見出し画像

パックと男梅

「○○さんて、男らしいですよね」
その人は無邪気に笑い、グラスを私に手渡した。マスクの内側で、苦笑を浮かべるしかなかった。

いままで私が好きになったり付き合ったりした人は、大抵、年下好きだった。お菓子に例えるとマリービスケットやコットンキャンディーのように、素朴で、ナチュラルメイクの似合う女の子。彼女らと比べられて、ああ、私はお菓子にはなれないな、と思った。大黒摩季の曲の歌詞では無いが、そういえば昔の写真の中にいる母も、いちごミルクキャンディーのようだった。

私をお菓子に例えると、パンチの効いた「男梅」。
彼の放った一言を思い出し、そのような言葉がぼんやりと脳裏に浮かんだ。
無理に甘くなる必要は無いし、自分なんて選ばれないとこじらせなくても良かった。
男梅が好き、と言ってくれる人たちと一緒にいて、励ましあえば良かった。

当たり前の存在たちだった。
日常的に少しでも一緒にいたい、少しでも笑っていてほしい、幸せになってほしい、そのような気持ちに気づいたのは、つい最近だった。
レモンサワーを飲み干しながら、少しでも日常が続けばいいと願った。

春がきた。パックを始めた。まぶたの上にジャスミンの香りが広がるたび、最高の男梅でいようと決心している。
男梅は、また独りで旅に出る。
また会えた時は、笑顔でいられるように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?