景色002 北見点描 雪と春

 「北海道=豪雪地帯」というのは無条件に成立するわけではありません。日本海側や石狩・空知地方は毎年とんでもない量の積雪がありますが、函館を中心とする渡島半島や、網走、北見などのオホーツク海側の地域は、それに比してずっと少ない積雪です。あくまで北海道の中での比較でしかないので、降るには降るし、積もります。が、スキー場の営業開始が毎年のように年明け以降になっている網走の例を見ても分かる通り、オホーツク海側の積雪というのは「豪雪地帯」と呼ぶにはややさみしい量です。降るし積もるけども。

 オホーツク海側地域の冬は、雪の多寡よりも厳しい寒さで語られる方が多いかもしれません。冷たい海風が吹きつける紋別や湧別。流氷によって海が閉ざされることで一層寒さが厳しくなる網走、斜里。内陸の北見、山沿いの遠軽は毎年のように氷点下20度以下を記録します。
 「雪が降った方が暖かい」という言葉の意味は、北見に住むことでこれまでよりも強く実感できるようになりました。

 ここ最近は季節外れの高温で、せっかく積もった雪はあらかた解けてしまいました。もうスキーに行くことも難しいでしょう。2月中旬に舗装面が露出した街路、というのはなかなか珍しい気がします。
 晴天が続いています。陽光の中で目に止まるものは、冬と春の境界線上でじっとしている雪。雪たち。なぜかずっと眺めていたくなる不思議な魅力をもっていると思います。(撮影はいずれも2024.2.25)

雪溶け時期はどういうわけか、変な形の氷が生えてきます。
除雪車が残した造形。いつか崩れ落ちるのでしょう。
陽光を浴びた雪、それも南側にある雪山の表面はトゲトゲに解けていきます。
“ママさんダンプ”によって路肩に寄せられた雪の塊、の成れの果て。
雪解け水は路肩に止まって凍結していきます。雪には戻れない。

 かなり限られた期間でしか見ることができない、不思議な造形の雪山や雪の塊が好きです。雪の解け方はかなり不均等というか、細かな穴が空いていくように解けるので、思わぬ形に出会うことができます。

 この時期の雪は泥水をかぶったり、滑り止めの砂が混じっていたりで見た目には汚く感じるのですが(実際、車や服や靴が汚れます)、同時にそれは春が近づいてきている証拠でもあります。
 雪解けと春は、珍妙な形の氷雪と、泥と砂埃、そして陽光に照らされた色彩とともにあります。例年であればあとひと月ほどでしょうか。今年はもう少し早い気もします。