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心は今を奏でている。

心は今を奏でている。

心を開くと、風が吹き抜けていく。

優しく、激しく、止むことのない風は、
張り巡らされた琴線を揺らし、
心のあちらこちらで音を鳴らす。

遠くから響く鐘の音のように
お隣のベランダの風鈴のように
その音が止めば、他の音が響き始める。

止んだと思った風も、向こうではまだ吹いている。
鳴り止むことのない響きが、心から溢れている。


風が強いと、心のあちこちで音が鳴る。

耳を塞がないではいられない騒音。
不協和音の気持ち悪さ。

だから、扉を閉めたんだ。

琴線ばかりの心は騒がしい。
音の鳴らない心は、とても静かだ。

風のない心は、ただ沈んでゆく。

過去に囚われ、再生が始まる。

幸せに浸ることも、
不幸に打ちひしがれることもできる。

けれど、今を感じられない心は、
過去の演奏を繰り返すだけ。

風のない心は、過去しか奏でる事ができない。


風を弱める方法は、扉を閉めるだけじゃない。

細長いトンネルみたいな風穴だから、
ちょっとした風でも音が鳴るんだよ。

天井のない広い空間にしちゃえばいい。

なんの制限もない心なら、
風は自由に吹き抜けるだけ。

音はただ届くもの。

手に入れることも、
手放すこともできないもの。

今しか体験することができず、
思い出すことしかできないもの。

鳴り止むことのない心は、今を奏でている。


感情は、生モノなんだ。

取っておいたら、腐るだけ。
食べたら、味わう。
そのためにあるんだよ。

味わったら、返すだけ。

自分のものだと握り締めたりせず、
嫌だからと逃げ出したりせず、
ただ聞いて、どう感じるか。
そのためのもの。

聞きたい音を奏でようとしなくていい。
好きでもない琴線を張らなくていい。
うるさくても、風を調整しなくていい。

何もしないで、草むらに寝転んで、
木漏れ日を浴びながら、青空を眺めて、
鳴り止まない今を聞いているだけ。

どう感じるかは、勝手に生み出されるもの。
それが、心の働き。

生み出されたら感情は、
風に乗り、音と共に運ばれてゆく。
帰る場所へと。

一周回って、生み出された場所に戻って来る。
現実という姿を纏って。

fumori

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