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スラウェシ島の温泉をめぐる旅 9日目 パルの温泉をまわる

今日はパルの南側の温泉をまわる計画だ。
パルの街は馬蹄型の山塊に周囲を囲まれ、海側だけが開けている。日本で言えば鎌倉の地形に似ている。ただ奥行きが入り口部分の数倍あるため細長い形なのが鎌倉との違いだ。パルは谷っぽくもある。
そして平野部を突っ切るように太い河が流れており、長い年月をかけて河が山を削り取り平野部を形成してきたように見える。(翌日高い場所に登って地形を見ると、断層に見え、部屋に戻って調べたら断層があった。末尾に追記する)

下の地図の緑で囲ったラインが平野部。温泉は青く囲った部分で、温泉が出る地形の典型で、山の斜面が地面とぶつかる山の端に位置している。

青い丸が温泉のあるところ

3カ所の温泉を回るため、グラブでバイクをよび、値段交渉して回ってもらうことになった。200,000ルピア(2000円)プラス燃料費実費だ。


1.ボラ温泉

まず向かうのは1番町から近いボラ温泉。
ここは宿泊施設も併設している大きな温泉だ。
宿泊料は素泊まりで250,000ルピア(2500円)と350,000ルピア(3500円)の2種類。部屋の大きさによって異なる。
部屋はバンガロータイプで、高床式のミナハサ建築に似た魅力的な形をしている。

ひさしが折れてしまっている。

敷地の中は広々しており、宿泊客と思われる家族連れが、朝早くから温泉を楽しんでいる声が聞こえてくる。
広大なプールは使われていない様子で、古い水が溜まっていた。

プールの奥には、個室風呂と足湯らしきものが見える。
わたしは個室風呂をお願いし、お湯が溜まるまでの間、源泉の様子を調べたり、他の訪問客らと話をした。

写真には写っていないが、アイコという名前の女の子がいて、日本人の血をひいているのかと思ったら、お父さんがアニメ好きでアニメから取ったらしい。
愛子というのは天皇の子供の名前と一緒だと説明したが、ピンときていない様子だった。

源泉は個室風呂の真裏の池から湧き出ており、底から無数の泡が湧き上がっている。触ると熱く、50度近くはありそうだ。
匂いはほとんどせず、味もしない。若干塩が入っているかもしれないという程度なので、たぶん単純温泉だろう。

結構深い源泉の池。奥が個室風呂棟、さらに奥が足湯

源泉の温度が高いため、一時的に冷やす目的の槽を個室風呂棟の裏手に用意してある。
なので、源泉掛け流しの温泉ということになる。

個室風呂はタイル張りではあるが、何か日本風な雰囲気もする不思議な空間だ。
木や自然光を取り入れているためだろう。

写真で見ると、韓国にある建物にも雰囲気が似ている。

自然の柔らかい光が差し込むヌルめの風呂に入りながら、わたしは思わずうとうとしてしまった。リラックスする温泉だ。

入場料5000ルピア、個室料20,000ルピア、合わせて25,000ルピア(250円)
食べるところがなく苦労するのが難点だが、宿泊もオススメ。

2.プル地区温泉

次に向かうのは、ただの野湯の可能性もある温泉で、事前調査ではよくわからなかった。存在しないリスクがあるが、通り道にあるため寄ってもらった。
Air panas Desa Puluという名称の場所で、通りから砂利道の小道を400メートル奥に進み、小川を横切った場所にある。
山の斜面、川の近くという、温泉が出やすい立地で、わたしは多分温泉が湧いているだろうと確信していた。

ところが行ってみると川の水が増量し渦を巻いている状況で、向こう岸に渡ることができない。
温泉がありそうな場所には、壊れかけた小屋が立っていて、多分その辺りに湧いているのだろう。残念だったが行くのは断念した。

写真だけ撮影する。事前調査では山の斜面から水が出ている様子が写っていた。

この温泉に行く途中でも、河が氾濫して家が土砂で半分埋まったまま放置された地区が何ヶ所かあり、氾濫しやすい河に見えた。
細長く両側を山に囲まれているため、真ん中の大河に向かって複数の川が両側から合流している。しかも山がちなため高度差がありいずれも急流だ。
日本でも頻繁に見られるバックウォーター現象(支流の流れが本流で堰き止められ、支流側の堤防が決壊する)とみられる。

