以前以後のお話11

 秋は私にとって難しい季節である。

 何かをしなきゃいけないと定められている休日を、嫌悪し始めている。
 好きな時間に起きて、好きな時間に食事をし、飽きるまで運動、読書、ゲーム、動画視聴、物書き、趣味の買い物、家事、その他の余暇活動を続けること。幸い、家の床が抜けるほどではないにせよ、蔵書はそれなりにあるので読書で時間を潰すのに苦労も出費もない。1週間に最低2回はやってくる余白をいかに過ごすかという課題は考えるのが楽しいものでもあった。

 しかし、気づくと余白は埋まってしまっている。いろいろの仕事を安請け合いし、公私はどちらも複雑化し、考えることが増える。余白とは、時間的な余白であるとともに、精神的な余白、あるいは思考の余白であり、これが埋まってしまうことと精神の不調とが、ある程度の相関をもっているということは明らかだった。

 ここでいう「思考の余白」とは。何も考えなくてよい時間。しばらく、そういうものがないような気がしている。秋はやはり難しい季節だ。