④レアルマドリードvsセルタ レビュー

久しぶりの快勝。

マドリーは4-3-3、セルタは5-3-2。

 マドリーは4-3-1-2というよりは4-3-3。ブラヒムの0トップという形が近い。メンバーはターンオーバー。ポイントはクロースに代わりに抜擢されたモドリッチ。マドリーはクロースがいる・いないで別チームになるので、この変更が良い方向に作用するかどうか。

 セルタは、普段4-4-2のシステムだがこの日は5バックを採用。これが良い方向に作用するかどうか。



 試合開始。

 予想通り、保持のマドリーと非保持のセルタという構図になった。

 マドリーの保持はかなり右寄り。モドリッチが右落ちしてバスケスがワイド、バルベルデとロドリゴはライン間という位置関係だった。

 一方のセルタだが、やはりCBにはプレスをかけてこない。2トップはアンカーのカマヴィンガのコースを塞ぎながら、サイドに出た時プレスをかける役とアンカーを消す役に分かれる。サイドでは基本的に数的優位で対応したいのでベルトランも積極的に流れて、モドリッチを含めても5対4になるようにする。そんな意識が高かった。


 結果から言うと、マドリー優勢で試合は進んだ。何故だろうか。5-3-2を用いてマドリーに挑んできたチームで記憶に新しいセビージャと比較して考えてみる。

 セビージャもセルタ同様、配球役には2トップの片方をぶつけて数的優位をつくるやり方をとっていた。しかし、結果的にマドリーはなかなか攻め込めず、ボールを持たされる展開が続いた。セビージャ戦とセルタ戦では明らかに違うものがある。

それはカマヴィンガの存在である。

 セビージャ戦では累積で出場停止だったカマヴィンガ。そのポジションはチュアメニが務めていた。その時のチュアメニは右の配球役として右落ちする機会が多かった。プラス、イサークロメロがかなり意識してチュアメニへのコースを切っていたので、左サイドにある時チュアメニがボールに関わることはあまりなかった。

 一方のカマヴィンガは相手のファーストラインとセカンドラインのライン間に立つ。チュアメニとは違ってボールに近い位置にいるので誰かが見る必要がある。セビージャ戦同様に考えるなら、アスパスがカマヴィンガまでスライドする必要がある。しかし、アスパスはその辺の意識が低い。というより、攻撃のために体力を温存しているという言い方が正しいか。逆サイドにあるときのストランドラーセンも似たような感じ。とにかく、カマヴィンガへの寄せが甘いので、カマヴィンガにパスが通ってしまう。カマヴィンガへパスが通れば反転して逆サイドへサイドチェンジできる。


 こういった形でカマヴィンガを捕まえられないことで何度もサイドチェンジをさせられ、その度にスライドさせられていた。そうなると、ベルトランやストランドラーセンの中央組はスライドが間に合わなくなり、5対4をつくるどころか3対4をつくられてしまうようになった。


 つまり、サイドチェンジ対策が甘かったことがセルタが上手く行かなかった大きな原因である。


 5-3-2は後ろに人数を割く代わりに中盤の人数を減らしたシステムである。そのため、サイドチェンジを繰り返されると中盤がかなり走らされる。5-3-2はその辺もしっかりと対策しないといけないシステムだが、使い慣れていないセルタ。使い慣れているセビージャと比べて練度の差がでた形となった。


 試合展開としては、何度も押し込むことでコーナーキックのチャンスがたくさん得られた。それをしっかりと決め切って、20分に先制することに成功。しかし、それ以降は得点できず、そのまま前半終了。1-0で折り返すこととなった。


 最初に触れたモドリッチの抜擢だが、守備面で主に違いがでている。特にハイプレスの時。ハイプレスをかけるときモドリッチはアンカーのベルトランまで押し出してくれるので、はめることができる。クロースはさぼっていかなかったり、遅れていってファールになったりするところでもモドリッチはマイボールにできる。今後、ハイプレスをかけたいときはクロースではなくモドリッチを起用してほしい。まぁしないと思うけど。


