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効率化という概念の正体

製造業では「効率化」を求められる事が多いが、実に多くの人が誤解をしている。儲ける為にやるのであって、儲からなければやらない方がマシだ。

よくある例(展示会でRPAを売るブースを見て欲しい。100%、これ)
「4時間の作業が5分で終わります」
「いいですね、それで幾ら儲かりましたか?」
「その時間で、違う仕事をしますから…」
「皆がそうしたら、仕事はすぐになくなっちゃいますよね?どうします?
 仕事は有限なんですよ?あなたの会社は仕事が無限ブラックですか?」
こう言うと、答えられない人が多い。
(そういう私だって、つい最近まで明確には言えなかった)

※新人くんが生成AIで議事録まとめをすぐ終わらせたという記事を読んだ事もあるが、やはり彼は利益を増やしてはいない。まだね。普段、新人くんが100時間残業をしていたというならば、それは利益を生み出せているが定時で帰らせていたんなら0円。


◯作ればすぐに全部売れる製品を作っている工場
なんでもやれ。結果は伴う。
なぜならば、既に固定費を回収しているだろうから。
1秒でも削って1個でも多く作れば利益が増えていく。

◯そうではない工場 : 殆どであろう。実に難しい。
1)効率化とは
簡単な話で、仕事の量=適性人員にするのが目的だ。
欧米ではすぐにレイオフできるのでこれが可能だが、日本ではそうもいかない。。。。
仕事が充分には無いのだから、まず非社員の人数を減らす。次は社員の残業を減らす。ここまで来ると改善活動は打ち止めになる。定時前に仕事を終わらせても、余った時間は何も使えない。
ここで必要になるのは「価値創造」であり仕事を増やす活動だが、製造現場の人がクリエイティブな仕事をやるのは難しいし、営業活動もどうだろう。でも、やってもらうしかない。よく聞くのは定年で引退する人がいるから、自然減に対応するというものだが。。。これをやってればその部門はすぐに赤字で潰れるであろうことは想像できる。

2)活人化
それでも、1名を営業活動に回すことにする。ならば効率化によって1名分の時間を捻出しなければならない。そのために必要なのは現在の仕事の配分とプロセスの分析だろう。これをやらずに闇雲にRPAという事務作業自動化を始める人たちがほぼ100%なのだが、何百時間を自動化できても必要な人員数は何も変わらない。RPAを始める前に、どの人をどう動かすのかを決めてそれに必要な多能工化と自動化時間を決めるべき。たいていの場合は自動化出来る業務を見つけて高額なRPAを導入してしまうのだが、人件費は1円も落ちない。

3)プロセスマイニング(仮)
こうした改善活動は物理的な物が動く製造現場では「IE」(インダストリアル・エンジニアリング)という名称で当たり前に行われている。実は製造でも活人化の目標を立てずに活動を始める場合が多いのだが、皆、感覚的に慣れているので人の配置換えなどを柔軟に行って結果が伴う事が多い。

問題は事務部門である… 

「非属人化」という便利な言葉があるが、
「いいですね。それで、非属人化でどうやって儲けるんですか?」
と聞くと、大抵の人は答えられない。駄目じゃん…

IEをやろうにも、教科書どおりの施策は何も通用しない。そこで、プロセスマイニングという方法を採用することになる。
プロセスマイニングは教科書が出ているが、巷で呼ばれている方法は高度にデジタル化が進んだ環境下での改善活動を指し、実際に導入できる部門は少ない筈。更に、市場には「パソコンのタスクを監視して同様の…」というサービスがあるのも知っている。でもそれも同様。事務作業はパソコンに向かってる作業が全てではないのだ。しかもそもそもが不連続な業務の塊であるパソコンに集積された時間のログからはプロセスという業務の流れは見えない。うちの現場だと「Excelを触りっぱなし、印刷なし」などになる。これで何が分かるだろうか。

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そこで試行錯誤するしかないのだが、参考になる教科書としては
ど真ん中ではないが、この本は私の正解イメージにかなり近い。
たとえ不成功の施策があっても、それがある事が最後の結果に貢献した指標を求める事で良いという考え方だ。プロトタイピングをすると失敗の連続な訳で、通常の考え方ではそれは無駄になってしまう。それを補正できる。

中身はマーケティング部門の人が社長にどう成果をアピールするか?というもの

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有名な?「忙しい饅頭屋と暇な蕎麦屋」の話がある。
一個分の材料を床に落としてしまった場合の損失を計算するものだ。
忙しい饅頭屋は1個を売り逃したのだから定価分の損失。
暇な蕎麦屋は機会損失も無く(売れないんだから)、人件費も変わらない。だから材料費しか損失は無いという、面白い計算だ。
「残業時間を削れない・人の数も減らせない・受注量も増やせないならば、効率化は意味がない」というのはこれを元にしている。

要はオペレーションズ・リサーチや管理会計

なのだが、実はこれにも方法論は書かれていない。なんとも厄介である。
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そうはいっても… という方におすすめは。。。
(残念だが、これも方法論は書かれていない)
この本で強調されているのは、「自分がコントロールできない利益に関する指標を使っても意味がない」である。
例えば、一人あたりの仕事量を増やせる見込みも無い・その権限も無いならば非属人化をテーマアップしても意味がないのである。自分が利益に貢献できる指標は必ずある筈で、それを見つけなさいと言っている。
◯:「私は残業ゼロにして、N倍の仕事をこなす」
✗:「4時間の作業を5分で終わらせます」

マネジメント視点なので少し求めている物と違うと思う

どなたかIEに代わる、事務部門にも適用可能なプロセスマイニングの教科書を書いてくれないもんですかね。私は実行は出来るけど、説明が出来ないもんで。コツとしては、改善屋はストーリーを書いても現場管理者が追いついてくるまで何もしないこと。現場管理者が理解してくれないと、全施策は無駄に終わる。

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この本はR40指定。凄いけど、若い人が読んでも意味不明だと思う。
おそらく絶版で、新刊が出ているけど要注意。
キレイにまとめ直したせいで、一番重要なウェットな部分が消されてしまった。私にはかえって分かりにくい。
こっちの旧刊がおすすめ👇

新刊は表現がキレイすぎる。

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この文章を書いていて、これからは私の業務改善の対象を暇な現場ではなく営業部隊に注力しようと気づいた。営業に空き時間を増やしたから受注量が増やせる訳でも無いが、暇な製造現場で効率化するよりもマシだ。

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生成AIの本が巷に溢れ出してきたが、ここでも全く同じ。出来ること(〜が便利)を連呼していて、手段が目的になってしまっている。
何度も繰り返すが 「便利」「楽になる」は効果0円と考えて良い。
生成AIがこの世に出始めてから、自分は何に使おうか?というイメージが固まるまでは触らないことにしてきた。現在、ChatGPTは4になるが、ようやく自分の業務で何に使えるのか?をイメージ出来たので触り始める。確かにこれは面白いわ。夢中になって「手段」と「目的」が逆転するのが分かる。
「生成AIで仕事を速く終わらせる」とかクソみたいなテーマを書く人がいっぱい居るんだろうな。
「なるほど、それは幾ら儲かるの?」


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