豪雨被害が続く日本
「令和2年7月豪雨」と名付けられた今回の水害。
河川の氾濫は有史以来、人類の立ち向かうべき壁であり、
江戸時代の繁栄は、まさにこの治水事業のおかげといっても
過言ではありません。
今回の水害のニュースを通じて、少し目線を切り替えつつ、
視野を広げるため、多角的な切り口で眺めてみたいと思います。
1.自然科学の観点から(雨が降るメカニズム)
前線とは冷たい空気(寒気)に対して、暖かい空気がぶつかる場所。
”暖かい空気は冷たい空気(寒気)にぶつかると、上昇し、
雲が発生します。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30111033/picture_pc_6592075832c186982bdbb29faaa668aa.png)
そもそも雲ってなんですか?
雲は水滴の集合体だったことは有名ですね。
チリやホコリを核とした小さな水滴の集まり。
気体ではなく厳密には液体なんですね。
では何で上昇すると、雲(液体)が発生するのでしょう?
これには、
空気に溶けることが出来る、水の量が温度によって違うことが
絡みます。
ご参考1)水が空気にとけるとき
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30111356/picture_pc_24fa167a85db0cd235f899326a3f347e.png)
(空気に溶けることが出来る限界値を飽和水蒸気量と呼びます。)
空気の温度が高ければ高いほど、水を沢山溶かすことが出来ます。
そして、気体は圧力が低くなると、温度が低くなることが知られています。
これをボイル・シャルルの法則というんですが、
要するに
p:圧力 と V:体積 を T:温度で割ると
一定であるという法則なんです。
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30113169/picture_pc_651d0aca3ff266bcedc5714059e21109.png)
上空にいくと空気が薄くなるので、つまり圧力が低くなるんですね。
体積は特にかえていませんので、必然的に温度が低くなります。
よって、上空にいく空気は必然的に冷えていき、
溶けきれなくなった水が出てきたもの。これが雲です。
ご参考2)空気に水が溶けるとは?
※1.机の上にこぼれた水。1時間くらいほっておくと、
無くなってますよね。あれは空気に水が溶けたからです。
※2.朝起きたら、特に冬場は窓ガラスに沢山水滴がついてますよね。
あれは温度が冷えて、空気に溶けていた水が、溶けきれなくなって、
窓ガラスについているからです。
ご参考3)(ここでは関係ないけど)
逆バージョンです。気体に水が溶けるとき。
ちなみに気体が水に溶けるときは逆の性質があります。
つまり、温度が低いほど溶けやすい性質があります。
例えば二酸化炭素(気体)は水に溶けますが、
その溶ける量は温度が低くなればなるほど溶けやすくなります。
(冷えてる炭酸水のほうがシュワシュワしますよね)
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30111487/picture_pc_bfeebadbd0d2d6e9b3a25ea40a83e7bd.png)
2.温度に対して指数関数的に増える水の量
25℃に対し、5℃変化することで、水の溶ける量は
1立方メートルあたり7.6g変化しますが、
30℃に対し、5℃変化すると、
溶ける量自体が15%増しとなり、8.8gになる。
温度に対し、指数関数的に水が溶ける。
これが、豪雨が最近激しくなっている理由の一つです。
暖かい空気が1℃上がる影響は比較的甚大であることが
飽和水蒸気量のグラフからもわかります。
さて、そもそも気温は本当に上がっているのか?
気象庁のデータにアクセスして作ってみました。
以下は、1875年から2019年までの雨季に相当する(であろう)
6月から9月の4か月の温度を平均し、時系列にしたグラフです。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30112445/picture_pc_b08dc237e543313d0f1ccd89bc87c0ed.png?width=1200)
ぐにゃぐにゃしながらも上昇しているトレンドは確認できますね。
より特徴が分かりやすくするために、年間平均気温も出してみます。
1876年から2020年までの144年間の推移が以下の通りです。
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30112541/picture_pc_ad0bc34e092bc5225b135a84433b308e.png?width=1200)
おお、やっぱり上がっていますね。
温度が上がると雨の量は増えることは
理解していただけたかと思います。
ちなみに温度があがることによる弊害は
多くの研究機関が予測を立てているので、
ご興味がある方はご覧ください。
温暖化で平均気温が1度上がると国内の猛暑日は1.8倍に
気象研と東大がスパコンで予測
https://news.mynavi.jp/article/20190531-834640/
2.損害保険の観点から
先週、保険について触れましたが、生命保険だったので、
今回は損害保険について軽く触れます。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30110476/picture_pc_34778394b3f16d12afbddea10540d248.png?width=1200)
保険はリスクヘッジであることは変わりません。
![画像11](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30113398/picture_pc_144b16ff0296ddde4e8c18437f68ce17.png?width=1200)
そして保険の仕組みは、
①多くの人から頂く保険料が、
②少数の人に払う莫大な保険金
よりも上回ることがビジネスとして継続するために大事です。
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30113411/picture_pc_7de9ea0a30953b2195c7e27ee1fa1b9c.png?width=1200)
当然、①の保険料設定に関しては保険会社としてはとても大事で
事件の発生数が予測を上回ると、保険会社が損することになります。
こちらが、東京海上が決算報告で発表している
②少数の人に払う保険金の総額を記していますが、
やはり自然災害の頻度や甚大さが予測を上回っていることが分かります。
![画像11](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30118493/picture_pc_0869c77c83bb235c4d877dae6cc056cf.png?width=1200)
東京海上グループの経営戦略 2019年11月25⽇
https://www.tokiomarinehd.com/ir/event/presentation/2019/l6guv30000000h4h-att/FY2019_Interim_IR_Conference_j.pdf
2018年の保険業界全体の支払保険金の総額は、1.7兆円。
東日本大震災時の支払保険金が1.3兆円だったことを受けると、
災害の経済損失は甚大になってきていることがわかります。
そうなると、当然
①我々が支払うべき保険料
は値上がりすることになりますが、
早速そのようなニュースが出始めています。
自然災害の保険は、「火災保険」でカバーされますが、
損保各社はこの保険料を来年から値上げすることを既に決定しています。
損保大手、火災保険を6~8%値上げへ 自然災害相次ぎ
https://www.asahi.com/articles/ASN786GR8N78ULFA02D.html
地球温暖化に対する脱・化石燃料の動きが加速しているのも頷けます。