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ナイジェリア国鉄旅 4

第3章 イバダン〜イロリン

深夜に4箇所ほど停車駅があり、早朝6:27にOffaという駅に着いた(ラゴスから347km 全行程の31%)。この駅では、牽引のディーゼル気動車に燃料を補給するため、1時間以上停車するいう。
列車が到着すると、なんと全乗客が歯ブラシに歯磨き粉をつけて降りていった。なんて用意がいいのだ!歯ブラシなど使う機会がないと持ってこなかった私以外、全員が歯を磨いている。ここ3年思い出してみると、服が超臭い人にはよく出会うが、口が臭い人に出会った印象は皆無だ。てか口の臭い日本人率の方がはるかに多い印象だ。お金持ちでもそうでない人でも、日本人に比べたら本当に歯が白くて綺麗だと思うが、その陰には、熱心な歯磨きの習慣があったのだ。これは本当に驚きだ。駅のホームでは500ml入りのパック水(ピュアウォーター)を10ナイラ(3円)で売っていて、私の同行ポリスも5パック購入、歯磨きと、頭と顔を洗って、着替えてきた。そして朝の定番おトイレ。大の人と女性は草むらに、小の男はあちらこちらで、ほぼ全乗客がやっている。これはこれで初めて見る壮大な景色である。駅のホームも、一瞬でいたるところに水たまりができて、それが顔を洗った水なのか、おしっこなのかがわからない。ただ草むらに向かう連中はトイレットペーパーなど持っておらず、片手にピュアウォーターのパックを持っているだけなので、用を足した後は左手と水で洗っているんであろう。隠れているようで隠れていないので、しゃがんでいる男女も結構目に入ってしまう。そしてイスラムのお祈りを皆思い思いにやっている。

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この駅では、燃料補給の気動車は一度切り離されてどっかで燃料を入れてからまた戻ってきて再連結するので、気動車がいない間は絶対に発車することはなく、皆安心して自分の作業をすることができる。

駅には朝食屋台も並び、食パンをかじる人、定食っぽいものを食べる人それぞれだ。ただその後のビニール袋や発泡容器の弁当箱、ペットボトル等、思いっきり散乱するゴミの量はハンパない。これぞ、ホームと線路は、ザ・ゴミ箱 だ。

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燃料を満タンにした牽引車を再連結し、すっかり明るくなった7:40、列車はカノに向けて再スタートを切った。しばらくすると、食堂車の昨日のお姉ちゃんが、何か食べませんか?と注文を取りに来た。「インドミー」と呼ばれる、ナイジェリア版焼きそばを注文したら、15分後には出来立ての「インドミー」を彼女自ら満面の笑顔で持ってきてくれた。値段もラゴスの屋台と変わらない低価格なので、料金と同等のチップを支払うと、彼女の笑顔はより最高になった。

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朝食をすませ、車窓を眺めながらウトウトと船を漕いでいると、まわりがうるさくて目を覚ました。いつのまにかファーストクラス車内はダンス会場と化していたのである。軽くその模様をビデオで収めたのち、もう一度眠りにつくふりをしたら、こんな声が聞こえてきた。「あのオイボ(白人)にも踊らせよう! 起こせ起こせ!」「オイボ!オイボ!」そして、誰かが私の同行ポリスに聞いている。「オイボは踊るのが好きなのか?」すると、あろうことに私のポリスは「もちろん!彼はアフリカの踊りが大好きで、アフリカ人なんだ!ビーチに行ってもどこに行ってもアフリカ人と踊りまくっているんだ」(やめろ。やめろ。言うなー。と心の声)

寝たふりをしながら、私は考えていた。私が踊ると、上手い下手は別にして、必ず盛り上がる。オイボがアフリカンダンスを下手なりにでも踊る姿は、やっぱ珍しいので、かなりウケる。これは経験上間違いないのだ。問題はこの狭い空間で、旅もまだ前半。もしウケてしまうと、あと残り30時間以上ある残りの時間、「私もオイボと踊りたい。私も。私も。ビデオ!ビデオ!」と、どんだけ踊りに引っ張り出されるか。これは結構しんどいことになると計算。たぬき寝入りを続けた。
横ではポリスが「KEN!DANCING!KEN!DANCING!」と、私を揺りうごかすし(泣)」。止むを得ず、そっと細い目を開けて、ポリスを思いっきり睨みつけた。 すると、伝わったのだろう。「彼は眠い。寝させてあげよう。ボスは、今は踊りたくない」そう、大声で皆を説得、九死に一生を得た。終着駅まであと1時間とかなら、間違い無く踊って車内を盛り上げていたと思うが、残り30時間というのはキツかった。ごめん。

狸寝入りをしていると、列車は9:05にイロリンという駅に着いた(391km 35%)。イロリンはクワラ州の州都で人口は100万人超の大都市。2年前までセールスで働いていた同僚が、「陸の孤島」と形容した街で、ラゴスから行くと、奥まっていて車で行くにも相応の覚悟がないと行きづらいエリアだ。そんなエリアに足を踏み入れられたのは個人的に感慨深い。早速彼に写メを送ると、「おー!都市部は都会ですけど、地方は凄い田舎なんですよー」と、イロリンに限らず世界中どこでもそうであろう、あたりまえすぎるコメントが帰ってきた。最後尾の2両は荷物専用車両なのだが、すでに満杯でもうこれ以上の荷物は積めない状況だ。そんな中、停車の時間を利用して、客車のブレーキパッドを交換する作業が行われている。

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45分停車した後、列車はさらに北に向け出発、もうすぐ西アフリカ9カ国を横断する大河ニジェール川の鉄橋横断というハイライトが待っている。
ここまでで、まだ全行程の1/3。先は長い。

第4章 イロリン〜ニジェール川〜モクワ

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