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台風時のイベント開催判断について思ったこと。

台風のせいでここのところずっとモヤモヤしていたる。
大型台風の時に注意喚起のツイートと共にかなりの数投稿されるのがイベントの開催有無についての悲喜こもごものツイート。
イベントが中止になって悲しい。開催はされるけれど自分は行けなくて悲しい。私自身も楽しみにしていたものが中止になった悲しみは知っているからそれらについては、そうだよね、辛いよね、と思って見ている。(なんなら私も悲しみの言葉はこぼしてしまう)

けれど自分自身が事態を受け止めるための感情表現を越えて訳知り顔で何か言う人々についてはどうもモヤモヤを抱えてしまっている。
例えば、「ほかのイベントは中止しているのに開催なんて何を考えているんだ」とか「決定が遅い」とか「中止にするのが賢明な判断だね」とか。上から目線に感じられる勝手な評価にとてもイライラしている自分がいた。
あと、残念だという気持ちを自分だけでとどめておけずに他者の共感を求める人(ましてや主催者に残念ですとわざわざ言いに行く人)、どうかやめてくれ。自分だけがつらいと思っているの?自分の感情は他者を巻き込まずに自分だけで処理しようよ。

物事を一面的にしか見れない人が多いなあということにいら立っていたのだと思う。

訳知り顔で「中止すべきだ」「決定は急げ」という人。
そのイベントにいくらの時間と手間とお金がかかっているかご存知ですか?
中止にした時の責任、開催を決めた時の責任、覚悟、どれほどのものかご存知ですか?
明らかに知らないだろう人が多く糾弾している姿を見るに一面的だと思う。
自分のことしか考えていない。
なんなら、自分自身が参加できないということが決まった途端、なんで中止にしないんだと事細かに他の事例の引用をし始める人までいる。それは醜い嫉妬から出た行動ではないのか。

あまりの憤りに前置きが多分に長くなりましたが、台風の時にイベント開催者が何を考えてどう判断しなければいけないかを書きたいと思います。
これを読んで少しでも人の痛みを想像できる人が増えてくれたら、なんて勝手な願いを込めつつ。。。

一部の限られた範囲しか知らないのでこういうこともある、実際にはこうだなんてこともあればぜひ教えてください。

まず最初に、台風という災害の特異性として事前に予測できることがあげられると思うのです。事前に予測できて対策が取れるから(でもその予測は100%確実ではない)みんな迷って悩んで様々な可能性を考えるのです。
じゃあそのいろんなって何?ということを考えていきたいと思います。

台風開催note2

結論としては現時点での私の知識はこの表にまとめたことがすべてです。
一つずつ順に説明したいと思います。

安全面(施設)

実際の被害が最近なので想像に難くないと思いますが、台風による建物被害の主だったものは下記でしょうか。
① ガラスなど開口部の破損
② 屋根や壁といった構造体そのものの破損
③ 浸水などの水被害

① と②は利用者の安全に直接かかわるもの、③も利用者の安全にかかわりますがどちらかというと機材や設備の故障などに関わるものという分け方ができます。
では、実際に被害が生じた場合に責任の所在はどうなるのか。会場の賃貸契約にもよりますが、おそらく大抵の場合は、施設側の明らかな不備(通常メンテナンスが不足していて破損をそのままにしているなど)がない限り、イベント開催中の事故についての責任はイベント開催者側の責任となると思います。
機材等についてもたとえば地下など浸水の可能性がある場所で対策を講じずに台風接近時にイベントを行う場合は、開催者側の責任になるでしょう。なぜなら台風被害というのは地震などほかの災害と違って前もって対策が可能だからです。状況を予測したうえで行動しないことには責任の所在についての意見は言えません。これが上層階の雨漏りによる機材トラブルであればメンテナンス不備として施設側の責任になるでしょう。

安全面(交通)

