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04 新しいエフェクトを発明するには?

フリアーのパズル

下の動画は、アメリカのマジシャン、ウインストン・フリアー(Winston Freer, 1910-1981)が考案した、組み方でサイズが変化したように見えるパズルです。(BGM(音)があります。ご注意ください)

フリアーは、1930年からアボット(Abbott's Magic)というマジックメーカーで働くかたわら、1948年にはトランプのエッジ(側面)にペンで書かれた文字が現れるトリックも発表しています。

エフェクトって何だろう?

マジックの本やトリックの説明書を読むと、まず冒頭に「現象」や「効果」という奇妙な言葉が登場し、マジックを始めたばかりの頃は違和感を感じていました。

上のパズルのトリックの解説書なら、きっと、こんなふうに始まるのかもしれまん。

【現象】マジシャンは額縁に入ったパズルを見せ、ピースを取り出してバラバラにします。ふたたびパズルを組むと、ピースが余ってしまいます。全体を額縁に入れると、余ったピースを除いてもピッタリなので、パズル全体のサイズが変わったわけではありません。それを、数回繰り返し、余るピースはどんどん増えていきますが、組み上がったパズルは額縁にはピッタリのサイズのままです。

続いて「【やり方】(タネ)」が説明してあることがほとんどです。この「現象」や「効果」という言葉が、英語の「effect」の直訳だったと気がついたは、しばらくしてからのことです。おそらく、「観客が見たり感じたりすること」とか「何が起きるのか?」という意味なのでしょうが、いきなり「現象」とか「効果」と、学術書のような表現がされていて、とまどいました。せめて、「お客さんが観る物理現象」くらいの表現であれば、まだ、わかりやすいかも……。それでもまだ、かた苦しいですが……。

このレッスンでは、それらを「エフェクト」と呼ぶことにします。その意味は、

○ そのトリックで、観客が見たり感じたりすること
○(観客にとって)どんなことが起きるのか?


としています。

というのも、トリックは「マジシャンが本当にやっていること」と「観客から見えること」が違う、2重構造になっているのがほとんど。文章にするときは、そんな言葉があると、わかりやすくなるからです。

(マジックの場合は、もうひとつのレイヤー(層)があります。トリックの創作とは少し別の話なので、ご興味のある方は「共感されるキャラ」などをご参考いただければ幸いです。)

まとめると、「観客が見えていること」がエフェクト。「観客が気にしない/見えない秘密の動き」を「メソッド、プリンシプル」と分けることができます。

トリックとして完成させるには、「プリンシプル」や「メソッド」を見つけ、「エフェクト」も見つける必要があります。

ただ、あまり難しく考えないでください。文字だけで読むと、トリックを創る作業や苦労が3倍になったよう感じるかもしれませんが、そうでもありません。

というのも、プリンシプルは今までのものを利用することもできますし、前回のレッスンで紹介したように、エフェクトが決まれば、使うメソッドも限られるからです。

トリックの創作で泥沼にはまりがちなのは、「プリンシプル」と「メソッド」、「エフェクト」の全部を同時にオリジナルで作ろうと、無理をしてしまうことや、創作するプロセスに慣れていないからです。

では、どうしたら、冒頭で紹介したパズルみたいに、ユニーク(他にはない、唯一無二)なエフェクトを作れるのでしょうか。

もし、上で紹介した動画「パズルのトリック」を創った、ウィンストン・フリアーがまだ生きていて、僕の隣に座っていたとしたら

「あのパズルのトリックって、どう創ったんですか?」

と質問もできるかもしれませんが、それはできません。しかし、その創作のヒントは、フリアーが創った、別のトリックとの共通点を見ると、想像できるような気がします。

その別のトリックとは……、

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