➂レアルマドリードvsライプツィヒ レビュー

122周年おめでとうございます。


マドリーは4-4-1-1、ライプツィヒは4-4-2。
 ライプツィヒはシマカンが累積、クロスターマンが怪我のため欠場。ヘンリヒスを右サイドバックに、CBにはルケバを起用してきた。
 一方のマドリーだが、まさかの4-4-1-1。4-3-3というよりは4-4-1-1のほうが近いと思う。このシステムチェンジにはどんな意図が隠されているのだろうか。アンチェロッティの奇策は外れがちなので不安である。


 試合開始。まずは、ライプツィヒの攻撃から。

 得点がマストなライプツィヒだが、狙いはサイドの奥深くのスペース。図の赤い部分である。使うのは両サイドバックのヘンリヒスとラウム。このスペースを広げるために、SHのシャビシモンズとダニオルモはハーフバイタルでボールを引き出す動きをする。これによってメンディとカルバハルをつりだして裏にスペースをつくりだしそこにSBを走らせる。こういった狙いをもって挑んできた。

 それに対するマドリーは4-4-1のブロックを形成。ヴィニシウスは前残りしているor連動していないハイプレスをかけているので頭数には入れられない。ローブロックとまではいかないが押し込まれたらベリンガムも低い位置まで下がって守備させる。目標は無失点。


試合はライプツィヒペースで進んだ。特に大きかったのはシャビシモンズの存在。狭いスペースでも一瞬の隙を与えると仕事をされてしまうためタイトにマークする必要がある。シャビシモンズはハーフバイタルのライン間に立っているのでカルバハルかチュアメニかバルベルデがマークするのだが、カルバハルを押し出すと裏のスペースを空けてしまうしチュアメニがずれると中央のシェシュコやオペンダへのパスコースが開いてしまう。シャビシモンズへの対応にマドリーはかなり手を焼いていた。チャンスを何度もつくられた。

 だが、それでもマドリーを崩しきれない。理由は単純で、フィニッシュワークの精度である。バイタルで前を向きシュートを放つも枠外、サイドでフリーがクロスをあげるが跳ね返されるなど、精度がたりていない。マドリーは、ゴールから離れた位置ならあまりタイトにいかない、バイタルでも食いつき過ぎない守備をしていたのでライプツィヒはゴール付近以外では割と自由にプレーできた。それでもゴールを奪わせていないという点では、マドリーの想定通りと言っていいかもしれない。

しかし、マドリーの守備には致命的な欠陥があって、ベリンガムのところが数的不利である。したがって、ハイプレスではめにいくときベリンガムが片方のボランチをマークすると片方がフリーになってしまうため、はまらない。バルベルデやカマヴィンガが絞ってきてマークをする時もあったが、そうなるとCBを使ってサイドチェンジされた時にカルバハルやメンディが数的不利になる。そんな感じでどうしてもプレスがはまらない。ボールを奪うという点ではマドリーは想定通りにいかなかった。


まとめると、ライプツィヒのミスに助けられたマドリーの守備だった。


 次はライプツィヒの守備である。ライプツィヒは常にハイプレスというよりは基本ミドルブロックで構えて、いけそうなタイミングでスイッチを入れてハイプレスという形だった。ミドルブロックは4-2-4のような形で、ブロック時はシャビシモンズとダニオルモが相手SBへプレスをかけ、ハイプレスに切り替わるとラウムとヘンリヒスが相手SBまでとびでてくる。

 対するマドリーのビルドアップだが、人選からわかるようにかなり後ろに重たい形をとった。なんせ中盤は合わせて5人、FW登録はヴィニシウス1人だけである。つまり、「ライプツィヒはハイプレスでボールを奪いに来ると思うからビルドアップの人数を増やして奪われないようにしよう作戦」である。

 試合はマドリーの思惑通り、ライプツィヒはボールを奪いたいが上手くプレスがかけられない状態となった。カマヴィンガ、ベリンガム、バルベルデがライン間でボールを受けるため、ライプツィヒの前線は後ろを意識せざるを得ない。そうなると前に強くいけない。また、ダニオルモとシャビシモンズはサイドで2対1をつくられているのでボールが奪えない。ラウムがカルバハルまでとびだせばバルベルデがその裏を狙えるし、ヘンリヒスのそばにはヴィニシウスがいる。そんな感じである。

