最難関中合格の秘訣 親の役割・塾の役割
(11回目)
Ⅲ.最難関中突破のための親の心構え
[3] 親はわが子の「マネージャー」であれ!
親はディレクターではなくマネージャーであらねばなりません。
マネージャーはタレントのスケジュールを管理し、タレントのいいところを見抜き、そのタレントが一番輝く仕事を取ってくるのが仕事です。それを受験に当てはめるならば、親はマネージャーとしてわが子の特徴を捉え、学習計画を立て、わが子に必要な情報を与え、必要な学習環境を整えるのです。
隣の子が開成中学を受けるといっても、わが子は麻布中学に向いていると思えば、麻布中学の研究をしていくのがマネージャーの仕事です。
マネージャーは客観的に判断し、情報をセレクトしなければなりません。
例えば、近所のスーパーでわが子の友人のお母さんと会ったとしましょう。友人のお母さんが「この参考書を使ったらすごく力がついて、テストの点が60点から100点になったのよ」と言ったとします。それを聞いた母親は、すぐに書店に飛んでいって同じ参考書を買い求め、わが子に「○○ちゃんの成績が上がったんだって。これ、あなたもやりなさい」と言うのはマネージャーではありません。その参考書で友人の成績が上がったのは事実でしょうが、それはその子に合っていたのであって、わが子に合っているか否かは別問題だとマネージャーならば考えます。
もし、その参考書がわが子に向いていないと判断すれば、与えないのもマネージャーの仕事です。それはちょうどタレントのマネージャーが、何でもかんでも仕事をとってくるのではなく、将来そのタレントが成長するための仕事でなければ取ってこないのも大事だというのと同じです。わが子の友人のお母さんに、いい参考書、いい問題集を聞く必要などどこにもありません。
お母さんたちのお茶会で、誰かが「この方法で子どもの成績が上がった」という話をしても、それをマネする必要もありません。むしろ、そんなお茶会からは早く抜け出して、わが子のそばについてやるのがいいマネージャーです。他のタレントのマネージャーと一緒にお茶を飲んでいても、自分がついているタレントにいい仕事を取ってやることなどできるはずがないのと同じです。
いま、わが子に一番あった学習メニューは何だろうか、一番ふさわしい教材はどれだろうか、と迷ったら、友だちのお母さんに聞くのではなく、学習塾などの受験指導のプロに聞けばいいのです。面倒見のいい学習塾であれば、わが子にとってそのときどきに与えるべき学習メニュー、学習教材を知っていますからすぐに教えてくれます。学習指導のプロに任せるべきところは任せるのが最難関中合格のための大事なポイントです。
そういう観点から申し上げますと、あるプロ野球の球団の監督さんは理想的な親でした。
試合があるという日でも教育相談があれば奥様と二人でいらっしゃいました。監督ですからその日の試合の作戦を練ったり、選手のコンディションを見たり、また取材を受けたりとお忙しいのですが、お子さんの教育にはとても熱心でした。差し向かいの教育相談では、こちらの話にじっと聞き入っておられました。私の話の途中に一つか二つ質問する程度で、あとはずっと耳を傾けておられました。学習塾といえども進学塾であるならば、お預かりしている子どもたちを合格させなければ仕事を続けていけません。それが分かっておられるから、冷静に、そして謙虚に聞いておられたのだと思います。そしてこちらの「これはご家庭でやってください。これは私たちのところでやります」というアドバイスをきちんと守られた結果、お子さんも見事、灘中に合格していかれました。
不思議なことに、プロスポーツの選手や監督さんとか、テレビでよく見る漫才師の方、タレントさんなどはおしなべて謙虚であり、わが子のマネージャーに徹するのが上手な方々でした。
仕事が忙し過ぎてディレクターをやるだけの時間がないこともあるでしょうが、これは想像ですが、おそらくプロの道をよく知っておられるからだと思います。自分がその仕事をするためにどれだけ努力、練習を積み重ねなければいけなかったかということをご存知だから、そう簡単にはその道のプロになれないことを感じておられたのでしょう。自分は監督業のプロだが、あるいは自分は漫才のプロだが、勉強を教えるプロではないということがわかっておられると思うのです。事実、こちらのお願いをきちんと実行していただき、いい結果を生み出しています。
希学園にもテレビや雑誌でよく見かけるその道のプロの方がお子様を託されますが、その多くが難関中に合格しています。それは自分がプロとして偉大な仕事をされている当事者であるが故に、マネージャーとしての親の役割分担をきちっとわきまえておられるからではないかと思います。
まとめれば、お子様自身にとって何が必要なのかのフィルターをどのように装着するか、濾過する部分にどのようなものを入れたらいいのかというのはご自身で体得されることが絶対必要条件なのです。学校説明会などに参加して低学年のうちから研究されることも大切だと思います。そのときに人からこの学校はこうだからとお勧めされたとしても、自分自身のフィルターを通し、わが子に対して本当に必要なことなのかどうかを確かめる必要があるからです。この部分を与えてくれる学校だったらわが子を行かせるのに値するのではないか、というフィルターをご自身で持っていただきたいのです。
この情報化社会の中でいろいろな情報が飛び交っております。しかし一番大切なポイントはご自身でフィルターをかけ、わが子のことに対してしっかりと整理して、そしてわが子に与えていく、このような環境や心構えをお持ちいただけたら良いと思います。
ここで何故マネージャーに徹していただきたいかということを再度強調しておきたいと思います。
例えば、有能なタレントがいたとしましょう。必ずマネジャーが付きます。マネージャーの方は非常にご苦労だと思います。何がご苦労かと言いますと、タレントは踊ったり歌ったりするわけです。その舞台設定を統括するのがマメージャーだとすれば良い舞台設定を組まなければならないのです。勝手にやっておきなさいではそのタレントは能力を発揮できません。ですからマネージャーの仕事というのは非常に大きな役割を担っていると考えます。まさにマネージメント、これはただ管理したりスケジュールを組み立てたりとか単純な話ではありません。その人に対してどのような舞台を設定させれば良いのか、その交渉ややりとりをマネージャーが行うわけです。そのタレントが役者ならば最大限に自分の持っている力を発揮できる舞台設定をマネージャーが考えなければなりません。設定するためにはいろいろなところとの交渉の中で、このような舞台でこのようなことをやってもらいたいという要求に対して、あなたならできるはずだからやってくださいね、と伝えます。そこから先は自分自身の能力の発露です。このような舞台設定をきっちりとやっていくマネージャー感覚が必要だということを訴えたかったのです。
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