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ぼくの 爪

爪が軟いのです。やわやわ。よわ。へなちょこ。

皆様の爪はどうですか?形がキレイですか?指が長く見えます?それとも、コンプレックスがある?
私はあります!爪がまぁるいのです。

中学の時、爪が長い人に憧れました。その人の爪の先は真っ白で、ピンクの爪との境界線がくっきりしていて、とてもキレイに伸ばしている同級生の爪がとても好きだった。
私も真似して伸ばしてみるのですが、爪、白くない。黄味がかった白なのです。なんだか自分の爪が不衛生で(長い爪が不衛生だというのは承知の上で)、憧れの爪にならない。あと、爪がぐにぐにと横に曲がるのです。それで、いつかは横に割れてしまう。
どうやってみんなあんなに長く、白く伸ばせるのだろう。不思議に思いながら、白く長い爪に憧れながら、私は社会人になりました。

ネイルサロンに行ってみよう。
爪のコンプレックスをなんとかするために。
キラキラの爪を手に入れるために。
その頃には長い爪に憧れはなくなっていました。ただ、爪のピンクのところを伸ばして、美しい手を手に入れたいと思ったのです。

爪は順調に伸びました。今まで何をやっても伸びなかったピンクのところがたちまち伸び、4ヶ月経った頃にはキレイな爪を手に入れたのです。
しかし、問題もありました。ネイルしてるから、ピンクのところが見えません。それに、ネイルしている間は自力で爪を切れないので、長くて鬱陶しい。
仕事に差し支え…はしないけど、個人的にもっと短い爪の方が落ち着きます。
長年短くまあるい爪で過ごしていたため、ふと目に入るとしょんぼりしていましたが、機能性に関してはあのまあるい爪がちょうど良かったことに気づきました。

しかし、問題が発生しました。
ネイルサロンに通うのをやめ、自爪で過ごして1週間。自分の爪がぐにゃぐにゃと頼りなく、せっかく伸ばしたピンクの爪のところで折れ始めました。
そう、私の爪は凄く薄かったのです。
薄すぎたから、中学の時に伸ばした爪が向こうが透けて見え、黄味がかってるように錯覚されたのです。
ネイルをとり、爪の鎧をとった私にはもうなす術もありません。ピンクの爪がボロボロになって、剥がれ落ちて、小さく、小さくなっていきました。
ピンクがこれ以上溢れないように。これ以上、爪が傷まないように私は境界線が見えないほど爪を短く切り、また爪が歪んで、脆くなってきたら切り。
元の小さくてまあるい爪が戻ってきました。
ああ、私は、やっぱりこの小さくてまあるい爪が自分の生活スタイルに合っているんだ。私の爪は、このサイズ感で初めて、折れずに過ごせるんだと実感しました。
しかし、一度知ってしまった味は忘れることができません。あのピカピカの鎧を、もう一度纏いたい。あの頑丈な鎧を。ピンクが伸びた爪を、もう一度味わいたい。
味わえばいい、それはそうだ。お金を払えばネイルはできる。でも私は、飢えを抑えながら、この小さくてまあるい爪を愛して生きていこうと思う。
私の爪。みるたびに、美しくなくて、水に濡れると頼りなくて、ペットボトルのラベルを剥がすのもちょっと押し負けるような爪だけど、そんな不便も丸ごと、愛せるようになりたいなと思う。

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