玉蘭すぅ

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崩れた世界の白と早紀#2

薄雲は月にかかり、朧月が頼りなく街を照らす夜。 遠目には生い茂る木々が揺れ、周囲には風化し緑に覆われたビルが立ち並ぶ。そんな中で私は、身の丈程もある狙撃銃を胸に抱え、ビルの屋上で座り続けていた。 …というか、居眠りしていた。 目を薄く開いたまま、ぼんやり重い瞼を指先で軽く撫でる。 「………?」 目元が濡れている。 風に吹かれて、頬を濡れた一筋の跡が冷たく軋む。 なんでだろう、と不思議に思いながらも、胸の奥も一緒に軋む感じがする。 理由は…わかんない。多分涙だとは思うん

    • 崩れた世界の白と早紀#01

      昔話をしようか。 むかし、むかし。 その昔、世界は今とは比べ物にならないぐらい裕福だったそうだ。 服だってたくさんあって。食べるものにも事欠かない。 住む場所だって困らない。そんな楽園だったらしい。   「…どうしてこうなったの?」 むかし、ずっと昔のお話さ。 その時代はまだ神様がいて、人々を見守っていたそうだ。 でも、裕福になりすぎて人々は神様を忘れてしまった。 神様を心の底から信じなくなった。 最初は神様も『いつか思い出してくれるだろう』って思ってたんだ。 でも

    崩れた世界の白と早紀#2