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障害者にまつわる「お金」と「権利」は、『障害の社会モデル』を理解すると見えてくる



今回は「障害者にまつわる『お金』と『権利』」について、記事を取り上げながらお話ししていきます。


※なお本文中「障がい者」を「障害者」と記すのは、

「字面の是非で私たちの抱える諸問題が軽減する訳でも、まして解決する訳でもない」

という、知人の障害当事者の意志を継ぐものであり、他意はないことをあらかじめ御了承ください。


【記事の概要】

・うつなどの症状を繰り返す、双極性障害などと闘いながら、“B型”の就労継続支援の事業所に通う佐藤さん(仮名)。

それまで通っていた事業所が突然、倒産。一部の【工賃】が未払いとなった。


・B型”の事業所は、働くための訓練をする場所で、福祉サービスの提供にあたり、佐藤さんなどの利用者は、雇用契約を結ばない制度。

・今回、佐藤さんが働いていた事業所の“従業員”は雇用契約が結ばれていたため、未払い分の【賃金】が保障された。

同じ事業所で「利用者」と「従業員」で対応が分かれる結果となった。


・「制度の中での位置づけで、こんなに『そんな価値ないよ…』と、言われているのかなと
(佐藤さん:仮名)

佐藤さんは、倒産などの緊急事態で【工賃】が未払いになった場合は、行政が立て替える…といった制度を作るように、札幌市に求めた。


・就労継続支援…障害の程度で分けられる事業所「A型」と「B型」


・A型⇒一般就労に近く雇用契約を結ぶ【賃金】

対価:全国の月額平均は8万3000円あまり


・B型⇒雇用契約を結ばず自分のペースに合せて働くことが可能【工賃】

対価:約1万7000円

障害者の就労支援事業所が倒産…未払いとなった報酬【工賃】を巡る当事者の思い「そんな価値ないよ…って言われちゃっているのかなって」雇用契約の有無で保障に差 札幌市

【障害者が働く上でネックとなる障害年金との兼ね合い】




障害者が働く上で問題となるのが「障害年金」との兼ね合いです。




この記事では

「障害年金の受給は障害がある方の状態により個別に認定審査をするため、一概に受給が継続できるとは言えない」

とあり、働きながら障害年金を受給するときに停止になり得るケースは


障害が軽くなったと判断された場合

→障がいにより生活や仕事が制限されない状態まで回復したと判断されると、受給が停止になる可能性がある


20歳前傷病による障害基礎年金の場合

→20歳前傷病による障害基礎年金は年金の加入を要件としていないため、

◇前年度所得が472.1万円を超える場合→全額支給停止

◇前年度所得が370.4万円を超える場合→2分の1の支給停止

※2023年時点の金額
※扶養親族がいる場合:扶養親族1人につき「所得制限額」に38万円を加算など扶養家族に関する加算あり


だとされています😶


障害年金の定義は

病気やけがで生活や仕事などが制限される場合に受け取ることができる年金

ですから、『障害認定基準』の

「(前略)労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること」

という考えと照らし合わせて、総合的に判断されます。


これは

「きちんと働けて収入があるんだから年金いらないよね👨🏻‍💼」

という行政側の判断と

「いやいや、働いていても生活していくために支援は必要なのだから、支援に必要な部分は補償してもらわないと困る🧑🏻👩🏻」

という障害者側の実情がせめぎ合うものだと言えます。


【お金だけの問題ではない、権利の話】



今回の記事での訴えは、単に「お金」だけの話ではありません。


「制度の中での位置づけで、こんなに『そんな価値ないよ…』と、言われているのかなと」

という障害者の尊厳、つまり『人権』に関わる案件でもあります。


この人権に対しても合理的配慮を求めることを記したのが「障害者権利条約」及び「障害者差別解消法」(2024年4月改正)であり、障害者権利条約は日本も2014年に締結しています🤝🏻





そのため、制度上の区分である「就労継続支援A型」と「就労継続支援B型」によって差別が生まれているのだとしたら、その制度が生み出す問題点を対話によって解消する、あるいは代替案を提示する方向となります。


それだけに、今回の訴えに対しても市がどのように応えるかに注目が集まります。


もし今回の訴えを「制度上問題ない」と退けるのであれば、それは障害者の尊厳を軽んじる流れとなり、障害者権利条約締結から10年経っても行政レベルで実践できていない事実があらわにされます。

行政で実践できない合理的配慮を今回の障害者差別解消法改正で事業所に義務を課したとあれば、その歪みによって「障害者に対するネガティヴ・イメージ」が水面下で広がることも懸念されます😔


権利とは表面上に起きる出来事だけでなく、その背景にある人間の心の動きまで考慮して初めてその輪郭が見えてくるものなのです。


【まとめ】権利は「主張」ではなく「対話」で成り立つ



今回は「障害者にまつわるお金」についてお話ししてました。


「生活に支障がある状況(障害)」と「働ける能力」を『お金』で結びつけるのは、本来であれば合理的配慮ではありません。


どれだけ仕事で収入が上がっても、それは障害者本人や支える人々の努力や創意工夫の賜物であり、

「障害がある、あるいは障害とさせられている事実」

とは別件なのです。



このことは『障害の社会モデル』において

「障害」は、個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である、とする考え方。

心のバリアフリー/障害の社会モデル|国土交通省



と記されていることからも明らかです。




ただ、行政としても「できる施策」、「支給できるお金」には限度があり

「どうしたら全員がしあわせで、ゆたかになれるか」

を、障害者本人を交えて全員が同じ目線で話し合うことが『福祉』実現の鍵となります。





障害者権利条約や改正障害者差別解消法への理解を進める中で


権利とは一方的に施されるもの、主張すれば守られるものではなく、一人が動き出すことで周りが気付き、対話した上で成り立つもの


という認識が広まることを願います🤲🏻


なぜなら権利とは本来、障害の有無に限らず「誰にとっても同じこと」であり、権利への理解が進んだ先に


「権利を主張しなくても『あたりまえ』の事として実現される社会」


があり、誰にとっても「そこそこしあわせで、ゆたか」な未来が築かれていくからです😊






権利を主張するうちは「どちらが正しいか」の『正しさ』信仰に陥り、必ず「敗者」を生むことから福祉実現からは遠ざかります😥




今回もここまで読んでもらい、ありがとうございます☺️





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