前島賢の本棚晒し【復刻版】02:上遠野浩平『ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーターPART.1』『PART.2』
『ブギーポップ』勝手に電子化記念特集(注:掲載当時)。
2回目となる今回は『ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター』を取り上げたい。
(1回目『ブギーポップは笑わない』はこちらから)
本作は『ブギーポップは笑わない』に続いて、『PART.1』『PART.2』の前後編2冊が98年8月に刊行された。ちなみに、ここから9作目の『ブギーポップ・ウィキッド エンブリオ炎生』までは短ければ2ヶ月、長くても4ヶ月という間隔で次々と続刊が刊行されており、当時もライトノベルとしてはかなりハイペースの刊行スピードだった。
さてデビュー作であった『笑わない』に対して、本作『VSイマジネーター』は、シリーズとしての『ブギーポップ』の始まりを告げた作品だと言える。前作『ブギーポップは笑わない』ではほとんど説明されなかった世界観が、おぼろげな形ではあるが、この巻で明かされるからだ。
それは以下のようなものである。
――この世界には統和機構と呼ばれる巨大なシステムが存在する。合成人間と呼ばれる人間型兵器を開発するなど、進んだ技術力を持つ彼らは、人類社会の影に潜み、異能の力を持った人類を発見すべく、実験と監視を続けている。彼らはMPLSと呼ばれるそうした人々を、人類進化の先駆けとして警戒しているらしい――
上遠野浩平作品は、そのすべてが実は世界観を共有しており、例えば遙かな遠未来を舞台にした『虚空牙』シリーズの2冊目『わたしは虚夢を月に聴く』には「VSイマジネーター PART Ⅳ」という副題が付けられている。
だから本作『VSイマジネーター』はシリーズとしての《ブギーポップ》の始まりみのみならず、上遠野浩平サーガの始まりと言っていいかもしれない。
さて、本作もまた、前作同様、複数の視点からなる群像劇を採用しており、物語は、大きく分けて以下の3つのプロットからなる。
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