 マドリーはビルドアップに人数をかけた分、ゴールに迫るような攻撃はできなかった。だが、1stlegで勝利しているマドリーはそれでよかった。まあよくはないが、焦る必要はないという感じ。


 そして前半終了。マドリーが試合を塩漬けにした。

 前半の感想だが、この内容でこの結果なら上出来だと思う。実際に「ハイプレスをはめられて失点」はしていないので作戦成功といえば成功。だがそれにしてもショートカウンターをくらいすぎ。ネガトラが甘すぎる。このままだといずれ押し切られるので何か手をうつ必要がある。

 後半、マドリーはカマヴィンガに代えてロドリゴを投入。試合後アンチェロッティは懲罰交代ではないと語っていたので攻撃での活性化でも狙ったのだろうか。ライプツィヒは交代なし。


 後半は開始からずっとライプツィヒペース。それもそのはずで、マドリーのクオリティが明らかに下がっている。特に守備がやばすぎる。上の図は守備の問題点を列挙したもの。まず、単純にロドリゴとヴィニシウスはハイプレスが下手。コース切りが甘すぎて切っているはずのコースにパスを通されまくる。あと、全体的に寄せが甘すぎる。球際以前の問題。奪いきれなくてもせめて自由にはさせてはいけない。

 細かいところはもっとあるのだが、一番の問題点は全く連動できていないこと。ロドリゴとヴィニシウスは後ろが準備できていないのにハイプレスをかけようとする。もっとコントロールできないのか。

 色々書いてあるが、大きく分けると「連動していないこと」と「寄せが甘いこと」の二点が今回の守備の問題点である。前半の方がましだったのは、カマヴィンガとベリンガムのサイドの守備の差だと思う。ベリンガムは逆サイドにボールがあるときあまり戻ってこない。

 一応ライプツィヒの守備に関しても触れると、クロースに対してハイダラ、チュアメニに対してシュラーガーを押し上げるようになり、前半以上にハイプレスをかけるようになった。ライプツィヒが前がかりになったことでひっくり返す機会も増えたのだが、なんか今日は精度に欠く。パスミスでチャンスをふいにする。


 こんな感じでお粗末な守備を披露したマドリーだが、なんと先制点を奪うことに成功。流れ関係なくベリンガムとヴィニシウスの二人で完結させてしまった。マドリディズモ発動である。

 しかし、ライプツィヒもすぐに追いつく。セットプレーから、跳ね返ったボールをラウムがクロスをあげ、オルバンが頭で合わせた。

 もっと勢いづきたいライプツィヒは76分、オペンダに代えてポールセンを投入。同時にマドリーも選手交代。クロースに代えてモドリッチ。クローザー投入。

 84分、ベリンガムに代えてホセル。シュラーガーに代えてエルマス。シェシュコに代えてバウムガルトナー。

 89分、ハイダラに代わってカンプル。

 そしてそのまま試合終了。結果は1-1。二戦合計2-1のマドリーが準々決勝へ駒を進めた。個人的MOTMはバルベルデ。消去法。


 ライプツィヒは交代で勢いづけなかったのが痛かった。マドリーが4-4-2から4-5-1にしたことで中盤に人が増えたのでボールを引き出しづらくなった。それでもロングボールからチャンスを何度もつくっていたのはさすがと言わざるを得ない。


 今回の試合は前半の奇策以上にいつもの4-4-2ブロックの粗さが気になった。アンチェロッティの失敗は前半よりも後半。

 
 そしてこの試合で分かったことは、マドリーにハイプレスは無理だということ。全体的に守備に対する知性が足りない。アンチェロッティは選手の最大値を引き出すのは得意だが、哲学を植え付けるようなことはできない。できないというよりしないというほうが近いかもしれない。今のマドリーに余計な事をさせるよりは選手の自由にさせる方が上手くいくということである。実際にそうだと自分も思う。しかし、それならハイプレスはなおさら無理である。引き込んでカウンターのほうが理に適っている。

 次はホームでセルタ戦。ベリンガムが出場停止。今回の失敗からアンチェロッティは何を学んだのだろうか。期待が高まる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?