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「子どもの思考力を育てる秘訣」

20210708資料①

3.知識偏重思想からの脱却

 以上、述べてきたことを別の言葉で表現すると「知識偏重思想からの脱却」なのです。子どもたちが将来自分一人で生きていくときに必要なものというのは「知識」だけでは駄目で、その「知識」を駆使するための「知恵」、これが最大のポイントになってくるわけです。そういう「知識」を上手に使っていく力を持っている子どもの方が伸びるという現実があるからではないでしょうか。私自身も長年の経験の中で実感している重要ポイントであります。

 資料①で「入試を突破する力の5大要素」と書かせていただきました。端的に言いますと、ここで重要なのは「自立心」なのです。自分で自分のことを切り開いて、物事を解決できるかどうか。これは「知恵」そのものではないでしょうか。「知恵」を働かさないと自立できない場面はいっぱいあります。経験に基づくことは貴重です。「こういうときにはこうする」、その基になっているのはもちろん「知識」です。しかし、そこからその「知識」をどのように駆使して、さらにはどのように応用していくのかということはすべて「知恵」です。それ故「知恵」の開発あるいは集積が重要なポイントになることは間違いないと考えます。

 次に述べますのは「『変』に臨んで強い子に育てる。対応能力を確立させる 」
 この点について私が経験しました1つの事例でお話いたします。
 今から5年ほど前のことですが、筑波大学附属駒場中に受験に行った生徒が私のチューター生でおりました。入試に向かう際に我々講師から激励を受けるわけですが、入試会場に入ったらたった1人で戦う世界です。そのたった1人で戦う世界でこんな事が起こりました。
 入試問題が配られました。スタートの合図で配られた問題をめくると問題が全部白紙だったのです。そんなこと起こるのかと思われるかもしれませんが現実に起きました。そのときに「困ったなー!」と解決する方法や術がなく俯いていたのでは話になりません。そのとき彼は間髪入れず手を上げました。「先生、僕の答案用紙が白紙です」と言いました。すると監督の先生は新しいものに答案用紙を変えてくれました。その間の時間は1分30秒ぐらいだったと本人は言っています。そして入試はそのまま終了しました。結果は合格でした。もし彼がこの事態を自分自身の問題と捉えないで学校から与えられたものという感覚であればどうなっていたか、結果は火を見るより明らかです。
 「誰も助けてくれないのだ」と自分で認識し、自ら手を上げて「こういう状況では困ります」と言って自ら解決しなければならないと決意したのです。そして自分の力でテキパキとスピードを上げて問題点の解決に向かうという姿勢をとったのです。
 「このような状態になれば、こういう手段に打って出なければいけない」という「知識」は受験生ならば当然持っています。しかし、そこからどのような行動に繋いでいくのかが重要なのです。この「知恵」の部分、「知識」から「知恵」に繋いでいくという部分、「持っているもの」から「経験に繋いでいく」部分、すなわち、経験を基にして実際の行動に移していくために、多くのポイントを自ら乗り越えることこそが重要なのです。その基になっているのは「自立心」そのものです。「自立心」とは本来ならば精神的な部分の独立、正に自立ですが、思考力においても発展的に伸ばしていく基になっているのが「自立心」であると声を大にして申し上げたいのです。「自立心の確立」、これこそが「知恵」の源泉になっていると考えるからです。


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