今はもう傷跡すらない過去に胸を痛めている。
もう大丈夫?
そんな訳ない。
押さえつけてたのは、
血が溢れていたから。
風に触れただけで、傷口が痛んだから。
今でもまだ、こんなにも生々しい。
手を離すことなんてできない。
掌に覆われた痛みは、あの時の鮮度のまま。
それが、幻想?
傷はもう癒えた?
血は止まり、膿もカサブタも消え、
何事もなかったような綺麗な皮膚があるの?
こんなにも痛いのに…
そうだろうか?
傷ついた時のまま、ずっと痛い。
そんな傷があるだろうか?
痛かったのは、過去の記憶。
なら、今は?
痛みを感じるのは、
意識が過去にある時だけ。
いたわって欲しかったのは、過去の自分。
気づいて欲しかったのは、
傷よりも見捨てられた寂しさ。
無関心よりも、責められた方がマシだった?
おつかれ。
過去に生きていたのは、
前を向けなかったから。
現実を否定していたから。
現実と自分が着地しないまま
描いた未来は、わりと裏切る。
着地していても裏切られることはあるだろうが、
まあまあ許せる気がする。
現実を欺かないと決めているから。
思い通りにならなくても、
許すしかないのかもしれない。
心の奥底で、今を拒絶するから、
過去の痛みに苛まれ、未来に裏切られる。
人生を悔いるしか、やることがない。
それは、嫌だな。
過去から卒業したい。
あるはずのない痛みで苦しむのは、もう嫌だ。
リアルな痛みは、過去が生み出している。
心には時がないから、錯覚してしまう。
一瞬の痛みで、過去にトリップする。
痛みに捕まったら、
過去に生きていることに気づけない。
今はもう傷跡すらない過去に胸を痛めている。
おつかれ。
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