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【Genii 2024.3.】タイムスリップしてきたマジシャン?Pop Hydn:Genii 2024 Feb.を読んで

1936年から続くアメリカの手品雑誌 Genii Magazineですが、2024年3月号はアメリカはロサンゼルスで活躍するベテランマジシャン、Pop Haydn(ポップ・ハイデン、くらいの発音かと)が表紙&カバーストーリーでした!

どのくらいベテランかというと、マジックキャッスルのマジシャン・オブ・ザ・イヤーをステージやパーラー、クロースアップ、バー部門で1回以上ずつとっています。全部で7回とってるんです(笑)もはや獲りすぎで、殿堂入りしてもおかしくないレベル。2006年にはマジックキャッスルのアカデミーオブマジカルアーツの副会長に就任しています。

ベテランだからこそ、自身のキャラクターを見つめ直す

カバーストーリーでは、Pop Haydnさんのマジシャンとしての人生が詳らかに紹介されていました。1949年テネシー生まれで、子供の頃に教会の牧師さんがサマーキャンプでマジックを見せてくれたところからマジックへの興味が湧いたこと。大学を中退し仕事を転々としながらもニューヨークに拠点を移したこと。視力が悪かったことで徴兵からも対象外となり、職も失ってストリートマジックで稼ぎ始めたこと。波乱万丈の人生でした。

マジックキャッスルへ拠点を移したのちは、Dai VernonやBilly McCombといった大物マジシャンたちとの交流を通じて、Whit Haydnという芸名をつけることになります。その後もBilly McCombは公私ともに非常によくしてもらっていたようです。

私がこの記事で感銘を受けたのは、彼のかなり長いキャリアの中でも、彼が56歳の頃に自身のキャラクターを見直し、ゼロから構築しなおした点です。

カウボーイ・フェスティバルにブッキングされた際に、得意としていたスリーシェルゲームという手品をリクエストされていました。「カウボーイ・フェスティバル」だから、英語も南部訛り(カウボーイの文化はアメリカ南部の文化です)とし、服装やキャラクターを変えてみたところ、かなり評判がよかったそうです。そこから、3年ほどかけて、最終的に現在演じているキャラクターを作り上げたとのことでした。

上記リンクをクリックいただけるとわかると思いますが、ビクトリア朝時代のような格好にヒゲを蓄えたオジサマがPop Haydnです。(芸名も同時に変更したとのこと)
ニコラ・テスラ(1900年代前半の人物)が友人であり、電気関係の事故で気づいたら現代にタイムスリップしていた、という設定。設定だけ聞くとトンデモな感じではありますが(笑)実際彼がどんな雰囲気で演じていたかは次の映像を見てみてください。

マジシャン歴が長くなってくると、過去演じていた作品やスタイル、服装やキャラクターを変えずに経年してしまい、そこのちぐはぐさもあってか、ウケなかったり違和感を抱かれたりするのだと思っています。このあたりは、いろいろなプロマジシャンの方からも聞いたこともあるので、「あるある」な課題なのかもしれません。特に、年齢と服装が合っていないとかは、アマチュアの方でも発生しうる話かと思います。ここは自己認識しにくい上に、ゼロから作り直すことの心理的・時間的コストが大きいことから、真面目に取り組むことは大きなハードルがあります。そういった中でも、ゼロからキャラクターを見直し、それで一級のものに仕上げているPop Haydnさんには、リスペクトしかありません。

Genii本誌には詳細に今のキャラクター設定も記載してあったので、興味ある方はぜひ読んでみてください!

訃報:Karl Fulves

相変わらず訃報も続きました。セルフワーキングマジックの大家、Karl Fulves(カール・ファルブス)氏が紹介されていました。Fulves氏は、1938年生まれでしたが、2023年2月にお亡くなりになっていたそうです。
”Self Working Close-up Card Magic"や"Self Working Mental Magic"など、名著を数々残しています。このnoteを読んでいる方なら、名作Gemini Twinsの考案者といえばわかりますでしょうか。
それにしてもこんなにお年を召している方とは知りませんでした。あまり表舞台に出てくる方ではなくアマチュアの研究家でいらっしゃったそうです。御冥福をお祈りいたします。

Karl Fulvesさんの著書のうちのひとつ

香港ディズニーにマジシャン

その他、Geniiには最新ニュースも掲載されていますが、そのうちのひとつが香港ディズニーランドに登場するストリートマジシャンについてでした。私のXをフォローしてくださっている方は何度かつぶやいたのでご存知かと思います。まずは下の動画を見てみてください。

香港ディズニーランドにある、アナと雪の女王の舞台であるアレンデール王国のお抱えマジシャンが演技しています。しかも、かなりクラシックな部類のトリックを演じています。

実は東京ディズニーシーにも2024年6月にファンタジースプリングスという新エリアが完成しまして、その一角がアレンデールになっています。ここにマジシャンが現れるのでは?!と少し期待したのですが、今のところ出現情報は確認できていません。残念でなりません。マジックショップはディズニーにあるので、ちょっとだけ期待したんですけどねぇ。

その他面白かったもの

今月はその他では、David KayeことSilly Billyのキッズマジックに関するコラムが最高に面白かったです。彼の友人のマジシャンの話で、学校でのキッズマジックの仕事があり、その学校に車で向かって到着したら、車のトランクには何も道具が入っていなかったという状況。かなりの田舎町でホームセンターなどは近くに存在せず。しかも、事前の打ち合わせで学校には「忍耐・挑戦」をテーマとしたショーにしてほしい、というリクエストがあったというのです。ショー時間は40分間、さて、彼はどうしたのでしょうか。
この顛末はぜひコラムを読んでいただければと思いますが、確かにショーの直前に道具が何もないとなったとき、キッズマジックは特に厳しいところがありますね…。道具そのものの面白さを一部活用するトリックもありますし。

Podcastではもう少し踏み込んで話しています!

ということで2024年3月号の感想でした。ポッドキャスト『奇術積読宣言 ON AIR』ではもう少し詳細に語っていますので、ぜひ聞いてください!

最近noteの更新をサボりまくっていましたね…。気ままに更新はしていきたいと思います。

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