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ストーリー10 良いニュース?悪いニュース?

ヴィクトリア王女にマジックを披露したけれど…
横浜の老舗ホテルのディナーショーでのこと。トークセッションで「最近のニュースはありますか?」と質問され、「そういえば、スェーデンの皇太子、ビクトリア王女にマジックを……」と、うっかり答えてしまいました。

この「うっかり」というのは、ウソやホラという意味ではなく、「話すのに良いタイミングなのかなぁ」という、ちょっとの気の迷い。ボールルームのテーブルに並ぶ、豪華なシルバーや数々のワイングラス、ビックリするような値段のチケット料金に押されて「みんなが知らない、レアなニュースを報告しないと……」と、つい焦ってしまったのが正直なところです。

じつは、良いニュースって、報告するのが本当に難しい。そう思っています。

子供の頃なら、テストで100点をもらい、すぐに、みんなに自慢しても怒られない。むしろ、先生や家族からは、きっと褒めてもらえるはず。

でも、オトナになって、良いニュースを知らせると、場合によっては「自慢」や「ひけらかし」に見えてしまう。今なら「リア充自慢」というフレーズほうがわかりやすいかも……。SNSでは特にそう。

みんなに喜んでもらえると思っていたら、フォロワーにムカつかれた、というのは、ちまたでよくある話です。

だから「良いニュースはひけらかさず、悪いニュースは隠さずに言う」。
そう心がけてはいたのですが……。

言わないニュースは鍵に変わる
普段は、良いニュースを言わずに、「鍵」のように大切に持っておく。タイミングがくれば、その「鍵」で自分の知らない、新たな扉が開く。そんなことに気がついたのは、この仕事を始めてしばらくたってから。

たしか、童話「わらしべ長者」とか「ジャックと豆の木」もそんな話だった気もしますが……。すぐに消費したり、お金にかえてしまわないのが教訓なのかもしれません。

子供の頃、僕は自慢できることがあれば、すぐに自慢して有頂天になるタイプでした。お小遣いも、もらったらすぐに使ってしまう。だから、友達から「貯金をして自転車を買ったんだ!」なんて話を聞くと、「へぇ〜」と驚いちゃうくらい、無計画でダメな子供でした。

少年〜大人くらいの間に、「水戸黄門」とか「桃太郎侍」などのドラマを観て、「なるほどなぁ。素性は、すぐに『ひけらかさない』のが美学なんだ」と気がつきました。(←庶民的な学習で、すいません)。

切り札は最後まで使わないこと。だって、最初から黄門様が印籠を見せびらかして旅していたら、ただのイヤなジジイだし。「言わない」からカッコいい、そしてドラマチックだと学びました。

フィクションの中だけじゃありません。きっとリアルな人々からも「自慢」より「おくゆかしさ」のほうが、きっと好かれると思うのです。

どうやってブッキングされるのですか?
ディナーショーのあと、いろんな人から「どうやって、そんな席にブッキングされるんですか?」という質問をいただきました。

一言でいうなら「よくわからない」が本音なのですが、あえて説明するなら、「ひけらかさないこと」でしょうか。口ごもっている「良いニュース」が鍵になり、そんな扉が開いた……。コッソリそう思っています。(でも、ここで「ひけらかしている」かもしれないので、偉そうには言えませんが……)

その日は、接遇をなさる皇室の妃殿下、スエーデン王室の王女、そして女性侍従長、魅力的な三人を前にして、たくさん冷や汗をかきました。
じゃあ、マジックはどうだったか。じつは、(皇室の)妃殿下の敬称は「Imperial Highness」、(王室の)ビクトリア王女は「Royal Highness」または「Crown Princess」 、女性侍従長は「grand chamberlain」。そんな敬称を間違えずに言うので精一杯。普段から、そんな方々と過ごしている人は、自然に出るのだと想像しますが……。

そのときにもらった、大切な金色の鍵。それで開けた扉の話は、またいつか、どこかで話せたら……、と願っています。

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