3.マンティコレ温泉

ここはボラ温泉ほどではないが知られている温泉。事前調査で画像検索したときは、2018年の中部スラウェシ地震の被害で倒壊した様子が写っていた。

入場料5000ルピア(50円)を払って中に入ると、すでに何組かの客が来ているようで賑わいを見せていた。

ここは個室風呂はなくプールだけで、下流の広いプールと、源泉に近い狭い屋外浴場の2ヶ所に入ることができる。
下のプールはこんな感じ。少しぬるめだが温泉。

緑色なのはお湯が緑色をしているというよりは、プールの壁や底についた藻の影響と思われる。

わたしはより源泉に近い上の浴場に入った。
源泉は山から出ているのをパイプで引いてきているようで、複数のパイプが斜面に刺さって、そこから適温のお湯が出ている。38度くらいに感じた。
お湯は硫化水素の香りがするので、おそらく硫黄泉だと思われる。他の匂いや味は感じなかったため、含硫黄ー単純温泉=単純硫黄泉だろう。

やたらと写真を撮ってくれとせがむおじちゃんとおばちゃん達だった

温泉に入っていると、盛んに「ナパネ、ナパネ」と言っているのが聞こえる。顔をしかめながら言っているので、「効く」とか「熱い」と言っているんじゃないかと思ったら、Kaili語(パルをはじめ中央スラウェシの現地語)で「熱い」という意味だった。パにアクセントがつくため「ナネ」になる。
わたしは全く熱くはなかったのだが響きが気に入って、一緒に「ナパネ、ナパネ」と言いながら打たせ湯に打たれた。

首や肩にお湯をあてるととても気持ちが良い。
訪問客はストローク(脳卒中)に効く温泉だと言っていた。体に麻痺が残った場合のリハビリに良いのだろう。

4.パルのショッピングモール

海沿いに大きなショッピングモールがあると聞き、遅い昼ごはんを食べに出かけた。

4階建で、4階にはシネコンも入っている。と言っても、この日は2作品しか上映されていなかった。
ラーメン屋があるようなので食べてみるかと行ってみると、すごい行列ができていた。昼時ならわかるが、金曜日の午後3時という微妙な時間帯なので驚く。

もしかすると海が見える店は貴重だから混んでいるのかもしれない。

このモールの設計者のセンスはイマイチで、海が見えることの重要性を考慮しないデザインと店舗配置になってしまっている。
最上階に映画館は鉄則だが、それは最上階は客が来ずに安めの家賃設定になるからで、映画館のように目的を持ってくる施設かつ広いスペースを必要とするテナントには向いている。
ただし、ここはオーシャンビューを売りにする立地だから、逆に高い階が海側であれば高い家賃で飲食を呼べるはずなのだ。
なのに定石通り映画館にしてしまい飲食店はない。
3階の海側は貴重なスペースなのに、景色はあまり関係ない小売業を入れたりしている。そのせいで3階の海側に2軒しか飲食店がないのだ。

さらに2階の海側はといえば、駐車場に向かう車の通り道になっていて、目の前を車が頻繁に横切る。そしてやはり飲食店は2軒しか入っておらず、眼鏡屋やマットレス屋が入ったりしている。

だんだん気づいてテナントを入れ替えていってもらいたいものだ。
ちなみに、モールの2階から見える海の景色はこんな感じだ。海は茶色の河が大量の土砂を運んでくるので河口付近は濁る。

わたしは1階にあるスラウェシ料理に入り、店名にもなっている麺料理を頼んだ。
中華料理だとイーフーメン、日本だと長崎皿うどん、フライ麺にトロミのあるスープがかかっているやつだ。
シーフードにしとくんだったと後悔した。普通にうまかった。

Mie garing Sulawesi special

明後日の早朝にパルを出るジャカルタ直行便が取れたので、明日が最後となる。
街の北側40キロにある温泉は、そこまで魅力的に見えない上に閉まっている可能性があり、今回はやめにする。
オーシャンビューの絶景温泉の可能性はあった。

明日はパル名物のお土産をたくさん買う日になる。美味しいものも食べておきたい。

追記:4/14
冒頭に大きな山塊を河が削り取り平野になっていったのではないかと書いたが、翌日高い場所から見ると、断層がずれた跡に見える土が剥き出しのまっすぐな斜面がいくつもあった。
また、山塊が真っ直ぐ連なり海に向かってそのまま続いているところも、断層の地形なので、部屋に戻って調べたら断層(パル カロ断層)だった。

赤線は長岡工科大の報告書、青線は東北大学の報告書を参考にした

https://cee.nagaokaut.ac.jp/HTML/yoshisyu/2021/infra/pdf/ken21702.pdf

https://irides.tohoku.ac.jp/media/files/earthquake/eq/2018_sulawesi_eq/20181011_Toda.pdf

2018年に中央スラウェシ地震が起き、死者行方不明者5000人近く、負傷者1万人という甚大な被害をもたらした。
亡くられた方々ご冥福をお祈りする。




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