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『INSPIRE 陰陽師』【#まどか観劇記録2020 33/60】

音楽LIVEのコンテンツを舞台に落とし込む

主演の大沢たかおさんをはじめとして、演技に定評のあるキャストが集まっているという印象だったので、芝居を推してくるかと思いきや、今まで舞台ではあまり使われていなかった技術などを使って新しい表現をしてきたなという印象でした。

客席を包括するような音響環境やレーザー光線を使った特殊効果など、音楽LIVEでは見慣れつつも舞台ではあまり使われていなかった手法を舞台に取り込むという挑戦をしているように感じました。

確かに、音楽LIVEとお芝居の舞台作品は、時に同じ会場のステージを使うことがあるにも関わらず、その手法は全く別の区分されていたものだったなと、この作品を見て改めて考えるなどしました。

そういった点でこの作品は新しかったし、しかもそれらを使うのにぴったりなテーマを扱っていました。

陰陽師安倍晴明。

歴史の教科書に大々的に載っているわけでもないのに、日本人の多くが知っている平安時代のヒーロー的存在。印を結ぶ、五芒星といった陰陽道の要素は、舞台やエンタメといった業界とも親和性が高く、今までも多く取り上げられてきました。

しかし、舞台は観客の目の前でリアルタイムに表現されるため、一種魔法のようなリアルな肉体で表現するには難しい要素もありましたが、それをレーザー光線を使って表現するという、この発想が素晴らしかったです。レーザー光線で五芒星が描き出された時に「なるほど!」と思ったものです。

同時に、お金のかかった舞台だなとも思いました。笑
今はもう少し安くなっているのかもしれませんが、音楽LIVEでレーザーを使いたかったら1回数十万という話を聞いていたので、一体どれくらい?とこっそり思ってしまったり。そのうえ上がり下がりする舞台美術のセットもかなり大掛かりで、この作品が6日間しか上演されなかった希少性も相まって驚きでした。


多種な要素をまとめる演出力

演出は⼭⽥淳也さんですが、当然演出の要素が多ければ多いほどまとめるのは大変なことでしょう。
一般的な舞台でさえ演出家の考えることはたくさんあります。それに今回は、客席に配置した音響装置、レーザー、プロジェクションマッピング、ホログラム的な技術など、通常ではあまり見ない要素も加わり、更にはストーリーも90分ではとても納まるまいという盛りだくさんな内容でした。よくぞこれをまとめたなという率直な感想です。

やることはいくらでも増えていくのに、実際の舞台を使って準備できる時間は少なくて、しかも直前だけということが多い中、世の演出家の皆さんはどれだけの想像力を使ってどうやったら様々な作品が完成しているのかと感嘆しきりです。

今回でいうとプロジェクションマッピングの合わせ方やスクリーンの透け方など、想像で作れるものなのですかね…。すごい世界。


衣装がいい

個人的な好みからの感想で申し訳ないのですが、丈の長い衣装が多かったのがとても好きでした。背の高い男性が揃って丈の長い衣装を着られているのよくありませんか?翻る裾が美しいのです。

また、平安時代と現代をリンクさせるという点でも衣装の色味や雰囲気によって後方の席にもわかりやすく伝わったと思います。また、白と黒の早替えの見事さなど、衣装の役割をうまく活かした作品だったと思います。

歌も、ダンスも、ライブも、デジタルな要素も、盛り沢山だった『INSPIRE 陰陽師』。たくさんの要素を盛り込めたのは盤石のお芝居あってのことだったのかなとも思います。

どうか、この作品で清明が闇を払ったように、今の暗い状況も晴れますように。


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年をまたぐ瞬間の6日間だけという「幻の6日間」(公式より)でしたが、今後DVDが発売されるそうです。従来のお芝居から拡張された今作品が映像としてどう見えてくるのかは興味がわきます。


おすすめの作品などを教えていただけるととてもうれしいです。