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両角速「変革の時」

高校駅伝で名将と呼ばれた名監督のチームとは思えないほど、最後の最後までチームがばらばらに感じた。初の総合優勝からわずか5年。ここまで崩壊してしまうのかと思うほどだ。

一体東海大学はどうしてこうなってしまったのか、そして一体原因はどこにあるのか……。そこには「選手たちの意識の差」と「両角監督自身の問題」があるように感じた。

この2つの問題とそして吉田響くんのことにも少しだけ触れたいと思っている。

「両角先生」問題

大学駅伝の監督には高校教師からなったという人物も多くいる。長野東を率いていた日体大の玉城監督や学法石川を率いていた東洋大の酒井監督など多くいる。

言うまでもなく両角監督は名将だ。佐久長聖黎明期、一からグラウンドを作り名門にまで育て上げた実績がある。厳しい寮の規律などを含め、卒業生からは現在も「両角先生」と畏れと敬意を持たれてきた。

一方、それは東海大学の監督に就任した後も続いた。
「両角先生」と呼ばれているのは何も佐久長聖時代の教え子だけにとどまらない。厳しい寮の規則にやや前時代的とも感じられる厳しい指導。こうしたある意味で「威厳」を保つ様から、東海大学の教え子からもまた「両角先生」と呼ばれる。そういう一面があった。

しかし、必ずしも選手がそれで成長する・ついてくるとは限らない。「黄金世代」と呼ばれるすさまじい面々がそろった97年世代については、箱根駅伝を優勝したとはいえ批判も多い。実業団に行ってからタイムが大幅に向上した選手に、モチベーションを理由に箱根出走を取りやめた選手もいた。

今年に入るとそれも顕著になる。有力選手の退部も相次ぎ、結果としてインスタグラムに内部崩壊を示唆する投稿までされるほどの状態に。両角監督もこの1年が相当苦しいものだったことを指し示すコメントをしている。

「どうやれば変わることができるのか。どう自分が変わっていかないといけないのか。それを考えながらやっていかないといけないと思っています。このまま何の変化もなく、負のスパイラルに入ってしまうと上に上がっていくのが本当にキツくなるので」

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/rikujo/2023/01/12/post_2/index_3.php

結果として選手を委縮させてしまっていたのは、事実だろう。しかし、原因はそれだけか。選手たちにも問題があった。私はそう思うのだ。

明確にある意識の差

指針を出すのは指導者であるし、それを導くのが大人の役目でもある。一方で誰よりもこの状況を憂えていたのが、転校した吉田響くんだった。

「自分もチームもこの順位でよいわけがない。このままだと終わってしまう。そういう危機感をもって箱根に臨みたい」

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/rikujo/2023/01/12/post_2/index_2.php

予選会後に涙ながらに語っていた彼に対して、果たして彼と同じ意識で臨んでいた選手はどれだけいたのだろうか。それらに対してエースでもある石原翔太郎くんもまた、危機感を抱く。

「練習のなかでも追い込める選手とそれができない選手がいるんですが、もっと追い込める選手が出てこないといけない。自分はふだんはひとりで練習をしているんですが、そこに誰もついてこない。そこに、どれだけみんながついてこられるか。自分に続いたり、追いかけるレベルの選手が出てこないと来年も厳しい結果になると思います」

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/rikujo/2023/01/12/post_2/index_2.php

また、退部した吉田くんもまた「4年生にはお世話になった」と語っており、勝ちたかった上級生とレギュラー陣と比較して意識が足りていなかった可能性がある。その中で板挟みとなり、転校という選択を取らざるを得なくなってしまったのだろう。

こうした結果になってしまった責任は当然、指導者にある。しかしあくまで主体が学生である以上、本来は選手たちから意識を変えていかなければならない。個々人の選手を批判・中傷することはしたくないが、両角監督と同等くらいに彼らの責任も重大だったと考える。

いずれにしても、この1年。東海大学が再び強豪に返り咲くことができるのかどうかは、選手もそして両角監督自身も変わっていく。それが求められている。

最後に吉田響くんの件についてだけ。
結果として東海大学を退学するという形になったことは大変に残念に思う。だが、それ以上に両角監督含め東海大学・創価大学の方々が彼にチャンスを残してくれたこと。それが一番うれしい。彼の人生がつまらない大人の事情でつぶされなくて良かった……。それだけはここに記しておきたい。

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