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たかが玉ねぎ、されど玉ねぎ。

仕事先のカフェで、毎日調理場に立っている。
スタッフはわたしと、ランチタイムに来てくれるアルバイトさん。時々店長。

店長は、店を切り盛りしている訳じゃなくて、どちらかといえばオーナー的存在。
時々店を仕切りに来てくれるけれど、基本的にはわたしに任せっきりだ。

ランチタイムに来てくれるアルバイトさんは二人いて、週に2、3回ずつ入っている。二人とも主婦で、フロアと、ちょっとした調理補助をお願いしている、
アルバイトのAさんは、きちんとしている。わたしが大雑把すぎると、一緒に入るたびに恥ずかしくなる。だけど、きちんとしすぎていることちょっと困る場面もある。

だいたいヒマな店なので、あんまりないことだけれど。お店が繁盛して、もうドンドンお料理を作っていかなきゃいけないとき。ココット皿を使って、とろけるチーズを図って使用するのだけれど、一回計りに使うと、洗わなきゃ気が済まないのだ。
「それは、計量カップとして使ってるだけだし、基本的にはキレイだから、たくさん作るときは毎回洗わなくても良いですよ」と、何回も言っている。彼女は「はい」と答えてくれる。何回も。だけど、絶対に洗わなきゃ気が済まない。一事が万事、この調子。お料理の提供はドンドン遅れてしまう。「ランチタイム、終わっちゃうよ」とお会計時にお客様にチクリと言われる始末。すみません、と頭を下げる。アルバイトのAさんも、申し訳なさそうだ。だけど、手順を変えてくれようとはしない。マイペース、といえばマイペースだ。
何度か、店長に怒られてもいた。
「もう少し、スピーディに進めて! 要領良く作業して!」
そしてわたしも怒られた。
「Aさんに、もう少し教育して!」
教育、と言われてもなー、と心の中でポチッとぼやく。Aさんは、別に仕事できない訳じゃないし。むしろ、わたしが出来てないところをフォローしてくれているような気もするし。
ま、店長が来た時だけ、うまくやり過ごしつつ、わたしとタッグを組んでやればいい。
ココット皿を洗う前に、わたしがチーズを入れちゃおう。わんこそばみたいに、「はいはい、ドンドン」入れちゃえばいいや。
そう決めた。

もう一人のアルバイトのBさんは、Aさんとは間逆で要領良くこなす。テキパキと仕事してくれるし、「そのお料理、わたし覚えたいです!」と積極的だ。
Bさんは、調理も補助というには申し訳ないほど色々とやってくれてありがたい。
けれど。要領良くこなせばこなす程、自己流になっているのだ。
「Bさん、今のやり方じゃ味変わっちゃうかも知れないから」
「Bさん、今の盛り付け方、ちょっと違うからね」
わたしは何回も、注意する。けれど
「あ、すみません! 気をつけます!」と言いながらも、また同じやり方をする。
わたしがひとつ、Bさんのやり方で、どうしても気になることがある。

それは玉ねぎだ。
わたしは、玉ねぎを切る時に、まず芽の部分と、根の部分を切り落とす。芽の部分というのは、ちびまる子ちゃんの永沢君の髪が生えているところだ。根の部分には、少し土がついているし、できればまな板に触れさせたくない。
二カ所を切り落としてから、半分にカットして皮をむく。そこから細かく刻んだり、調理に使用していく。
しかしBさんは、芽も根も切らない。まず全面の皮をむく。そして、半分にカットしてから芽と根の部分を切り落とすのだ。
はじめて目にしたとき、びっくりした。
だけど、玉ねぎの切り方に正解も不正解もないだろうとは思う。そこは、あまり細かく言わなくても良いだろう。
だけど、気になる。
「あ、またこの切り方してる」その玉ねぎを見かけるたびに、Bさんに対してマイナス評価をつけている自分がいた。
それに気付いたとき、なんだか自分はとても小さい人間だと馬鹿らしく感じた。
玉ねぎの切り方ひとつで、「あの人は、ダメね」なんて、何様のつもりだ。
気になるなら、全部、ひとりで仕事すればいい。
でも、そうじゃない。
協力して、仕事を進めた方がいい。それは分かりきったことだ。
それに、Aさんも、Bさんも、いい加減なわたしのやり方にウンザリしていることもあるだろう。
お互いさまなのだ。
ダメなところや、改善点はきちんと話さなきゃいけないけれど。個人の性格や性分なんかは、キャラクタとして理解しなきゃいけないなあと、思っている。
なかなか、難しいのだけれど。

#エッセイ
#エッセイモドキ


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