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北村惇生「新生」

山梨学院が振るわない。アフリカ人留学生というチートクラスの選手を呼び寄せた一方で日本人ランナーたちがそれに追いつけ追い越せで努力していたのも過去の話、現在は「留学生ランナー」と「バズらせてもろて」というスローガンでしかその話題を見ることが出来なかった。

2大会連続の繰り上げスタート、春シーズンは関東インカレ2部降格の危機にまで陥っていた山梨学院大学がそれでも予選通過を決めたのはまだまだ「留学生に追いつけ追い越せ」の気持ちを持っているからに他ならないだろう。

その矜持を見せる中で北村くんは今飯島監督にも「伸び盛り」と認められるくらいの成長を見せている。新型コロナにり患しながらも、それでも通過した「新生」山梨学院大学の未来とは。

秋シーズンに急成長し「エース」にのし上がった理由

新型コロナ禍に襲われた山梨学院大学の中でそれでも結果を出すことが出来たのは、選手たちの強化が着々と進んでいること証だ。その中でも飯島監督から成長株と言われる北村くんは2018年に全国高校駅伝にて2位になった世羅高校のメンバーだ。

言ってしまえば駅伝エリートでもある彼だったが、この2年駅伝での出場記録はない。10000メートル30分台で、ハーフマラソンでも自己ベストが1時間5分台。決してエースと呼ぶにはいささかタイムの面で不足があった。

しかし、今年7月に行われた網走の記録会で10000メートル28分台に自己ベストに載せると、予選会ではムトゥクくんに次ぐチーム2位、日本人選手ではトップとなる1時間3分37秒。時として選手が急激な成長を見せることはあるが、ここまでの成長ぶりは珍しい。

彼曰く、食生活に気を配ったのだという。
「夜遅くに食べない、体脂肪が増えるものは食べない、食物繊維を多くとる」。こういった食生活の改善から更に選手としてレベルアップが果たされ、11月の日体大記録会では10000メートルで28分41秒90という好タイムを出している。

「ミスター3分」の躍進と影響

「ミスター3分」の異名を持つ北村くんは、同じペースでしっかりと押すことができるランナーだ。当然本番のレースでは上げ下げなどもあれば揺さぶりもある。ずっと同じペースで押していくランナーである北村くんにはいささか厳しい部分があることも事実だ。

しかし、今回の予選会では自らでレースを動かして見せた。「余力があった。今の自分の力なら行ける」。そう決意して飛び出した北村くんの走りは、ただチームの2番手選手の成績では無かったのだ。
全体18位。レースの相性などがあったとはいえ、大きな成長を見せたからこそ手にすることが出来たとても立派な成績だ。

これまでチームのエースは木山達哉君であった一方で、急成長してきた「新エース候補」と非常にレベルの高い練習を積むことができるようになり、良い循環が生まれているようだ。

また、留学生にも高い競争が生まれている。これまでは駅伝に縁の無かったムルアくんと、予選会を走ったムトゥクくん。非常にハイレベルな練習を積むことが出来ており、チームも上向きだ。

しかし、振り返ると過去7年箱根駅伝でシードを獲得できていない山梨学院大学。選手たちのピーキング能力の問題など様々課題はあるが、少なくともシード権を獲得するという戦いには十分に食い込むことができる可能性はある。

そのためには間違いなく、木山くんと北村くん。彼らの活躍が不可欠となる。これまで以上に熾烈となる「日本人エース」の競争と合わせ、彼らがどこに区間配置をされるのかは今から見逃せない。

「新生」山梨学院大学の浮沈を北村くんは握っている。そして快走をしたとき……間違いなく山梨学院大学は本当の意味で「バズらせて」もらえると私は信じている。

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