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ボードゲーム『まじかる☆キングダム』という理想の作品をつくるためなら、どんなことでもやった話

こんにちは。MAGIのイノモトショータです。『まじかる☆ベーカリー』シリーズというボードゲームを制作しています。

今春に発売する『まじかる☆キングダム』という作品には、私たちが込めた思いがたくさんあるため、皆様にお伝えしたいと思います。

『まじかる☆キングダム』ってそもそも何?

『まじかる☆キングダム』は、『まじかる☆ベーカリー』シリーズの最新作です。

『まじかる☆ベーカリー』シリーズとは、パン屋の見習いとして虐げられていた魔法少女が、嫌になって独立し、自分の店を持ったら、逆に自分が従業員を酷使してしまい、従業員から叛逆され、叛逆を鎮圧したあと、多角化経営をはじめて財閥を作った、という、主人公コロネの成長を描いたボードゲームです。

今作の『まじかる☆キングダム』では、シリーズ最新作として、なんかいろいろあって女王になってしまったコロネ(コロネリア女王)のお話が展開されます。

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どんなゲームなの?

『まじかる☆キングダム』は、いわゆる「拡大再生産」というジャンルのゲームです。プレイヤーは資源を用いて、自分の領地にさまざまな建物や組織を増やしていき、それによってさらに多くの資源を生み出し、再投資していくことで、もっとも大きな王国をつくっていきます。

プレイヤーが選ぶキャラクター毎に能力が異なるため、どのキャラクターを使ってどのような王国を築き上げていくかは千差万別です。プレイを通してつむがれるストーリーは、プレイヤーのみなさんの数だけあります。

まじかるキングダム

前作『まじかる☆ベーカリー~今日から財閥っ!!~』からのブラッシュアップ

本作は、シリーズ最高傑作とのご評価もいただいた前作『まじかる☆ベーカリー~今日から財閥っ!!~』をブラッシュアップし、今後さまざまな拡張を楽しんでいけるように基礎を作り直したものです。

前作をご購入いただいた方にアンケートにご回答いただいたところ、いくつもの改善点が見つかりました。

・「振る前」「振った後」といったサイコロの処理が煩雑である
・マーケットカードの枚数が少なく、終盤に枯渇してしまうことがある
・特定のキャラクターの能力が強すぎる

などです。私たちは、それらのアンケート結果を分析し、以下の3つの項目を軸をして改善をすすめていきました。

1.より「遊びやすく」すること
2.より「繰り返し遊べる」こと
3.より「面白い」こと

1.より「遊びやすく」すること
「振る前のサイコロ」を用いてマーケットカードを獲得したり、「振った後のサイコロ」を用いてマーケットカードを設置したりと、少し煩雑であった処理を改善し、今回はとりあえずサイコロを振って、そのあとに何でもできるように処理を変更しました。これにより、処理にかかる時間を18%(当社比)削減し、プレイ中のストレスを34%(当社比)減らすことができました。Co2排出量も32%(当社比)削減し、地球環境に貢献することができました。

2.より「繰り返し遊べる」こと
前作も「何度も遊べる!」というありがたい評価をいただいたのですが、今作ではさらに何度も遊べるように、マーケットカードやレジェンドカードの種類を増やし、プレイごとに組み合わせを変更して遊べるように改善しました。

3.より「面白い」こと
「面白い」とはどういうことだろう? これはゲーム制作者にとって、最大の悩みかと思います。いくら考えても結論の出ないこの問題について、私たちは、「面白い」とは「まじかる☆ベーカリーシリーズのファンの方々」がゲームを通して「感情が動くこと」と定義しました。

感情が動くゲームになるように、ゲームにおけるダイナミズムを追求しました。拡大再生産というジャンルにおいて、よりダイナミックな動きを追求するということは、ゲームバランスが崩壊し、ゲームとして成り立たない可能性をはらんでいます。

そのため、本作ではまず、基礎的なゲームバランスについてはスプレッドシートで全カードのパラメータを集計管理することで、数字や確率の偏りがないように均整に配分設定しました。

しかし、そのように理論値や確率計算のみによってバランス調整するだけではダイナミズムを表現することはできなかったため、一度ゲームバランスが崩れるところまでカード効果を極端に強くし、それをギリギリのところで成りたせるための手触りの調整を長期間かけておこなってきました。

1日数回のテストプレイを1年近く繰り返し、正確には数えていませんが、テストプレイの回数はおそらく500回を超えました。ゲーム性に大きく影響を与えるパラメータと、そうではないパラメータを分類、重みづけし、1つのパラメータを変更するごとに各キャラクター分のテストプレイを複数回行わなければならないため、調整にはとても苦労しました。王国は幾たびも興亡を繰り返し、大地は震え、海は荒れ、空は裂け、人類が終焉を迎えた時に、テストプレイが完了しました。

イラストは全て新規描き下ろし

キャラクターデザインは、まじかる☆シリーズをずっと制作いただいているぬるぴょさんに引き続きご担当いただきました。イラストの彩色と仕上げはぬるぴょさんに加え、城谷しおさんにもお手伝いいただき、とても魅力的なキャラクターイラストが完成しました。

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マーケットカードとレジェンドカードのイラストは、DucQrewsさまに制作いただきました。DucQrewsさまはボードゲーム『クトゥルフキッチン』の料理イラストも担当されており、その美麗なイラストに一目ぼれして制作をご相談させていただいたのですが、快く引き受けてくださりました。

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結果、このゲームのために新規制作されたイラストは、

・キャラクターカード8種類
・マーケットカード30種類
・レジェンドカード10種類
・サイコロパンカード7種類

となり、じつに55種類にのぼりました。それらのイラストに、カード種別ごとの装飾デザインを当てはめ、フレーバーテキストを加え、上述の通りのカード効果とパラメータの調整を長期間にわたって入念に施し、1枚1枚のカードに惜しみないコストを投入してつくり上げていきました。

ボードゲーム制作の経験がある方でしたら、これほど多くの種類のカード1枚1枚に、ここまでのコストをかけることが、いかに採算を度外視した行為であるかがご想像いただけると思います。

しかし、遊んでくださる方に満足いただくため、私たちはコストも採算も度外視し、ひたすら理想の作品をつくることだけを追い求めました。

箱へのこだわり

さらに、女王となったコロネちゃんの新しい門出と、キングダムという新章にふさわしいものになるように、光り輝く豪華なパッケージにしたいという思いもありました。140種類の紙の中から選定し、実際にサンプルの箱を5種類作った中から最高のパッケージを決定しました。

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また、かねてから要望として多かった「スリーブを付けたままで収納できる箱にしてほしい」というご意見に応えるため、なんども箱を試作し、満足のいくものに仕上げました。最終的に、ユーロサイズのスリーブを装着したまま収納できる箱になりましたので、是非お試しください。

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最後に

以上、長々と書きましたが、今回の新作『まじかる☆キングダム』は時間、コスト、ユーザーの皆様からのご意見とご感想、そして私たちのボードゲームに対する情熱をすべて注ぎ込み、一切の妥協なくつくり上げた自信作です。この文章を読んでご興味を持っていただいた皆様、ぜひ一度遊んでみてください!

まじかる☆ベーカリーシリーズ
イノモトショータ


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