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「子どもの思考力を育てる秘訣」No.15

国語の読解力と思考力の錬成

 国語の問題の解法に際しては「作者の意図」とか「考え」、あるいは「登場人物の気持ち」を汲み取って、その内容でいえば作者に寄り添う姿勢を必要とします。問題文章の中に自分を同化させる必要があります。実は算数の問題を解くときも国語に対応することと同様な対応が要求されます。算数の作問者はこの問題を与えることによりどのような算数力を試そうとしているのかを必ず意図して作問しているわけです。ですから受験生はその作問者の意図や考えを自分なりに理解できるかどうかが重要になるのです。
 例えば、低学年向きの問題を例に挙げます。数字の書いたカードの問題があります。
『1,2,3,4と書いた4枚のカードがあります。ここから2枚のカードを選んで2桁の数を作ります』
 短い行の文ですが、『1,2,3,4と書いた4枚のカードがあります』と書いてあるだけでも、重要な条件を提示しているのです。つまり作者の意図は「そのカードは1回しか使えませんよ」と言っているのです。わざわざ「1回しか使えませんよ」とは書かないのです。4枚カードがあるということは1枚ずつしかないのです。言い換えれば、22という数を作ることはできないというわけです。小学1年生レベルの問題ですが、これを読み取らなければなりません。2桁には23,24,34とかいろいろ数があるという知識は持っているでしょう。しかし、そこから考える力を駆使して、同じカードを使って2桁の数を作ってはいけないというところまで考えて解いていかなければならないのです。つまり1回しか使えないということを1行の文から読み取るわけです。作問者は正にそれを想定しているのです。
 このように算数では国語に似た読解力を試している問題がすべてであると言っても過言ではありません。算数の問題を解こうとするのであれば、国語の文章読解力を身に付けておく必要があると申し上げているのは、正にこのことを言いたかったのです。一つの例として以下の問題を掲げておきます。
 『春子さんは鉛筆を10本持っています。夏子さんから鉛筆を5本もらいました。そして秋子さんに鉛筆を7本あげました。春子さんは鉛筆を何本持っているでしょう』
 ここでは算数における二つの常識があります。1点目は「もらう」という言葉を算数では「+5」という式に直さなければなりません。理由は、この問題は春子さんを中心に述べているからです。だから受験生は問題に寄り添っていけば「春子さんはもらいました」ということは春子さんの持っている鉛筆は「増えたんだ」ということになるわけです。そして「鉛筆を7本あげました」、「あげた」ということは春子さんに寄り添えば「-7」になったんだということになるのです。
 もう1点、これは春子さん主体で構成されている文章です。ところが算数では途中の主語は省いて書くことになっています。それを低学年の子どもたちはしっかりと読み取らなければならないのです。主語まで含む問題文を詳しく書けば、
 『春子さんは鉛筆を10本持っています。春子さんは夏子さんから鉛筆を5本もらいました。そして、春子さんは秋子さんに鉛筆を7本あげました。春子さんは鉛筆を今、何本持っているでしょう』
となるわけです。
 最初、主語は「春子さんは」と述べた後、主語はすべて省かれているのです。算数では当然の表現なのです。論理展開をきちっと頭の中で式に展開していく力、これを算数では見ているのです。これは国語の読解の力そのものです。読解力とは行間に隠されたところを読み取る力です。算数もそうなのです。算数の問題は主語(主体になるもの)は途中ほとんど省かれており、それ故、算数の問題文は短いのです。その行間の部分を受験生は式や表やグラフを使いながら埋め込んでいくわけです。これが算数なのです。
 頭の中で論理展開を構築していかなければなりません。構築していくために自分で「どのように考えたらよいのか」が問われています。与えられたことだけやっていてはいけないのです。

 ではここで与えられたことをやっていくということについて他に考えてみましょう。「計算なんか単純作業じゃないの?」と思われるかもしれませんが、実は「計算」そのものが思考力の錬成、思考力をさらに構築をしていく練習そのものなのです。

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