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最難関中合格の秘訣 親の役割・塾の役割

(16回目)
Ⅲ.最難関中突破のための親の心構え

[7] マネージャーに徹する7つのポイント!
 前回に続き、7つのポイントをお話していきます。

④ 親はサンドバッグになることを厭うな
 受験期間中、子どものストレスは相当高まります。突発的に口汚い言葉も出ます。親に向かって、「お前なんか鬼だ!」「バカヤロー!」といった言葉を発することもあります。でも、それはもちろん本心からではありません。ストレスが高じて発せられた言葉なのです。
 だから親はそうした子どものストレスを受け止めてやる必要があります。いわばサンドバッグになる必要があるのです。親にとっても子どもの受験期は、サンドバッグのように打たれ続け、耐える時期なのです。サンドバッグは打たれると形は変わりますが、それでも大きさが変わるわけではありません。親がそんなサンドバッグのようになれるかどうかも、わが子の最難関中合格で重要なポイントになります。
子どもたちは高学年になると食事の休憩時間があります。その時間に私が机間巡回をしていますと、子どもがお弁当の蓋を開けたときに「入り玉子」をまぶした黄色いご飯の上にケチャップで赤く「合格」と書かれているのです。ご家庭のきめ細やかな愛情に私は胸が熱くなりました。ところが、その熱い親の思いをも気にもせず子どもはすぐに箸でぐちゃぐちゃと混ぜてばくばく食べるのです。さらには食べ終わってからの一言がひどいのです。隣の仕出し弁当を取り寄せている生徒を見て、「そっちのからあげ弁当の方が美味しそう」と言うのです。そんなことを聞いたら親は涙が出ます。
 しかし私は親にこう話します。「その場面を切り取れば、確かに子どもは薄情ではありますが根底にあるのは親は心底有り難く感じる存在なのですよ」と。
 これは入試のときの究極の場面で証明されます。当日の入試激励で子どもたちを集めて以下のような話をします。そこには保護者の方も一緒におられるわけです。そのときに「君たちは今までよく頑張ってきたね、でも君たちがこうして受験できるのは君たち一人だけで頑張ったわけではないでしょ。後ろにいるお父さん、お母さん、兄弟や姉妹やおじいちゃんおばあちゃんたちの家族の力というのが絶対にあったよね。そのありがたさに応えるためにも今から最後の最後まで一生懸命頑張って戦うことを誓うために家族の人にありがとうと言おう。声を出して言うのは恥ずかしいかもしれない。では心の中で言おう」と言います。
 そのとき、彼らは真剣に心の底から「ありがとう」と言うのです。周りで聞いている保護者の中には涙をされる方もいます。子どもたちは、このタイミングで親のありがたさ、家族のありがたさを感じてくれているわけです。
 大事なポイントはこのありがたさを感じなければ入試は駄目なのです。
 私は「入試問題を取り組むときに頭の中が真っ白になったらどうする?」という対応策を子どもたちに教えています。そういうときに私の今までの指導経験から自分の「発想の転換」を働かさなければいけないと考えるのです。それ故、子どもたちにこう話します。「そんな場面に陥ったときに思い出してほしいことが一つある。それは家族のことだ、家族のことをそこで思い出せたら自分の発想の転換を働かせることができるのだ」と。

⑤ 親は定常状態を保て
 わが子が入試を突破するまで子どもの心理面を定常的な状態に保つことも大切なポイントなのです。入試以外のことで子どもの心に波風立てる行動を起こしてはいけません。
 例えば極端な話ですが、お母さんが入試まで服装を変えないで通せるか、です。女の子ならば、お母さんが新しいきれいな服を買って出かけるようなことがあれば、それだけ子どもの心はそぞろになり、集中力が低下します。たかが洋服と思うかもしれませんが、受験期のわが子の心理状態はそれほどナイーブな状態にあるのです。
 受験時期に車を買い替えるのもよくありません。車好きな子どもには論外な話です。だいたい車を買い替えようと考えると親はカタログや雑誌を見ます。それがリビングのテーブルにあると、子どもはカタログや雑誌を飽きることなく見ることでしょう。子どもは意外と一つのことに集中しますから頭の中はすぐに車のことで占められてしまいます。納車になるまでの1ヵ月間くらい「いつ車が来るのかな」「どんな車が来るのかな」とそればかり考えます。さらに親が「今度、車が来たら信州まで試乗もかねてドライブをしよう」とでも言おうものなら、勉強にまったく身が入らなくなります。車の買い替えも1~2年先延ばしにし、わが子の入試が終わってからにしましょう。
 とにかく合格するまでは子どもの心をそぞろにしてはいけません。冠婚葬祭も「葬」だけは仕方ありませんが、残りの「冠」「婚」「祭」はできるだけ避けるようにして、子どもの心を入試一点に集中させましょう。

⑥ 家族旅行は1~2年我慢せよ
 毎年夏になると家族旅行に出かけるご家庭があると思います。希学園の生徒の中にもいます。しかし受験を控えた特に6年生の子どもにとっては迷惑な話です。実際、子どもは喜んでいません。「仕方ないからついていってやるんだよ」それが本音です。その通りだと思います。受験学年の夏休みこそまさに受験の天王山なのですから。第一、子どもも小学5年、6年になると親と出かけるよりも子ども同士で遊ぶ方がずっと楽しいのです。
 ところが親はなかなか子離れができません。特に日頃子どもたちとの接触が少ないお父さんやお母さんはここぞとばかりハワイや沖縄に連れて行きたがります。しかし旅先で一番くつろいでいるのはお父さんであり、お母さんなのです。何のことはない、親の楽しみのために子どもを無理矢理連れて行っているのです。だから親が海辺で寝そべっている間、子どもは勉強道具を持って行って、ホテルで勉強をしているというケースがよく見られます。
 親のエゴで子どもを振り回してはいけません。受験期に癒やされたいのは本当はわが子のはずなのに、これでは逆です。入試において主役であるタレントはわが子であり、親はマネージャーです。それをしっかり理解しているのなら、マネージャーがタレントを引き回したり、マネージャーの方が目立つような行動を慎むことができると思います。

⑦ 他人の後ろ指を恐れるな
 受験期は、わが子のことだけを考えて行動することが大切です。それはときに他人から後ろ指を指される行為ともなります。
 先に「僕は灘中を来春受験します!」や「僕は開成中を来春受験します!」と紙に書いて玄関に張っておいたら必ず合格しますと言いましたが、そんなことをすれば「あの家は!」と後ろ指を指されるかもしれません。また、隣の家のお母さんが「うちの子はこの問題集で成績が上がったからお宅もやってみたら」と言っても、それがわが子に適合しないと思えば迷うことなくその情報は捨てなくてはいけません。しかし、それが隣に知れると「せっかくアドバイスしてあげたのに」と、これもまた後ろ指を指されることになります。
 しかしマネージャーはタレントを守り、いい仕事をさせるのが大事であり、他人から後ろ指を指されることを恐れていたらとうてい役割は果たせません。親はいいマネージャーとなってわが子の才能を守り、伸ばしてやることが大切なのです。

 次回から塾選びのポイントや塾の役割について述べていきます。

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