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KING OF KINGS 2020「魔王再降臨」

というわけで、KOK2020を全試合アーカイブで見たのだけれど、多分観戦記とかそういうのは多くの人がやってくれるかと思うので、自分は各MCの印象について書こうかと。

順番はエントリー順に。

AUTHORITY(戦極 MC BATTLE 第21章代表)
あれ、どうしちゃったのかな最近。というのが最近の印象だったのだけれど、しょうがない一面は確かにあった。2018のUMB準優勝から一気に駆け上がってきて、観客はAUTHORITYにそれ以上のものを求めている。
しかも一回戦敗退。苦闘の日々は続くだろうが、そこも含めてMCバトルなだけに潜り抜けてさらに高みへと昇ってくれると信じている。

輪入道(真・ADRENALINE代表)
どの大会でも「輪入道」という存在感を見せつける男だが、今回もらしさ爆発の大会だった。エンタメ精神にあふれていて、怒ると怖くて、早口でしっかりと詰め込みながら文脈を通して。優勝には届かなかったが、この大会で観客を大いに盛り上げたのは間違いなく彼であったことは間違いない。
惜しくもベスト4敗退だったが、呂布カルマとの再延長にまでもつれ込んだバトルはまさしくベストバウトだった。

Ruvit(戦極 MC BATTLE U22 2020代表)
崇勲の前にバイブスをかわされてあっさりと敗退してしまったが、決して悪いわけではなかった。いなすスタイルが持ち味だった彼に真正面からぶつかっていくパワー勝負は決して間違いではない。むしろかましていたと思うが、あっさりと「変化」をした崇勲には通用しなかったことが悔やまれる。
1,2バース目と3,4バース目で崇勲へのスタンスがちょっと変わりすぎてしまったようにも見えた。

SKRYU(戦極 MC BATTLE U22 秋の祭典代表)
サイコパス系MCが実は一番会場を盛り上げてくれたと思う。間違いなく鎮座DOPENESS相手にかましていた。会場の空気を一気に盛り立てたのは間違いなく彼だった。UMBでの快進撃もまたフロックでなかったことを証明したし、2021年がさらに楽しみになるバトルとなった。おそらく、一番名をあげたのではないだろうか。

鎮座DOPENESS(東日本予選代表)
MCバトルに復帰した2020年という1年で、かつての奇才が奇才のまま会場を沸かしていった。SKRYUがあの手この手で寝技に持ち込もうとする中で、それらをすべて躱してさながら的確にしかも時に鋭く一撃を食らわせるさまは痛快だった。準優勝と惜しくも優勝には届かなかったが、かつてのUMBチャンピオンここにあり!というところを見せた。

RAWAXXX(戦極 MC BATTLE 第21.5章代表)
2019KOKチャンピオンはいつも通り格好良く現れ、いつも通り負けを認めるとさらっと去っていった。唯一違ったのは準決勝で鎮座と戦った時か。バトル中笑顔かあるいは相手のバースにノリノリだったのがとても印象的だった。心から「負けた!」と思った瞬間だったのかもしれない。

Slient Killa Joint(口喧嘩祭代表)
初戦で延長の末敗退も、Maijiをリスペクトしてそしてそのうえで上回っていくという彼なりのポリシーとスタンスを見せつけた。個人的に今大会のベストバウトはSKJとMaijiのバトルだと思っていて、双方のスタンスが垣間見えたナイスバトルだった。
ただ、それでもまだSKJの本当にある格好良さにまだ僕自身が気が付けていない気がする。引き続き、注目をしていく所存。

BASE(西日本予選代表)
「あー、BASEさんだなー」と思って、初戦敗退も「あー、BASEさんだなー」と思う敗退だった。これほどまでにあっさりと、しかもスタンスを一切変えることのないグッドルーザーはいるだろうか。難しいビートでのバトルだったので、初戦から難しいバトルとはなったが、それでも輪入道に勝つためにはあれしかなかったとも言える。

Maiji(小倉 MC BATTLE 2020代表)
今大会のMVPだと思う。準々決勝敗退も、見た目の雰囲気とは裏腹のテクニカルでイケているラップでSKJと輪入道にも果敢に挑んだ。実に強く、格好の良いラッパーだったと思う。個人的にはSKJとのバトルから会場の空気がガラッと変わった印象もあったので、そういう点でも好印象。

