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2024共通テスト「国語」分析(詳報)


はじめに

けい先生です。共通テストは文科省の、現場教員や生徒(とくに受験生)に向けたメッセージとして重要だと思っています。分析の観点は次の二つです。

  1. 高校生にとってふさわしい設問か

  2. 設問の良い点はどこか


第1問 評論文

共通テスト「国語」第1問の問6は、問題文を読んだ生徒(Sさん)が書いた【文章】が提示され、それをSさんが推敲する、という設定の設問。おそらく学習指導要領の「B.書くこと」を意識した工夫の見られる作問で、注目されます。そりゃあ当然、学習指導要領を踏まえていますよね。

問6(i)設問文で、生徒のSさんは、自身の表現を「前後の文章に合わせてより具体的な表現に修正することにした」とされます。これはおそらく、学習指導要領「B.書くこと」の、たとえば「現代の国語」における指導事項ウ「自分の考えや事柄が的確に伝わるよう,根拠の示し方や説明の仕方を考えるとともに,文章の種類や,文体,語句などの表現の仕方を工夫すること」を意識した設問です。

共通テストの問題は、文科省から高校現場・生徒(受験生)への「こうした力を身につけてね!」というメッセージでもあります。個々の高校教員は、これらのメッセージに対する専門職・実践家としての自身の見解を、しっかり持つ必要があると思われます。

第2問 小説

国語の第2問(小説)は、本文よりも【資料】の選び方にうなりました。太田省吾が演技について論じた文章「自然と工作ーー現在的断章」からの引用でした。たとえば、「われわれは、なに者かでありたいのだ。なに者かである者として〈私〉を枠づけ自己実現させたいのだ」

私自身、「なに者かでありたい」と欲求して、うまくいかず葛藤し、何とか折り合いをつけて高校生活を送っていました。ちなみに演劇部の活動ばかりしていて、初の大学受験には落第しました。これは、高校3年生に向けた文章の選択として、実にふさわしいと感じます。解答しやすい(?)ことも含め、何となく作問者の温かいエールすら感じました今年の国語問題中の白眉だと勝手に思っています。

第3・4問 古典(古文、漢文)

第3問(古文)についてはオーソドックスな設問です。しかし、資料の【文章】を踏まえた設問を解いていくうちに、本文の内容をより深く読解できるようになっており、良問だと思います。

「桂」という言葉一つとってみても、実は本文は『源氏物語』や中国の古典を踏まえることで、イメージの広がりを作っている。問題を解きながら、古典を読む愉しさを感じました。もちろん、受験生は時間と必死に格闘して、ドライに読んでいるでしょうけれど。ただ、学生時代の友人は文学部の学部入試問題で夏目漱石『こころ』における「同性愛」的側面についての評論が出題され、卒業までことあるごとに話題にし続けました。さすが文学部。

第4問(漢文)も古文に引き続き、オーソドックスな問題。楊貴妃、玄宗皇帝については長恨歌などで高校生にも比較的馴染みのある題材。よくこの題材を見つけてきたな、といつもながら感心します。これまで学習した知識と注釈を組み合わせて、あまり迷わずに解答できたかもしれません。

まとめ

高校時代のけい先生にとって、共通テストは恐怖でしかありませんでした。「これで自分の人生が決まる!」と本気で思っていましたから。後から振り返ると、まったくそんなことはなかったのですけれど、その渦中にあるときは、気づかないですよね。その後、私は受験に失敗し、合格したと思ったら悩み多き学生時代を送り、教員採用試験に受かったと思ったら、鬱病になりました。でも、こうして生きています。いま抱えているさまざまな問題は「折り合いをつけた」あとで振り返れば、大したことがなかったのに気づきます。そういうものです。