games代表の大橋さんにメールを送りました。

コロナの影響でゲームマーケットが中止となり、作品も発売延期されたりと、ボードゲーム関連の話題が少なく、企業・サークルさんやユーザーさんが沈んでしまっている印象がある昨今です。

こんな時期ですので、ボードゲーム業界の関係者やユーザーさんに楽しい話題を提供できればと思いまして、「DOMINA × MAGIのコラボ作品」をつくれないものかどうか、相談させていただきたいです。

ひとまず、私のほうで好き放題に書かせていただきますが、あくまで私の勝手な希望に過ぎず、失礼な部分も多々あると存じますので、ご笑覧いただけますと幸いです。

プロジェクトの概要と作品名:
Blade Rondo × まじかる☆ベーカリー
『Bread Rondo(ブレッドロンド)』

おおよそこのような前文とともに、『Bread Rondo』の作品としての仕様(コンセプト、ゲームシステム、カードとキャラクターなど)と、ビジネス上の取り決めをまとめて提案しました。

そして、大橋さんからいただいたご返事は、「ぜひ、やりましょう!」でした。

協力してくださったみなさまに最大限の感謝を

企画が始動してからのプロジェクト進行はすさまじいものでした。

何よりも、大橋さんの能力が超人的でした。大橋さんはプロデューサーとして、オリジナルの『Blade Rondo』のゲームデザイナーであるポーンさんと、イラストレーターのcyawaさんと、おそるべき速さで制作を進めてくださいました。ぼくらMAGIのメンバーから『まじかる☆ベーカリー』のストーリーやフレーバーテキストを引き出していく手腕も巧みでした。アートディレクターとしても、Domina Gamesならではの美麗な、うっとりと眺めたくなるほど艶やかなカードやコンポーネントのデザインを手がけてくださいました。この方こそがDomina Gamesの頭脳にして心臓なのだと、そう確信するすごさでした。

ゲームデザイナーのポーンさんは、オリジナルの『Blade Rondo』のゲームシステムに、『まじかる☆ベーカリー』シリーズの特徴である「サイコロを振る」「パンを焼く」という要素を奇跡的に融合させてくれました。もともと刀のように合理的で美しかった『Blade Rondo』をさらに研ぎ澄ませた上に、サイコロとパンというランダム要素を追加していただいたことで、『Bread Rondo』は単にイラストを差し替えただけのコラボではなく、もうひとつの新しいゲームとして立ち上がりました。

イラストレーターのcyawaさんは、『まじかる☆ベーカリー』シリーズに登場する各キャラクターを深く理解し、咀嚼された上で、『Bread Rondo』の世界観に昇華させたイラストに仕上げてくださいました。クロワ、フラン、ロール、ショコラなど、見知ったキャラクターたちが新たな解釈を吹き込まれて生まれてくるのを見るたびに、肌が粟立ちました。

もうひとりのイラストレーター、『まじかる☆ベーカリー』シリーズのぬるぴょさんも、主人公のコロネを『Bread Rondo』にあわせた画風で見事に描いてくださいました。『Blade Rondo』初弾のパッケージと同じポーズのコロネや、女王と魔女のコロネを凜々しく描いていただき、「コロネってこんなかっこいいキャラクターにもなるんだ!」と驚かされたことを覚えています。

DucQrews(ダックルーズ)さんも、すばらしいパンのイラストを描いてくださいました。以前遊んだ『クトゥルフキッチン』で、見たこともないゲテモノ料理を魅力的に描かれていたのを拝見し、『Bread Rondo』で飛び交うパンを描いてもらうならこの人たちしかいない!とお願いしたのですが、大正解でした。「防御シールドを展開するベーグル」「魔法陣で解析されるサンドイッチ」など、無茶振りとしか思えない依頼をイラスト化してくださった度量と技量には感服するほかありません。

MAGIと同じく吉祥寺にあるデザイン会社のクラウドボックスさんには、『Bread Rondo』の世界観を完璧に表現したウェブサイトを制作いただきました。いつも私のつたない説明から、言語化できていない意図を見抜き、デザインに起こしてくださる実現力には本当に助けられています。

Domina Games広報の広瀬さんには、エイプリルフールを使ったプロモーションを立案いただき、見事なサプライズを演出してもらいました。ゲームマーケットのわずか9日前、つまり発売の9日前にプロモーションをはじめるなんて大丈夫だろうか…とも思いましたが、結果は大成功となりました。

振り返ってみると、すべての始まりは、きれいごとでした。

「ゲームマーケットとボードゲーム業界に明るい話題を提供したい」

そんなきれいごとで始まった企画は、多くの仲間たちの知恵と技術と情熱を注ぎ込まれ、作品として実現し、たくさんの方々から熱烈な支持をいただくに至りました。

最後に、これを読んでくださったあなたへ

コロナ禍のため、ボードゲーム業界だけでなく、世界中がまだ苦しい状況にあります。

それでも、ぼくらは、ここで紹介した仲間たちは、楽しいボードゲームをつくり、明るい話題を提供することで、ゲームマーケットもボードゲーム業界もまだまだ盛り上げていこうと思っています。

「そうか、こんな状況でも、全力で楽しいボードゲームを出そうっていう奴らがいるんだな!」

「メーカーの垣根を越えて、ボードゲームを盛り上げようとしている奴らがいるんだな!」

「その思い、たしかに受け取った! その心意気、買った!」

そう感じてくださった方は、ぜひ『Bread Rondo』を手に取って遊んでもらいたいです。まだ友人と集まることができず、遊べないという方も、記憶の片隅に留めていただけるだけでうれしいです。

コロナ禍は、いずれ必ず明けます。

半年後か、1年後か、2年後かわかりませんが、必ず明けます。

そのとき、ゲームマーケットも、ボードゲームカフェも、ボードゲームショップも、そして、みんなで集まってボードゲームで遊ぶという文化そのものも、再び広がり、発展することを信じています。

ぼくらはそれを信じて、今も楽しいボードゲームをつくり続けています。

株式会社MAGI
代表取締役 大宮光晶


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