SIMON JAP(LEGALIZE MC BATTLE代表)
初戦敗退とはいえ、かつてのJA飛龍を思い出すようなそんなヒリヒリ感あふれる姿を見せてくれた。それは、漢さんが相手だったからなのかもしれないが、同世代のライバルゆえにやっぱり最後は勝ちたいと思っていたのがひしひしと伝わってくるようだった。悔しいと思えるのも、なんだかそれも格好良い。

漢 a.k.a. GAMI(SPOT LIGHT代表)
日本語ラップ黎明期から支えてきた男がとうとうフリースタイルからはマイクを置くことになった。引き続き楽曲制作に主眼を置くことになるだろうが、KOKをもっと大きな大会にすべく奔走を始めることになりそうで、2021年以降もMCバトルやラップというカルチャーをどんどんと大きくする役目をこれからも担っていくのだろう。

句潤(ENTA DA STAGE代表)
1回戦のMU-TON戦はもはやセッションだった。敗退してしまったとはいえ、フロウ合戦の末の敗退は、存分に彼の良さを引き出したうえでの素晴らしいバトルだったと思う。今大会は非常にいいバトルが多かったが、彼もまたその中でも素晴らしい戦いを見せてくれたラッパーの一人だった。結果こそ残せなかったが、セッションという素晴らしいものを改めて見せてくれた句潤さんには心からBIG UPしたい。
「空呼ぶカモメ」聴きます。

MU-TON(戦極 MC BATTLE 第22章代表)
毎回、対戦相手に恵まれないなと思うのだけれど、実際MU-TONはめちゃくちゃ強いと思う。ツイートで流れてきたのを読んだけれど、なるほどと思ったのは、MU-TONは実はフロウ型のMCというよりも徐々にオールラウンド型にシフトしているということだ。と言っても、彼の長所は何といっても音感の優れたフロウだろう。句潤戦と鎮座戦は感動を覚えるレベルだった。

S-Kaine(9Sari選抜)
相手が悪かったかなあ、というのが今回の感想。とはいっても、現時点でS-Kaineの弱点というのも徐々にわかっては来ている。それは「格好いい」ということとラップがうまいということ。ただ、それだけであればT-Pablowもそうだったし、Lick-Gや裂固もまた同じだった。
「明確な格好良さ」を求め続けるのか、それプラスアルファでS-Kaineオリジナルを見せるのか。今後に期待。

崇勲(9Sari選抜)
「いい時の崇勲」を久しぶりに見ることが出来てちょっと感動した。ワードセンス、ビートアプローチ。「負けないラップ」をさせたら滅法強い崇勲だったが、結局2回戦でRAWAXXXの前に敗退。格好良さという点で敗れはしたが、かつての崇勲を垣間見た気がして、とてもうれしかったことの一つである。さすがフリースタイルダンジョンのかわいい担当。あと、結婚おめでとうございます。

呂布カルマ(9Sari選抜)
返り咲き優勝とあいまったわけだが、全員主役とも言えた今大会で一番「勝とう」としたラッパーだったのではないだろうか。やっぱり本気になった呂布カルマは強いと感じさせられた。
まさか勢いのあった鎮座DOPENESSをそのまま消し止めてしまうとは……。

ということで、呂布さんが優勝という形になったわけですが、全員主役とも呼ぶべき大会だったと思う。ある程度大会が大会として認識され始めてきたのもあったのか、単純にどのMCも非常に強かったと思う。

ただ、呂布さんが勝ちまくっているという業界から見ると「バトルの勝ち方」を圧倒的に知っているのは呂布さんで、恐らくバトルという分野でそれ以上を求めても先は無いように思える。

では、どうすれば良いのかというと、やっぱり句潤やMU-TONのようにメロディーという形で作り出していくのか、RAWAXXXやS-Kaineのように分かる人にだけ分かれば良いようなスタンスにしていくのか。

ただ、そういう点を含めてもやはり漢さんのように「こんなに格好いいやつがいるんだぜ!」と伝えていく役割の人は絶対に必要なんだよな、と思う。

ということで、それぞれがそれぞれのスタンスとスタイルでさらに頑張ってほしいなって思いました。

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