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KENさんとこの2か月。

箱根駅伝の選手紹介記事がまだ途上であることを承知の上で、未だ興奮が冷めることなく続いていることが一つ、ある。

それはもしかすると自分が間近で見た人だったからなのかもしれないし、そこからまるで元からそうであったかのように駆け上がっていく。そういったあっという間の快進撃の中に美しさを見出していたからなのかは分からない。

ただ、一つ言えるのはラッパーであるKENさんという一人の人間はそれだけこの2か月で自分に鮮烈な印象を残した。これだけは確かなのである。


UMB2023千葉予選

以前よりVENMさん、喰吐さん、そしてN1NY0さんといった方々と面識があった私はS.N.S MC BattleというVENMさん主催のイベントにお邪魔させていただいたり、THA BLUE HARBのライブを見させていただいたりと素晴らしい経験をさせていただいていた。

その中でKENさんはS.N.Sで面識はあった。男気溢れかつ人望にもあふれる彼の印象はどこかMU-TONさんのようなラップをする人だということだった。必要以上に詰め込むことはせず、一方で効果的なパンチラインを的確に落とすことができる。普通のラッパーではできないことをできるMC、という印象もあった。

それはUMB2023千葉予選でも一切変わることはなかった。言いたいことなどを言ったり韻を踏んだりするためにあまり効果的なパンチラインを相手に打ち込むことができないMCがいる中、KENさんはやがて準々決勝・準決勝へと駒を進めることとなった。

準々決勝の相手はS.N.Sの主催のVENMさん。スキルフルに勝ち上がってきたそれまでとは打って変わって、KENさんは一気にハートを見せ始める。自分が守るんだという強い意志を持っている中で「自分もあなたがつらくなったらあなたを守る」という想い。一貫した温かなハートは確実に自分の心をグッと掴んでいた。

準決勝は優勝候補だったはずの輪入道さん。彼にもまた心でぶつかった彼は先の準々決勝での勢いそのままに輪入道さんにも勝利。ほぼほぼ彼の「空気」となった決勝は、KENさんが優勢なまま進んでいたと言っても良かった。

そして、その後KENさんは破天MCバトルで優勝するなど一人のMCとして「千葉のKEN」という存在感を強め、UMBへと駒を進めた彼の結果はベスト8。準優勝したK-rushさんにあと一歩及ばなかった。

しかし、実力者を破ってたどり着いた恵比寿の場所で確実に彼は輝いていたし、耳の肥えたヘッズたちを唸らせた一夜になったのではないだろうか。

軽やかな駆け上がりは必然だ

その姿はさも当たり前のようでもあった。

というよりも自然体な彼そのままだったように思う。観客席とステージの境目が無い松戸のFUN CLUBという場所で見せていた様はそのままに。木更津で彼が見せている「様」をそのままに。その軽やかなまでに上へと駆けあがっていったその姿はどこかさわやかな気分にさせる。

「どこまで行っちゃうんだろう」。得てして名を得る時は誰しもがそうなのかもしれない。Authorityさんもそうだったし、裂固さんもそうだった。無名が一瞬にして有名になっていく。この2か月彼が見せてきた快進撃は間違いなくそれに近い。

だが、おそらく長く彼を見てきている人たちからすれば、彼が駆け上っていく様は必然だと言い切るはずだ。地元を背負い、やるべきことをやり、ラップという一つの表現方法で周囲を唸らせてきた彼らのことを知っていれば。

今の活躍は決して不思議ではない。

そう感じていたのではないだろうか。これは所詮想像でしかない。ただ、その軽やかな駆け上がりには「きちんとやるべきことをやってきた」と自負する強烈なものがあったはずだ。そして、大事なのは「かました後」であるということも。

「ラップスタア」はどうなるのか?

自らの地元を背負い、小さな箱から始まりやがて大きな舞台にたどり着く。ラッパーたちならばそれを夢見て前へと進んでいく。KENさんはそれを今確実に叶え、そして何を思うのだろう。3日前、UMBを控えた彼はいつものようにライブをし周囲と楽しみながら本戦の舞台がある恵比寿へとたどり着いた。彼が次に向かう先はどこなのだろう。

大事な人達、大事な街、大事なもの。彼が背負ったすべてのものが力を押してくれたというならば。さらに広く大きな場所へと向かっていくのか、それとも仲間との絆を太く硬くしてどっしりと根を張っていくのか。どちらにしても男気溢れる彼が仲間を捨てるなんてことはしまい。

すべてを背負い、時には巻き込みながらこれまでのように軽やかに上の世界へと駆けあがっていくのだろう。千葉が生んだ新たなラップスタアは、そういう男気と人情に富んだナイスガイであるということをここに書き記したい。

最後に一つ。その快進撃を現地ではなかったにせよ、リアルタイムで見ることができたことは大変ラッキーだった。そうでなければきっと、私はこれを書くことができていないからだ。

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