400字ショートショート「我ら朝を撃つ」
夜通し起きておく。そうして午前七時頃、太陽が細い光を放ったらすかさず撃つんだ。煉瓦の街へ朝が溢れる前に。
ダァン。手首に来る衝撃。
「ほら、今日も一発だった」
太陽を撃てば再び闇が来る。未来永劫夜を保つこと、これが私達の仕事。得られるものは夜明けに配られる悲しいニュースのない、安心の世界だ。
「ミア、この後は帰るの?」
同い年のリュカとはシフトも一緒。愛用のフードを被ると、彼は私を食事に誘った。
「カツレツがおいしい店。どう?」
「行く」
夜営用に買った膝掛けをショール代わりに羽織る。せめてもの、おめかし。
「夜勤明け? ソファーで寝ておいき」
レストランのマダムは優しかった。
暖かい部屋で私達は何時間も眠り続け、気が付けば眩しい陽光。任務失敗、街は既に色付いている。花々や干された洗濯物、どこからかアコーディオンの音色、そして。
「踊ろう、ミア」
差し出された手を握った時、私は初めて彼の瞳が綺麗な青だと知ったんだ。