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promise

雪が舞っている
ひらひらと 楽しげに
知らないんだね ぼくらの
悲しく優しい物語を

去年の今頃は 暖かい部屋から
窓越しに雪を眺めたね
窓に映ったふたりのセーターの色を
まだ鮮やかに覚えているよ

ソファに身を沈めて
熱いココアを飲みながら
古いレコードを聴いていた
言葉を交わさなくても 
満ち足りていたひととき

ふたりの未来は
いつから離れていったのだろう
キッチンを見やれば まだそこに
エプロン姿のきみがいるようで

立ち去ろうとした日
ぼくの腕をつかんで
瞳をただ潤ませていた
きみを本当は
今でも愛しく思う

窓を開ければ
清浄な空気に乗って
ひらひらと雪が舞い込む
何があろうとなかろうと
刻はすぎ 季節は巡る

ここにきみはいないけど
約束をするよ
出会って心を通わせたことを
後悔しないようなぼくになるよ
人を愛する喜びを知った
きみが幸せになるように

ぼくは思い出になり
いつか色褪せるけれど
あの日のぼくらが幸せだったことに
少しの嘘もないんだ

きらめく雪の結晶が
手のひらで溶けて消えた
きみのぬくもりも
はかなく消えていくけれど
変わらない想いは残るだろう
かたちあるものだけが
すべてではないように

冬の約束は
春を迎えて花ひらくだろう



ERICA

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