交通面の安全性の確保については、とても判断が難しいものだと思います。なぜなら、観客は日本全国、または世界中からそのイベントに向かってきていると考えられるからです。遠い地方の交通が止まっていたからといってイベントを中止しますか?しませんよね。しかしどこからが遠くでどこからが近いのか、それは一概に判断できないものです。
ざっくりですがインターネットで確認できる範囲を調べたところ会場最寄り駅にアクセスする路線が止まった場合にはイベント中止というケースが多かったように思います。
2019年8月に台風10号が関西に上陸しましたが、ほとんど中止にしないと有名な宝塚は阪急電車が“運休の可能性がある”という状況で公演を決行しました。結果として阪神電車は止まりませんでしたし、トップの退団公演という側面もあり、開催したのだと思います。もし、阪急電車が止まることが確実であれば開催はされなかったかもしれません。これは台風19号の上陸した2019年10月の公演時(それも千秋楽の前日という大事な大事な日…!)を中止したことでも予想ができます。この日は都内の鉄道はJR、私鉄、メトロのほとんどが前日までに運休を発表。都内で動ける人はまれだったのではないかという厳戒態勢でさすがの宝塚も中止をせざるを得なかった状況でした。ちなみに、これまたなかなか休園しないことで有名なディズニーリゾートもこの日ばかりは休園でした。

安全面について考えると、もちろん中止した方が安全ですし、これは観客だけでなく、開催する側としてもスタッフや演者などの人員の安全確保が必要となり、開催と中止とどちらがよいか答えは明白です。
ただし、この後に述べる金銭的な負担、機会損失という点を考慮するとおいそれと中止にすることは出来かねるのです。

金銭面

予定し、準備していたイベントが中止になった場合に、本来あるべきだったお金の流れが全く変わってしまいます。チケットの払い戻し(+送料)、会場使用料、出演者&スタッフばど関係者のギャラ、宣伝費、各種製作費、輸送費などすべてが開催者の負債となります。すでに使ってしまったお金の分の回収は出来ず、チケット代は払い戻さなければならない。中止になった対応で人件費もかさみます。イベント保険などは存在していますが、そもそもの保険料がまとまった金額になることと、チケットの売り上げが入る前に保険料を払わなければいけないことも多いため、ある程度の財力のあるイベントしか入ることができないのが現状です。しかし、保険がなければ中止になった負債をそのまま被ることになり、、、規模の小さな団体としては死活問題になりかねません。。。

機会損失

安全面を確保しなければならない。金銭面の負担をなるべく少なくしたい。そんな時に考えること、それは“中止”ではなく“延期”という選択肢です。
延期にすれば会場使用料は重複して払わなければいけないものの(人件費も少し)、すべてが無になることはなく、そしてそこまで積み上げた関係者の努力や時間や気持ちなども報われるというものですが、、、ですが、、、ひとつのイベントを成立させるために関わる人達というのは想像以上に多いものです。その人々が再び日時を合わせて集まることができる、そんな簡単には行きません。何か月も前から調整してやっと決まっていたもの。会場を常設で持っていたり、同じイベントを何度も行っていたり、といった環境がそろわないことにはなかなか再演は難しい

安全面の確保は大事だけれど、ほかにも公演に関するもの、そしてその団体の今後を左右する要因も含んでいるため、公演の中止・延期に関する判断はとても繊細です。強行してけが人が出て評判が下がるということも大いにありうる。けれど、できるならば安全を最大限に確保して公演をしたいというのが(そして辿り着ける観客からすれば可能であれば見たい…!)というのが本音ではないでしょうか。
台風というのは進路がある程度予想できるものの、スピードや軌道のずれも生じるものです。なるべく早く結論をと思う気持ちもわかりますが、様々な面を総合した判断が求められる状況では、もし少しでも状況に変化があれば、という祈りがあるものまた事実。中止を悲しむなとは言いません。でもせめて、物事にはいろんな側面があることに想像を巡らせてほしい。想像して、一方的に攻めたり、感情をぶつけることはやめませんか。みんな苦しいし悲しい、悔しいんです。

ここまで勢いに任せて3000字も書いてしまいましたが、私自身作品を作っている側ではありません。それでも少し想像して少し調べたらこれくらいのことはわかるんです。どうか、誰も悪くない状況で誰かを責めたり、悲しませたりする言葉が減りますように。

最後に。
苦しい、悲しい、悔しい。
それを私はこういう形での表現をしてしまいましたが、純粋に悔しい気持ちを透明な言葉で綴った人がいました。
劇団おぼんろ主宰の末原拓馬さんのブログです。
読んでみてください。
すごくピュアな気持ちが書いてあって誰も嫌な気持ちにさせなくて、私も今回のモヤモヤをこういう風に表現できたらよかった。

今回悔しい気持ちをした皆様。
それぞれの再演、再会、新しい未来を信じて、長生きしましょう。

※イベントだ公演だなんて言えない状況の方々には申し訳ありません。
少しでも早く皆様に普通の日々が戻ることを祈っています。

おすすめの作品などを教えていただけるととてもうれしいです。