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戦うからには負けたくない、勝ちたい

拙著『民衆 対 陸軍』のカバーを飾った絵画、
阿部合成『見送る人々』1938年作が兵庫県立美術館で公開されている。

「2023年度コレクション展II」にて12月24日まで展示。
下記サイトの「作品リスト」→「休部--ただいま不在中」のNo.2 です。
https://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/j_2309/tokushu.html

日中戦争と思われる戦いに出征する兵士を多数の民衆が熱烈に見送る一方、右横の4人は冷めた視線を送っている。

阿部合成は1910年(明治43)に青森県で生まれ、旧制青森中学時代に太宰治と同級だった。京都市立絵画専門学校(今の京都市立芸術大学)で学び、1938年、この『見送る人々』が二科展に入選した。本作品は高く評価されたが、反軍的な印象から阿部は「反戦作家」とみなされ、画壇とも疎遠になる。

本作品に描かれているように日中戦争当時、多くの日本人が戦争を支持し、兵士に声援を送った。この背景として、戦前の人々が共有した軍国主義的・帝国主義的な心情、国家主義的な思想教育などを指摘できるだろう。

しかし、これらだけではない。ひとたび戦争が始まると、人々の心に「戦うからには負けたくない、勝ちたい」「死んだ兵士たちの弔い合戦だ」といった心情が生まれる。戦いの原因の是非よりも「負けたくない、勝ちたい」という競争心が先に立つ。その結果、戦いが長引く。

ウクライナ戦争は出口が見えない状況だが、同様の心情が背景の一つとなっているだろう。

★★本サイトは横長の写真枠となっているため、本記事の掲載写真においては、本作品の上部を割愛した。

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