ボカロリスナー歴10余年にして初めてボカロ曲のCDを購入した話

前書き

先日、いよわさんの2ndアルバム「わたしのヘリテージ」を購入した。

描かれているのは「1000年生きてる」のMVの子

記事タイトルにもある通り、ずっとボカロを聞いていながら、ボカロのCDを買ったのは初めてだった。
というのも、ボカロを聞き始めた高校生の頃は親がオタク文化に疎かったため、その手のものを購入しづらく。
大学生になった頃はボカロの流行が収まりつつあり、自分の興味の矛先も他へ向くことが多かった。
それが社会人になって、好きなことに気兼ねなくお金を使えるようになり、プロセカによってボカロへの熱意が再燃し、環境的にも感情的にも購入への抵抗がなくなったのだ。
今の時代CDじゃなくても曲を購入する手段はあるが、歌詞カードのイラストが魅力的だったし、何よりデータだけでなく実物として手元に持っておきたかったので、CDを購入した次第である。

いよわワールドのここがいい

いよわさんの特徴は何か、というのを私なりに挙げるとするならば、「ピアノを中心とした音作り」「独特で挑戦的な試み」「自作の可愛らしいイラスト・MV」が独自の世界観を確立しているのだと思う。

2021年夏ごろにヒットした、「きゅうくらりん」はその最たる例だ。

全体としてはポップで可愛らしい曲調に仕上がっているのだが、イントロなどでぽわぽわした電子音が不協和音を奏でている。
MVに目を向けてみれば、可愛い女の子の可愛らしい動きのアニメーションの中に、どこか不穏な雰囲気が見え隠れしている。
その可愛らしさと不安定さの両立が、苦しいほどに恋に身を焦がしている少女の心境と絶妙にかみ合っているのだ。

その他にも、異質な雰囲気の間奏が差し込まれた「アプリコット」、ボカロならではの高音・高速なメロディーと心電図を彷彿とさせるような音が特徴的な「IMAWANOKIWA」、さながらカジノのような遊び心のある音作りの「わたしのジャックポット」など、様々な試みをしている。
それでいて曲の完成度は高く、可愛らしいが得も言われぬ感情を抱えていそうなMV・歌詞とうまく調和している。
そんなところが、私の趣味に合致したのであろう。

おすすめ曲

・あだぽしゃ
もしもいよわさんの曲で一番好きな曲は、と聞かれたら、「あだぽしゃ」を迷わずに挙げる。

ジャズワルツ風の1曲となっており、スウィングの軽快さとしっとりとした曲調がクセになるだろう。
落ち着いたAメロに変化のあるBメロ・キャッチーなサビと、曲の構成自体はオーソドックスだと思う。
しかし、『その体が無様に温まるまで歩きましょう』などの部分の緩急が大きいリズムや、ボカロの幅広い音域を生かしたサビの高低差が個性を色濃く出している。
バックの音に耳を傾けると、ピアノが下から上まで目まぐるしく動き回っていたり、ノイズのような電子音が不協和音を奏でていたりと、巷でよくある曲ではまず使われないような表現が成されており、これも特徴的だ。
聞きやすい曲の展開と常人には真似できないアイデアがほどよく調和して全く新しい味を出しており、いよわさんらしさがよく出ている一曲だと考える。

・パインドロップ
ここまで紹介してきたが、他であまり見ない表現や人間離れした高速高音が受け入れられない、という人はいるだろう。
そのような人にもオススメしたいのが「パインドロップ」である。

この曲は「三月のパンタシア」というグループへの提供曲であり、貼り付けている動画はその初音ミクverとなっている。
元々人が歌う前提の曲だからか、他の曲で見られるような変則的なリズムや速いパッセージは無い。
それでいて特徴的なピアノを聞いていると、確かにいよわさんの楽曲だという感想が自然と出てくる。
ピアノと言えば、この曲は歌詞も『声にできなくて鍵盤かき鳴らすの』などピアノに関するフレーズが目立つ。
募る想いを口に出せず、『甘く激しい音色』『きらびやかで虚しい旋律』『暴れるメロディ』をピアノで奏でる少女。
そんな切ない歌だが、ラストには曲の盛り上がりと共に『一粒の勇気』を持って想いを届けることを決意する。
淡い青春の1ページを切り取ったような歌詞と、爽快感のある曲調、初音ミクの優しい歌声が印象的なポップスに仕上がっている。
また、三月のパンタシアのみあさんによる歌唱もカッコよさがあって違った雰囲気となっているので、興味があれば聞いてもらいたい。

・1000年生きてる
好きな曲は他にも、トランペットの明るい音やサビの高音が心地よい「オーバー!」、カッコよくて疾走感の溢れる「黄金数」、華やかなバックと裏腹に歌声からは切なさや寂しさを感じる「ヘブンズバグ」などたくさんあるのだが、せっかくCDのジャケットにこの子が描かれているのだから、この曲を外すわけにはいくまい。

曲調としてはスローテンポなスウィングジャズであり、ゆったりとしていながらノリがよく、堂々としたカッコよさがある。
このスウィング調の部分だけでも完成度が高いのだが、2回目のサビ前の間奏だけ、曲調がガラッと変わる。
ピアノやドラムを主体としたバンドから、シンセサイザーを主体としたサウンドに。
跳ねたリズムと緩やかなビートの四拍子から、正確でスピーディなエイトビートに。
1000年という時の流れをここまで見事に表現しているのが面白い。
また、ラストのサビは創作活動をしている方には刺さるであろう内容となっている。
この曲はボカコレ2020冬(ドワンゴ主催のボカロのオンラインイベント。次回は2022年4月22〜25日開催予定)への応募曲であり、クリエイターの集う祭典であることを意識したフレーズなのだろう。
額縁の中で悠久の時を生きる少女からの、生みの親である人間たちへのメッセージ、是非とも聞いてほしい。

後書き

CDを買って上がったテンションで衝動的に書き始めた記事だが、完成するまでにはかなり時間がかかった。
漠然とした「この曲いいな」という気持ちに対して、なぜそう思ったのか具体的に捉え直すのに難儀したからだ。
曲や歌詞をしっかりと聞き直し、足りない音楽知識を検索で補って、なんとか記事を完成させた。
それでも私の感動を100%伝えられているかと考えると到底出来ていない。
自分の感情を形にすることの難しさを思い知った。

そんな風に迷いながら書いた稚拙な文なので、間違ったことを書いているかもしれない。
それでも、曲の魅力が少しでも伝わって、いよわさんにハマる人が少しでも増えてくれたら嬉しい限りである。
また、本記事ではYouTubeやニコニコ動画にMVが投稿されている曲のみを紹介していたが、「捕食ひ捕食」などのMVがまだ無い曲も良曲揃いなので、興味を持った方はそちらも各種配信サイトで聴いてほしい。

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