 カマヴィンガの立ち位置というのはマドリーが意図したものかどうかは分からないが、ここまで思い通りに試合を運べているマドリー。ただ、後ろに人数を割かれている分裏抜けは期待できない。バイタルからのミドルはチャンスになりそうだが難易度が高い。ゴールまでもっていくのは難しそうだという印象である。




後半開始。

 後半、得点がマストなセルタだがシステムの変更はなし。5-3-2のままだった。

 セルタは、カマヴィンガ周辺を修正。モドリッチにボールが渡ったとき、アスパスとストランドラーセンの2人体制でカマヴィンガをマーク。そしてバルベルデにはベルトランがスライド。

 つまり、やり方は変えず役割をはっきりさせたということである。カマヴィンガ経由のサイドチェンジさえなければ、ベルトランのスライドは間に合うという判断だろうか。

 一方のマドリーは変更なし。上手くいっていた前半と同じ攻め方で挑む。
 
 結果は、セルタはこの修正で上手く守れるようになった。狙い通り、素早いサイドチェンジを封じたことで、スライドの隙をつかれることは少なくはなった。

 セルタはボールを持てる時間が増えたことで、ようやくWBをワイドに置き厚みのある攻撃を繰り出せるようになってきた。しかし、シュートは打てない。打てる状態までもっていけない。何故か。理由は単純で球際で負けすぎである。奪われ過ぎである。息が合わない、パスミス、トラップミスなどなど。

 セルタはミスで攻撃の機会を失うどころか、WBが高い位置にいるのでカウンターをくらうはめに。マドリーはビルドアップよりもカウンターを狙った方がチャンスになった。

 セルタは人を代えてもシステムは変えない。後ろの3枚はカウンター対策で残しているのだろうが、その分前が手薄になる。人数が足りないので攻撃が手詰まりになる。


 うまくいかないセルタに対し、したたかに試合を運ぶマドリー。79分にはCKからリュディガー。88分にはOG。試合終了間際にはギュレルが移籍後初ゴールでダメ押し弾。終わってみれば4-0の快勝だった。




 快勝だやったーで終わっても良かったが、今回はマドリーのプレスの問題点について触れたい。セルタのミスに助けられただけで、結構酷い守備をしていた。特にハイプレス。

 
 上の図は51分のセルタのビルドアップである。ウナイヌネスからマンキージョへサイドチェンジされたシーン。ボールはマンキージョへ渡った。モドリッチのスライドが間に合わず、ベルトランが中央でフリーになっている。



 この時、ブラヒムはマンキージョへプレスをかけ、カマヴィンガはデラトーレをマーク。そのため、中央には誰もいない状態になり、中央のアスパスまでボールが渡ることになってしまった。



 例えば、ブラヒムがマンキージョまでいかずデラトーレをマークし、カマヴィンガがベルトランを見れる立ち位置にいたらどうだろうか。そしたらモドリッチが間に合ってなくてもカマヴィンガが中央にいるのでパスを出されることはない。マンキージョはフリーにしてしまうが、中央を空けてしまうよりはマシ。このように対応できていれば、押し返せたのではないだろうか。

 この場面、カマヴィンガがブラヒムにいかないように指示してほしい。その前に、カマヴィンガへ指示を出すようにリュディガーかナチョが指示してほしい。最近のマドリーの守備がはまらないのは、プレス強度の低さだと思っていたが、守備に指揮者がいないことだとこのシーンを見て思った。アラバが戻るまでこの守備は続くのだろうか。

 試合の方は、4-0でジローナ戦以来の快勝となった。さらにギュレルの初ゴールも見れたので結果だけでいうと満足である。しかし、プレスは相変わらずはまらないし、ロドリゴにあたりが来ない。不安要素はぬぐい切れていないのが個人的な感想である。


 次はアウェーオサスナ戦。ベリンガムもまだ戻れないので厳しい試合になりそうである。個人的にMOMはモドリッチなので、次も先発で見られないかな。

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