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エージェントとの会議

まだ6月の初めだというのに、じっとりと額に汗が滲む。
私はパソコンの前でじっと待機し、会議の始まりを待っている。この待っている5分はやけに長く、落ち着きがなくなり、急に先程まで行きたくもなかったくせにトイレに行きたいと内臓が声を上げ、喉はカラカラに乾き始める。
もはやいつものことだと用意しておいたコップに手を伸ばし、喉を潤す。キンキンに冷えた水は、緊張に震えていた暑さを忘れさせてくれる。…内臓が悲鳴を上げた。

画面が変わる。会議が始まるようだ。いつもと違う形式を利用したそのオンライン会議で、音声と映像がきちんと映るのか、自分自身の位置が問題ないのかと気を揉んでいたが、恙なく事は進んだ。うるさかった内臓も鳴りを顰め、目の前に映った相手と挨拶を交わす。
会議の形式自体はもう幾度も経験している。なんせもう4社目だ。いつもの定型の言葉を使いながら、過去3社での反省点を活かして応答する。
今回の相手とはまずまず自分の望む条件を突きつけられただろうか。

自身の将来について、どう在りたいのか。過去ーー私が忘れ去っていた授業の内容や、高校時代の思い出がーー蘇る。ああ、私はずっと、過去を振り返らずに条件だけを見てしまっていたのだ。
これまでの転職活動で足りなかった要件をまざまざと見せつけられた。
その上で、当たり前に考えていた条件の、必須条件と譲歩条件を1項目ずつ提示し、回答を待った。これから、私の行く末を決めるために他社の手を使ったことは、決して悪いことではなかったのだ。選択は問題なかったのだと思える、有意義な会議だった。

これから、彼の働きぶりを見よう。いずれ私の人生の糧になるから、と思えるヒアリング力であった。

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