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相手にされないからあがく

はい。ということで会社の先輩からめっちゃ勧められた映画を見に行ってきました。本人曰く「制作費やすいのに熱量あって良い」とのこと、見に行った映画がこれである。

スポットライトを当ててくれ!

笑いも涙もある、業界人だからこそ描ける映画で面白かったです。
欠点は多くあれどその欠点を覆い隠すほどのスタッフさん、役者さんの熱量をまっすぐ受け止めることができた作品でした。以下感想です。

※できる限りネタバレは避けています。それが嫌な方は一度劇場に足を運んでみてください。


出港したはいいけど夢を一度あきらめたワンピース

これがこの作品の全体を表しているのかなと思いました。

また、制作陣(演技していた方たち含めて)の熱量とパワーで押し切ったような作品だったなと思います。

序盤の大袈裟なデフォルメされた業界の闇、その中から映画を作ってほしいというべたな展開に仲間集め……。

中盤から終わりにかけての
どこかすれてくたびれたがまだ夢をあきらめきれない
それでもしがみついて何かを振り絞ろうとする様、ヒロインの女の子の素性……。

そしてラストへとたどり着くまでのストーリーにはちょっと涙も出ました。すさまじくデフォルメされていてべたと言えばべたですし、エンタメ系統の作品かな?と思いましたが感情を大きく揺さぶるような作りと入りはとても好きです。

ただし、ストーリーとしてはすごく粗いし、ご都合主義が目立ちます。
個人的には粗いなりにもっとパワーで押し切っても良かったかもしれないけど……
多分そうなると完全エンタメに振り切った系の映画になりそうでした。きっとそうすることもできたでしょう。

ただ、高明さんは一度出港した船が失速して夢を一度諦めて船を降りていくという作品に仕立てたかったのかもしれないなぁと。夢をあきらめる理由なんていくつもあるのに、それでもしがみついている人たちの悲哀は涙を誘いました。

それを楽しむことができる人が何人いるかなとは思いますけど……。

そこらへんはキャスティングも良かったと思います。

主演の森本のぶさん・佐々木心音さん・平塚真介さんのこの絶妙ななんとも言えない雰囲気のくたびれっぷり(演技としてである)。
それが園田あいかさんの表情ににじむ純粋さを際立たせていて、個人的にめっちゃ好きです。

「それでも作りたいんだ」というあがき

アフタートークショーで高明監督は「相手にされないからあがく」という旨を語っていました。自分たちだって表現したいことがいくつもあってあきらめきれない夢を抱えています。だが、いつまでもめぐってこないチャンスやそうした理不尽の中で心折れたりするときもあるでしょう。

同じように制作側も心折れる時が来るということ。先日起きたセクシー田中さんの原作改変にしてもそうですが、様々な大人の事情に振り回されたり理不尽に振り回されたりしてそれでも作品として作り上げなければならない。

その中で埋もれて行ったり注目されないことに腐って行ったり……。人としてそういうことがあることは不思議でもなんでもない。
だからこそそれでも作りたい、何かを生み出したい。

そういうあがきの中から生まれた作品なのかもしれません。そんなまっすぐで純粋な想いが、こういう作品となって生み出されたという事実はどこか痛快であり心地のいいものです。

世間が「目の前にある理不尽」を受け止められるか?

生きていれば様々な理不尽に人は大なり小なり対峙することになります。その時立ち向かうのか逃げるのか、はたまた誰かに打ち壊してもらうのか(笑)

この作品はその中でも「立ち向かおうとした」という事実を描写した作品なのでしょう。作品の中で立ち向かった結果どうなったのかは劇場で見ていただくとして……。その立ち向かおうとしたという事実に共感できるのか、それとも「寿司職人が休日に食べに行くベテランの寿司職人が握る寿司」となってしまうのか。

現状さらに1週間延長しての上映が決まっている。
着々とその「あがき」に共感する人たちが増えているという証なのだろう。粗削りゆえに故に純度高く、美しい。

その美しさを感じてみてはいかがでしょうか。私は友人と存分に楽しみました。それでは。

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