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インドネシア人の幸福度は世界で何番目に高いのだろうか

インドネシア人のクラスメイトと学校の前の通りにあるベベック(アヒル肉)屋台で晩飯を食べていたときの話です。
日本人から見て、インドネシア人がよくやる行為のうち日本人はやらないものがあれば教えてほしいというお題をもらい、いろいろしゃべっていました。

クラスメイトはとても面白がり、言われてみたらそうだよねという話になったのですが、「インドネシア人は世界でもっともEnjoyableな民族と言われているからな」という言い訳というかおちになったんです。
今を楽しむことに夢中なので、日本人からみたら変な行動をしてしまうんだよということですね。

わたしも前々からインドネシア人の ”今を全力で楽しむ姿勢” には感心していたこともあり、驚きの幸福度にお目にかかれるんじゃないかと思って調べてみました。

ところが、思っていたよりだいぶ低かったのです。日本や韓国より低いんです。
今回はなんでこんなに低い数字になるのか考えてみました。
そもそも幸福とは何かの定義は難しいし、文化的な違いも大きいのが違和感の原因ではないかと思っています。

1.幸福度指数 World Happiness Report

毎年世界の幸福度を測るWorld Happiness Reportが発表されています。Gallup社、Oxford Wellbeing Research Centre、UN Sustainable Development Solutions Networkの協力のもと、WHR’s Editorial Boardが作成しているものです。

日本からはグリコ、活育財団がスポンサーになっているようです。

評価項目は6つあります。そして、単純に6つの数値を足し合わせてランキングにしているわけではないと太字で強調しています。

The online version Figure 2.1 also includes colour-coded sub-bars in each country row, representing the extent to which six key variables contribute to explaining life evaluations. These variables (described in more detail in Technical Box 2) are GDP per capita, social support, healthy life expectancy, freedom, generosity, and corruption. As already noted, our happiness rankings are not based on any index of these six factors. Rather, scores are based on individuals’ own assessments of their lives, in particular their answers to the single-item Cantril ladder life-evaluation question.

https://worldhappiness.report/ed/2024/happiness-of-the-younger-the-older-and-those-in-between/

Cantril ladderというのは、10段のはしごで最低から最高を示す場合、あなたの人生は今何段目ですかという質問です。

たぶんこの質問も違和感のある結果になった原因と思います。奥ゆかしいか積極的か、ポジティブ思考かネガティブ思考か、文化の差が大きく出るはずです。

2.インドネシアの実際の順位はどうなの?

まずは2023年度トップ20の発表です。
なんか北欧に偏りすぎていないか?という気がします。しかも国家のせん滅を望むイスラム勢力に周囲を囲まれたイスラエルがなぜ5位なのか?

日本はどうかというと51位、韓国、フィリピン、ベトナムが52位、53位、54位で続きます。インドネシアは80位です。

わたしの先入観では、ラテン系、東南アジアは幸福度が高いはずです。今を全力で楽しんでいる民族というイメージがあります。
中南米各国もスペイン、ポルトガル系なので当然高いと思っていました。
なのに低めのランクになっています。

3.なにが原因なのか

一人当たりGDPが高い、長生きできる、選択の自由、汚職がないなんて、幸福度を測る要素なんでしょうか。
一要素としては否定はしませんが、もっとも幸福度を高めるのは社会的なつながりであり、孤独を感じないかではないでしょうか。
当然この項目も入っていますが1/6の要素なのです。

じゃあなんでジニ係数(貧富の格差)や人口あたりの自殺件数を入れないのか。自殺を禁ずる宗教の国は低く出るというバイアスがあるから入れないのかもしれないですが、韓国も日本も死亡要因に占める自殺の率は高いはずです。
また、GDPより失業率の方が幸福度を表すような気もします。仕事をしていない人が多ければ、社会とのつながりが閉ざされるとか、自己実現の場がないとか、不幸に感じる率が高くなるはずです。
そもそもGDPなんて他の国との相対比較であって、自国内の国民がみんな等しく貧乏なら人は不幸に感じないはずですよね。

経済的に豊かな民主国家に暮らす人びとが一番幸福だ、と勝手に自分たちの価値観を押し付けているだけのような気がしました。
あなたの尺度でいえばインドネシアの幸福度は80位かもしれないけれど、途上国の幸福度の尺度でいえば、東南アジア諸国や南国の幸福度は先進国よりずっと高い可能性がありますよ、と言ってやりたいです。

たしかブータンがトップだったんじゃないかと思って探しましたが、ブータンはかなり下に落ちていました。

3.唯一興味深いところ

年代別の幸福度が出ていることです。若者の幸福度が低いのに老人の幸福度が高い、あるいはその逆とか、同じ国なのに結構な差があるのです。
また、経年比較ができるため、ある国の幸福度が年を経るごとにどのように変化しているか見ることもできます。この比較であれば正確です。

国同士の比較には納得がいかないもやもや感があっても、同じ国の中であれば差が出た原因はなんだろうか興味が出てきます。

レポートはダウンロードできます。

https://happiness-report.s3.amazonaws.com/2024/WHR+24_Ch2.pdf

わたしは他の幸福度指数はないか調べてみましたが、今のところよいものは見つかっていません。

Happy Planet Index(HPI)というのがありましたが、人びとの心の幸福ではなく、いかに資源を有効活用しているかという観点の評価でした。物体としての地球が幸せかという指標ですね。
OECD Better Life Indexはインドネシアが入っていません。OECD加盟国ではないので。日本でも地域ごとに出るので見てみましたが、いまいちでした。コミュニティーの評価指数が、関西の方が南関東(東京、神奈川)より低いなんてありえません。どういうパラメーターを使っているんだろうか?

そのうち、評価者の独りよがりでないバランスの取れた指標ができるんじゃないかと期待しています。

これだけ今を全力で楽しんでいるインドネシア人が幸福でないとしたら、日本人みたいに将来を悲観する思いつめた生活をさせるとどこまで不幸になるのか知りたいですね。孤独とストレスで精神を病むはずです。

こんなところです。

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