やりたいことがなくても、生きているだけでいいと心から思えるようになれた日。

私には、二つの命がある。と、いうことにしている。

肉体に宿る有限の命と、精神に宿る無限の命。

私の命には、二つの意味があるけれど、二つ目の命はないし、猫又でもない。死んでも生き返らない。たぶん。


有限の命は、自我に守られている。

自我は、とにかく私好き。何の取り柄もない私を溺愛している。
脆弱な私では手に届かない理想の人生を歩んでいるように、現実を捻じ曲げてまで、私の夢を叶え、命を守ろうとする。

手段を選ばないので、現実に問題が量産されるけれど、守ろうとして自我が生み出している敵なので、自我が処理できる範囲には収まっている。

安心してください。予定調和です。

自我の手に余るトラブルに見舞われたら、大切な私が死んでしまう。それは、ない。絶対に。死んだら、自我も消えてしまうから。

私たちは、一蓮托生。自我は最強のSPであり、自身の存在を賭けて、死に物狂いで私の命を守っている。なので、死ぬまで安泰なんです。

有限の命は、死ぬまで最強なんです。

無限の命は、愛そのもの。

愛は、今であり、全てがある状態。
自我と違って、対極の価値に縛られないので、味方もいないけれど、敵もいない。誰もいない。自分さえいない。だから、無敵。

無限の命は、無敵なんです。


死ぬまで最強の有限の命も、無敵な無限の命も、どちらの命を生きても、私は安泰です。だから、どっちでも大丈夫なんです。

選ぶことのできる全ての選択は、どれも命の安泰に続いている。

現実は辛くても、苦しくても、理不尽で不条理で、全てを失ったように感じたとしても、それが安心へのルート。たぶん。

ただ、無条件で全ての選択を肯定するのは、違う気がする。無限の命によって可能になる選択は、危ういことも多い。有限という縛りがなくなってるから。

ノールールのデスマッチでは、いくら最強の自我でも、守りきれない。最強なのは、死ぬまで。生死の境界は、超えられない。

空を飛べるとか、返せると思い込んで借金をしたりする選択は、有限の領域を超えている。選べるけれど、違う。愛であり続けることができるなら、選択肢そのものが浮かばないのだろうけれど、神様じゃないからね。

生きている限り、無限の領域には行けない。けれど、自我が信じているより、有限の領域は広い。見極めることはできなくても、私には最強の味方がいる。自我は裏切らない。バックアップは任せて、世界に目を向けてみよっか?


死後の世界のことは、わからない。

けれど、二つの命があるなら、有限の命が尽きたら、無限の命に切り替わるはず。命として続くなら、どっちでもいいじゃん。

と、思うのは、たぶん、罠。

無限の命に、自我はない。
だからこそ、愛でいられるのだけれど、価値観によるジャッジがないということは、自分を自覚することができないということ。

自分を自分として、感じることも、考えることも、名づけることも、呼ぶこともできない。肉体がなく、そこに宿る自我もなければ、無自覚が存在しているだけ。

それが、愛。
だとしたら、愛である限り、愛は自覚できない。

存在している愛がどれほど素晴らしいものであるか。今の私は知っているけれど、愛として存在している無限の命は、知ることはできない。
いいも悪いもなく、ただ、存在しているだけだから。

愛は、愛という名もなく、存在するもの。


愛は、愛であることを自覚できない。
愛を知ることができるのは、愛ではないもの。
自我は、愛ではない。故に、愛を知るもの。

ということかな。

有限の命と共に失われる自我を通さないと、愛を知ることはできない。感じることも、自覚することも。

私たちが人間だから、人間以外の神性を知ることができる。
知ることはできるけれど、神にはなれない。
人でありながら、愛を体現することはできるかもしれない。
けれど、それを自覚することはできない。

自覚できる愛は、たぶん、愛ではない。
愛になろうとしても、愛にはなれない。
私たちは、神になろうとしなくていい。

人間でいればいい。生きていればいい。
気付かぬうちに、愛は体現されている。

どれほど価値がないと思えても、無自覚に存在する私は、愛かもしれない。なら、生きていてもいいのかな。

生きていても何もないけれど、自覚はなくても愛を体現しているみたいだし、他の人の愛は、目にすることができる。

それかな。
自分の愛は自覚できないけれど、他者の愛は感じることができる。

視界に映る人々が、無自覚に体現する愛を、目にすること。感じること。知ること。

この世界にある愛を眺めること。
それがしたくて、生きてきたのかな。

私の生きる目的って、その程度でいいのかな?

生きる理由が、傍観とは…
少し、笑える。

 fumori 



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