2023年に読んだ本について

 本をたくさん読んでいるような顔をしながら実際には全然読んでいなくて、本や読書についての話題になるとすごく表面的でペラペラな話しかできないくせに、そんなことないんですよ? みたいな顔をしています。そういうわけで(どういうわけで)2023年は80冊くらい読みました。5冊くらい読みたいな〜と思いながらそのうちの2冊を読了したら、翌日読みたい本が9冊になっていた、とかそういうことを繰り返していました。
 年の瀬も差し迫っているので、この年に読んだ本たちの中で、印象的な10冊(+1)を選びました。

辻村深月『かがみの孤城』
 2022年の末に映画が公開され、当初は最寄りのイオンシネマで上映がなくてキレ散らかしていましたが、翌年3月に無事に上映されました。
 映画化の影響でまた話題になったということで、私の職場でも「読んだよ!」とか「観たよ!」という報告がいくらかありました。キレ散らかしたことも少しは報われたと思います。
 不登校の中学生たち、という読むには気の重いテーマでしたが、本当に暖かく幸せな読後感をもたらしてくれるストーリーです。未読の方はぜひご一読を。
 映画の感想はnoteにまとめています。

逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』
 第二次世界大戦を戦った、ソ連軍女性狙撃兵部隊の物語。彼女たちが相対した“敵”とは一体なんだったのか。タイトルが回収される前後の怒涛の展開には驚かされました。

背筋『近畿地方のある場所について』
 ドキュメンタリー風のフィクション、“モキュメンタリー”。もうそのまんま、近畿地方のある場所について取材、調査した資料で構成された内容です。読み終えて久しぶりにイヤ〜な気分になれました。雑多に散らばる各種の怪異や都市伝説、伝承や記録たちが形作る“ある場所”にまつわる悍ましさは、本当にイヤ〜な気分になれます。

射線堂有紀『本の背骨が最後に残る』
 ファンタジー・ホラー7本の短編集。“ゾッとする美しさ”が感じられます。斜線堂有紀はドロドロ恋愛ものが本領な気がしていましたがそうではなかったな〜と感じた1冊です。

小田雅久仁『残月記』
 粘つくような恐怖・悔恨を感じる短編2本と表題作の長編1本。月ってまあ狂気の象徴だったりするし……というのは特に1本目の『そして月がふりかえる』で感じるわけですが、表題作のラストにおける鮮やかな着地は爽やかでした。

木古おうみ『領怪神犯』『領怪神犯2』
 TLに時折流れてくるので手を伸ばした2冊。各地で発生する人知を超えた怪異“領怪神犯”を調査するバディもの。戦うでもなく鎮めるでもなく、ただそこにあるものとして、受け入れるというよりも了解していく様子は、“手のつけられない何か”を扱う同種の作品の中では異彩を放っていると思います。

川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』

齊藤彩『母という呪縛 娘という牢獄』

稲田豊史『映画を早送りで観る人たち』

貴志謙介『1964 東京ブラックホール』
 2019年10月に放送されたNHKスペシャルの書籍版。高度経済成長とオリンピック前後の狂乱、その中心地である東京の実情を追ったノンフィクション。素朴で牧歌的、という“昭和時代”の幻想を散々に打ち砕く内容でした。

 80冊/年程度の読書量から選んだ10冊で何か言えるのか、という疑念はあるのですが、まあそんなのはいいじゃないですか。

 ということで、2023年のマエダ読書賞は7年くらい連続で伊藤計劃『虐殺器官』に決定しました。2024年も、よい読書体験を。