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マガジンX 2024年9月号『ざ・総括。』三菱トライトン

オススメ度 ★★★☆☆

ちょっと「丸めすぎ」が残念

三菱自動車がタイで生産する1トンピックアップトラック「トライトン」は、昨年FMC(フルモデルチェンジ)されて3代目になった。三菱にとっては世界戦略車であり、タイのラムチャバン工場からアセアン、豪州、中近東、中南米、欧州など、北米を除く世界各国へ輸出されている。ルーツは1978年に発売された「フォルテ」、その後を継いだ「ストラーダ」であり、欧州では「L200」の車名で販売されている。3代目の日本仕様は、日本市場向けにマイルドな味付けになった。本誌評価陣は「マイルドすぎてオンロードでは印象が悪くなる」とコメントしている。

●評価(★)の見かた●
★☆☆☆☆=まったく買うに値しない
★★☆☆☆=ちょっと考えたほうがいい
★★★☆☆=一応オススメできる標準作
★★★★☆=積極的に買いの秀作
★★★★★=買わなきゃ損する超逸品

<評価メンバー>
エ=エンジニアリングコンサルタント
チ=チューニングショップの社長兼エンジニア
部=元部品メーカーのエンジニア
T=ベテラン実験ドライバー
通=自動車業界の事情通

アセアン集約の三菱

エンジニアリングコンサルタント(以下=エ) 今回のFMCでフレームも、キャビンも、駆動系も一新された「トライトン」だ。いまや三菱の生産台数の5分の1は、このタイ製トライトンだから失敗できないモデルだ。タイ現地仕様には乗っていないが、欧州向けの「L200」も含めて、仕向地バリエーションは多い。その中で日本仕様は専用に設定されたそうだ。
チューニングショップの社長兼エンジニア(以下=チ) みなさんに試乗してもらった仕様はトライトンGSR。車両価格は約540万円で、販売店オプション込み約560万円。持ち主は個人ではない。タイヤはヨコハマ・ジオランダーA/T G94でサイズは265/60R18だ。販売会社は受注残を抱えていて、現在の納期は約5カ月らしい。タイで製造して船で運ぶわけだから、国内生産車よりも納期は長くなる。
自動車業界の事情通(以下=通) 三菱の海外製造拠点は、いまやアセアンだけだ。クライスラーとの合弁だった米・DSM(ダイヤモンド・スター・モーターズ)は、クライスラーが資本撤収してからもしばらくは三菱の工場として稼働していたが、現在はBEV(バッテリー電気自動車)専業の新興OEM(自動車メーカー)リヴィアンの工場になっている。2017年1月に、リヴィアンはたったの1600万ドル(当時の為替レートで約19億2000万円)で買い取った。土地を購入し、建物の基礎を作り、建屋を建てて設備を入れれば2000億円はかかる。
元部品メーカーのエンジニア(以下=部) テスラと同じですね。テスラはトヨタから、GMとの合弁工場だったNUMMI(ニュー・ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング・インコーポレーテッド)を設備込み5700万ドル(同約70億円)で譲り受けました。そのうちの5000万ドルは、トヨタがテスラに支払った株式取得費用でしたから、持ち出し700万ドルであの巨大な完成車工場を手に入れたというわけです。
ベテラン実験ドライバー(以下=T) で、トヨタがテスラとの提携を解消したとき、テスラ株は買った値段の何倍も高く売れた(笑)。そういうマネーゲームのような例がある一方で、三菱は地道にアセアンで生産体制を整えた。オーストラリアの車両工場を2008年に閉め、中国からも撤退してアセアンに集約した。

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