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ナイジェリア国鉄旅 6

第5章 モクワ〜ミナ

ここまで23時間かけて全行程の47%。このペースで行くとやはりカノまでは48時間程度かかりそうな勢いだ。ネットやWIKIの33時間という情報はやっぱり嘘だった。やっぱりアフリカ情報は体験しないと真実がわからない。

ラゴスから528kmにあるモクワ駅のホームで、もはやお決まりとなってきた駅名ボードとの写真撮影を終える。駅名一覧ボードも2枚目に入って、終着駅カノにむけて再スタートだ。

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思えば、ニジェール川を渡ってからエアコンの効きが悪くなり、車内はムシムシ、どっと汗をかいていたので、炎天下であってもやはり外は気持ちがいい。と、そこに汚れたフィルターを大量に抱えたにいちゃんが目の前にやってきた。「なにそれ?」と聞くと、にいちゃんは「エアコンのフィルター」と一言だけ発して、ブラシでフィルター掃除を始めた。そうか、フィルターが詰まってエアコンが効かなくなっていたのかぁと納得。このにいちゃんも、同行しているメカニックの一人だったのだ。

ホームでは小さい男の子と女の子がお母さんに全裸にされ、3円のパック水(ピュアウォーター)のシャワーを浴びせられている。気の毒なことは、その買ったばかりのピュアウォーターはギンギンに冷えていて、子供達が一オクターブ高い悲鳴を上げていたことだ。

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線路の上でお祈りをしている人もおり、意地悪にもGoogle Mapで方角を確認してみたら、まさにドンピシャのサウジアラビアのメッカの方向でびっくりだ。

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小腹が空いたので、フライ魚を買って列車に乗り込むと、列車は後半の旅に向けて15:31に動き出した。揚げたてのアツアツフライ魚はぺぺパウダー(ハバネロパウダー)との相性が良く、もう一匹買っておけばと後悔。気がつけばエアコンがもとどおりに機能し、快適な室温になっていた。

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不思議なもんだ。夜から明け方にかけては、もうこのポジションは限界だ、腰も痛いし途中でギブアップかもしれないと若干弱気になっていたのだが、停車のたびに外を歩き回り、車窓を眺めるポジションも、あぐらスタイルにしたせいか、出発から26時間後の今はなにげに快適になってきて、いくらでも行けそうな気がしてきた。こうして単調な外の景色を眺めていると、ある意味贅沢な気分になってくる。

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列車は17:49に次の停車駅、KUTIWENJIに到着した(611km 54% 26時間)。なぜかこの街、ググっても何の情報も出てこない。降りてみると先頭車両の牽引気動車の平らな部分は、いつの間にか、乗客の荷物でいっぱいになっていた。さて今更ながら、乗客にとって何気にストレスなのは、燃料補給駅を除いて、どの駅でどのくらい停車するのが全くわからないことだ。ここまでも5分以内の停車時間から50分くらいの停車時間までバラバラで、よく利用するという乗客に聞くと、30分と言っていた停車時間が5分だったり、その逆もあった。これがおしっこタイムには勘弁だ。汽笛がなった5秒後には動き出すものだから、油断がならない。そんなこともあってなのか、ラゴス出発直後は割と遠くのブッシュまで行っていた女性も、だんだん列車の近くでするようになり、このKUTIWENJIでは、ついに列車のホームで用を足す人が多くなってきた。どっちにiPhoneのカメラを向けても必ず誰かの放尿シーンが入ってしまい、レイアウトに苦労をする。

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この駅はたった5分の停車時間で出発、あたりは徐々に暗くなってきた。これだけ長い旅になると、みなモバイルバッテリーを持っていないので、携帯電話の充電量がピンチとなる。実はファーストクラス一車両あたり64席あるのだが、うち4つの座席にだけにコンセントがついている。初めはその席は超ラッキー席だと思っていたが、次から次へと「充電させてちょうだい」と誰かが頼みに来るので、おちおちのんびりしてられない。私の後の足の臭いにいちゃんの席にはコンセントがあり、もはや携帯の充電屋さん状態になっている。充電が満タンになると携帯を持ち主に届け、次の携帯の充電をしていくボランティア仕事にあけくれており、足を投げ出す暇がなっている。これはラッキー。

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20:08に到着したZungeru駅(685km 61% 28時間)で、今日は屋台弁当を夕食にしようと外に出たが、どういうわけか、この駅では食べ物を売っておらず、豆を売る人ばっかりだった。このエリアの名物なのか、飛ぶように売れている。スーパーのポリ袋満タンに入れて1000ナイラ(330円)で「超安〜い❤️」と、ファーストクラスの乗客も次々に豆を買っていき、乗降するドア付近はみるみる豆の袋でいっぱい、ついには足の踏み場がなくなってきた。

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お腹を空かせて22:12、列車は2度目の燃料補給基地駅Minna(743km 66% 30時間)に到着した。実はMinnaといえば、ラゴスから飛行機で1時間の首都アブジャから車で少々行けば着けるので、気持ち的には遠くなかったのだが、30時間かけてたどり着くMinnaは感慨深い。さて飯だ!ホームに降りると早速行列ができている屋台があり、メニューは白ご飯にぶっかけトマトシチューオンリーだ。
「行列ができていてメニューが一つしかない」

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この状況は美味しいに相場が決まっている。おばちゃんは、珍しいはずのオイボ(白人)であることには全く関心を示さず、自分のシチューをサーブすることに徹している。プロだ!私も右手の人差し指で1を作り、無言でおばちゃんの前に突き出すと、おばちゃんも無言でよそって、私に渡して来る。その間5秒の早業だ。たしかにうまい!トマトのコクとハバネロそして何らかのコクが後引き感につながって来る。なんなんだこの後引き感。スプーンが止まらない。牛肉の具もとてもやわらかく味が染みていて、高級レストランのシチューのごとく、口の中でホロホロと崩れるテクスチャー。私もおよそ3分でかき込んでしまった。というわけですっかり写真を撮り忘れた。笑

この駅では1時間は停車するので、駅の構内を探索(といっても暗くてほとんど見えないが)していると、突然その時はやってきた。自宅を出発して38時間、黄門様を圧迫するあの大王様がついにやってきたのであった。

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第6章 ミナ〜カドゥナジャンクション

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