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吉田礼志「心臓」

「申し訳ない思いしかなかった」

このように振り返ったのは全日本大学駅伝の関東選考会でのことだ。最終組4組目で熱中症のような症状が発生した吉田くんはレース中に一部コースを踏み外してしまう。これが失格とみなされて中央学院大学はまさかの予選敗退となってしまった。

その悔しさを経て、秋シーズンに移行した予選会。チームの「心臓」はまた大きく動き始めた。


実力は他大学エースに一切劣らない

箱根2区はすでに1年時に経験しているとはいえ、それ以上に出色なのが彼のタイムだ。トラックでは10000メートル27分47秒01、ハーフマラソンでは1時間0分31秒。

この2つははどれも中央学院大学記録であるが、ハーフマラソン記録でいえば日本歴代9位。駒澤大学に在籍する篠原倖太朗くんに次いで学生だと歴代2位の記録を持つ。すでに持っている能力でいえば大学生の中でもとびぬけているものがある。

「留学生とも勝負しろ」と1年時より川崎勇二監督から発破をかけられ続けてきたその才能。だからこそ、全日本大学駅伝の失格でより落ち込んだのかもしれない。

しかし、秋の予選会では果敢に留学生集団についていき最終的には東京農業大学の前田和摩くんに抜かれてしまうものの、日本人2位でゴールし中央学院大学の予選通過を大きく後押しして見せた。とはいえ、彼も川崎監督も。ここで満足をしているわけではない。

目標としているのはあくまでもシード

中央学院大学として目指しているのはあくまでシードであり、目標としていた通過順位にははるかに及ばなかった。目標としていたのは3位であり、通過順位9位ではないのだ。

だからこそ、川崎監督の言葉にも熱が入る。今のままでは到底及ばないからこそでもあるが。吉田くんもそれを感じているようである。

「例えば駒澤大学さんを見ると、走りに自信があるというか、絶対に1位を取る気持ちが伝わってくる。自分たちにはその気持ちが足りていないんじゃないかなと。みんながもっと強気になっていいと思います」

https://www.rikujyokyogi.co.jp/archives/123938

より高い意識を求められ、川崎監督の指導にも熱が入る。そのためにも吉田くんにも高いレベルで走ることを求められているし、自覚している。

「区間5位以内、1時間6分台で行きたいです」

https://www.rikujyokyogi.co.jp/archives/123938

今年の2区も激戦区になることは必至。その中で彼が存在感を見せつけることができれば、おのずとシード権も近づいてくるだろう。

「野武士軍団」の矜持、今こそ。

「うまくいけば3位になれると思っていたけど、後半はちょっと失速。もう少し頑張れるかと思っていたけど、まだまだ弱いですね」

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/rikujo/2023/10/16/post_62/

予選会終了後、こういって苦笑いした川崎監督。強化合宿の一喝を経てさらなるレベルアップに挑もうとする彼らが目指すシード権は極めてハードルが高い。

吉田くんも力のあるランナーとはいえ、一人で巻き返すのはあまりにも厳しい。実力のない選手たちがいないわけではないからこそ、最後にはたとえ下馬評が低くとも泥臭く巻き返せる。

そんな野武士軍団と呼ばれた中央学院大学の底力が試されることとなる。思うと、木原真佐人さんや篠藤淳さん、潰滝大記選手がといった柱にいた時、その底力は常に発揮されてきた。

吉田くんもまた、自らの力を存分に発揮した時。野武士軍団が本領を発揮する。そう確信している。

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