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ボーイスカウト〜保護者達の闇

Facebookの「知り合いかも」にある女性があがってきた。

吐き気がするほどに思い出したくない顔であった。

息子は小学生から中学生までボーイスカウトに所属していた。

ボーイスカウトは、小学2年生以下は『ビーバー隊』、3年生以上になると『カブ隊』に所属し、6年生からは『ボーイ隊』という隊に移行することになっている。

息子が4年生のとき、私はデンリーダーというリーダーを頼まれた。

ボーイスカウトも、野球やサッカーのように保護者が何かしらの役目を果たさなくてはならなかったのである。しかしデンリーダーというのは年2回あるキャンプ中ずっと子ども達に付き添わなくてはならず、結構大変なお役目であった。

けれども、私はデンリーダーとして子ども達をよく見守り、ひとりひとりを観察することに長けているとして、翌年副長に推薦された。

私は所謂「子ども好き」ではない。自分の子は可愛いが、他人様の子どもはどちらかと言うと苦手なのである。うるさいし言うことをきかないし無駄な動作が多すぎて疲れるのである。

なので正直に理由を言い、断ったのだが、「自分がそう感じているのは事実かもしれないけれども、とてもリーダーに向いていると思うのでやってみてほしい」と言われたので、1年だけでもやってみるかと思えたのである。

私はボーイスカウト活動が好きで、子ども達にとってもとても良き活動であると認識していたし、推薦してくれた女性のことを団の中で尊敬していたということもあって。それにカブ隊の隊長からも是非にと言われたので。

推薦してくれた女性もカブ隊の副長をしていた。カブ隊の隊長は男性で当時30代独身であったけれども、子どもの頃からボーイスカウトに所属し、スカウト活動での様々な術を熟知し、とても頼りになる人物だと把握していた。団の中では主要な人物のひとりで、若くて逞しくもあった。

そうして私はビーバー隊という幼い子達の隊の副長となり、日曜日月2回、他の隊の隊長副長が集まる団会議、ビーバー隊の隊長とのリーダー会議に出席し、ビーバー隊の活動の企画と実施を行った。

やってみて気付いたのだが、自分の子でなくとも、「副長、副長」と言って慕ってくれる子は可愛いなと思えた。ハグしたりなんかすると愛おしいとも思えた。

3年ほどが過ぎ、私を推薦してくれた女性がカブ隊からビーバー隊の副長になり、2人で何かと話合いをする機会が増えていた。そんな折、突然彼女はこう言ったのである。

「△△さんと〇〇さんて、できてるねんで」

△△さんというのはカブ隊の隊長、〇〇さんというのは、私の息子よりひとつ年下の子の母親であり、6歳離れた長男もいるひとだった。

最初は彼女が何を言っているのかわからなかった。私の脳はその事柄を受入れるのを拒否しているかのように。けれども拒否できないことまで彼女は口にし出した。

〇〇さんのほうから、タイプやわぁと言って言い寄っていったのだと。まだここまでなら拒否できたかもしれないが更に彼女は続けた。

「〇〇くんから言われたことがあって、「副長助けて!△△隊長にママとられちゃう!どうにかして!」って泣きつかれてんな」と。

いろんな情報が頭に入ってきて私はとても混乱した。

というのもすぐにデンリーダーをしていたときの息子のある一言が思い出され、この母親に激しい怒りの感情が湧いてくるのを抑えられなかったからだ。

それはカブ隊でのキャンプが始まった日であった。組のリーダーであった息子から不意に耳打ちされた。

「言うといたほうがいいと思って。絶対誰にも言わんといてなて言われてんけど、〇〇くん、夜だけオムツしているらしい」

「わかった。教えてくれてありがとう」と、そのときは成長には個人差あるものねくらいにしか思っていなかった。

けれども△△隊長とのことを知ったそのとき、それで〇〇くんは感情が不安定で、それが原因で夜尿になっているのかもしれないと考えた。

言いたくない恥ずかしいことを私の息子に言わねばならなかった〇〇くんの気持ちを想うといたたまれなかった。

当事者ふたりには勿論だけれども、私にこの事を伝えた女性にも腹が立った。私を副長に推薦した女性である。この女性も団の中で主要な人物のひとりであったのに。

聞いていた限りでは、ふたりの不倫を知っていながら止めもせず放置し、それどころか母親の惚気話に聞き耳を立て、当事者の子どもに泣きつかれてもまともにとりあわなかったようだった。

そして何も知らなかった私にまでしれっと話したのである。

私はボーイスカウト活動をとても愛していた。繰り返しになるがとても良き活動だと思い込んでいた。

しかし、この3人のこの行動がとても聞くに耐え難く、「何がボーイスカウトやねん!汚い大人の都合で成り立つものなんか!?」とやけになり、次期に退団を申し出たのである。

お母さんを自分が知っている男性にとられるかもしれない、自分のお母さんは自分のお父さん以外に好きな人がいる、目の前で自分のお母さんがお母さんの好きな自分も知っている男性と話している、そんな子の状況とてもじゃないが可哀想過ぎる。

ひとを好きになる、それは本能だからどうしようもないのだろうが、大人なら口を慎み態度をわきまえろと私は言いたい。不倫するのは当人の勝手だが、近しいひとに話すなんて、ましてや自分の子に知れてまで。ひどい話で忘れる事はできそうにない。

今思えば私も、知った時点でもっと冷静になって団の団長に知らせるべきだったかもしれない。それから退団すればよかったかと。


Facebookにあがってきたのは母親の方の女性の顔だった。今彼等がどんな暮らしをしているのか知らないが、Facebookの「知り合いかも」から削除した。

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