見出し画像

価値観は人それぞれですが

アドバースセレクションの芽を摘む

ちょっと前になりますが、日本を代表するベッドメーカーのU社長が弊社に立ち寄って下さった時のお話です。
U社長とは歳は離れていますが、モノづくりや流通のあり方や自分たちの社会に対する役割など事業規模は違えど何処か近いものを感じ長いお付き合いをさせて頂いてます。
そんなU社長は仙台に来られた際、弊社へ立ち寄って下さることがよくあります。いつもニコニコ笑顔の社長ですがこの時はご様子がいつもと違うのを感じました。怒ってる?
社長の話を聞いているとその理由に納得したわけですがね。

「今さっきまで東京の本社で営業会議に出てきたのですが・・・・」

怒りをこらえながら社長が話し始めました。

「営業からの提案で製品のラインナップに安価なウォッシャブルウール3点パック(ウールパッド+ボックスシーツ×2)をエントリーしてくれ!っていうんですよ。信じられます?うちの社員がですよ・・。」

ライバルメーカーは皆エントリーしているので、この様な時代特に量販店の売り場では勝負にならないというわけです。

社長は続けます。
「そもそもなぜ高額なのにウール素材を選ぶのか、本当のウールの良さはですね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ウールはキューティクルが命でして・・・・・・・・・・・・・それを熟知しているはずのうちの社員の口からですよ、まさかのウォッシャブルウールパッドが出るとはもうがっかりしちゃって、、そんなものは絶対許さない!と怒鳴ってきちゃいました。」

第一線の営業マンの気持ちも痛いほど分かりますが、ここはまやかしのウールにお客様のお金をかけさせるのではなく、安価なら正当な別の素材をお勧めするのが筋だという経営者判断は見事!我が国にベッドという生活文化を伝えた会社の誇りと自信は、今も三代目社長の中にはためいていて、今や当たり前になった業界の潮流をブロックしたのだなと思いました。
つまり前回のエッセイに書きましたアドバースセレクションの芽を摘んだわけです。

そこで私から以前社長のところのウールパッドを購入して頂いたお客様のお話をさせて頂きました。

まだお若い男性のお客様でしたが、以前ベッドもご購入いただいていて、ベッドのご購入時は予算の関係上ウールパッドではなくコットン仕様のパッドをお買い上げいただきました。そしてその後念願のウールパッドを買い足されたという流れでした。
このお客様はちょくちょく店に訪れて下さる方なんですが、ひょんなことから以前購入されたウールパッドの話になりました。

育む文化  -for Intelligent silent majority-

「やっぱりウールパッド良いですね!」
「ほんと良いモノ買わせて頂きました。時々入浴時に手押し洗いしてますよ。」

ドライクリーニングも可能ですからね。

「でも、良いモノを自分で手入れしながら使うというのも楽しいというか、分かったというか・・。」

世の中の流れは確実に安価なウォッシャブルウール3点パックだというのに、お客様お若いのに偉いですね。ちゃんと向き合っている!

「ご存知の通り僕はモノを見始めてから実際購入するまでが長いんです。」
「無駄なもの買いたくないですからね。」
「お金もあるわけじゃないから真剣です!」
「でも色々と説明をしてもらっていると見えてきちゃうんですよね。」

と良い笑顔でさらりと言っちゃうから凄い!
決断してモノを購入した時がゴールなのと違いこのお客様はモノが手元に届いてからずっと現在進行形にてモノのある暮らしを楽しんでる。
ほぼ日の糸井さん風に表現すると、このお客様はこの時代の潮流を見て「え?未だみんなそっちなの?」って言ってそうに見えました。

社長こういうお客さんの存在嬉しいでしょう!と私。
私の話にメモを取る社長はいつしか穏やかな表情に変わっておられました。
良かった。

こちらも関係のデザイン頑張りますよ。

くらし座 大村正






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?